139 シバテツの蟹寄りの蒲鉾か蒲鉾寄りの蟹か? 究極の選択
あー風邪ひいて頭がもうろうとしたり、新盆であっちいったり、七回忌で地元に帰ったりしてたらすごい間が空いてしまった。
えーとほんとはミネギシと師匠が対峙してババーン、続くっ!
ってやりたかったんだけど。
このままだとぐずぐずしてるうちにそのまま辞めちゃいそうな予感がするので。
中途だけど上げます。
2025/09/18 ほんとにじわじわでご免。那由多柚子と暁裕次郎はこんなところで出てくる予定では無かったのだけどなあ。
2025/09/24 調子が少しだけ戻ったような気がします。じくじくじくじく考えすぎなんだよな。
「肩の荷が下りたとか、ほっとするとか、気持ちが楽になるとか、何か変化があるのかと思ったけど、そう旨くはいかないもんだな」
明るい気持ちを装ってシバテツが強がってみせる。
「心臓が苦しいっっ!」
毒島伽緒子が胸を抑えて声を絞り出し、たゆんとシバテツをからかう。毒島伽緒子の仕草に微笑ましいものを感じ、シバテツは笑みを浮かべる。ふーっと一息吐いてふと顔色が変わる。
意を決してカートリッジを師匠に手渡したわけだが、ここでシバテツは思い出した。
「そういえば、怪しいやつがこの間来てました。多分、カートリッジ目当てだと思うっす」
那由多柚子の携帯が鳴る。ブラックサバスのモブルールである。暁裕次郎が怪訝な顔をする。那由多廸子は
「殴る元刑事」
「ああ、お邪魔叔父さん。『笑う警官』みたいに言うなよ」
「『うたう警官』じゃなかったっけ?」
「うん? ああ、それは道警シリーズの第1作の方。映画公開に合わせて『笑う警官』に改題されたのよ。元々『マルティン・ベックシリーズ』の第1作で、『うたう警官』はそのオマージュの要素が強い。けどね、佐々木譲の小説は素晴らしいのに」
「映画はヤクモデバイス並みのクソだった。前回監督した『REX』で辞めとけばよかったのに」
暁裕次郎は那由多柚子のリアクションに大きく頷く。
「そろそろ出てあげたら」
暁裕次郎に促されて、渋々那由多柚子は電話に出た。
『えーと、ゆっくりゆっくり下ってく~』
「はいはい。そういうの要らない。『夏色』も『栄光の架橋』も興味がない柚子ですが、なにか?」
『つれないなー柚子ちゃんは。あー、情報共有。サルちゃんからの依頼の品。見つけたよ』
これを聞いた那由多柚子が小さくガッツポーズをする。
『で、聞きたいことがあって』
「なんでしょうか?」
『ミネギシって知ってる?』
その名を聞いた那由多柚子は息を吞む。
「その名前をどこで?」
『うん、依頼の品の預かり主のところで。無言の圧力をかけていたご様子よ』
「なるほど、なるほど。ミネギシだったりネギシだったりカワギシだったりするんですが、おそらく同一人物でしょう。別口で依頼の品を探している方々の調節役ですね。我々がアレを手にしたとなると、早晩姿を現すと思いますよ」
『了解。』
那由多柚子は通話を切ってから、暁裕次郎を振り返る。那由多柚子の顔はイキイキとしている。
いつもつまらなそうに黙々と仕事をこなす那由多柚子を見ていた、暁裕次郎は少し驚いた。なんで那由多柚子はこんなにやる気に満ちているのだろうか?
「詰まんなそうに仕事するのがデフォルトじゃなかったのかよ」
暁裕次郎のツッコミに、那由多柚子はてへへと笑う。
「業界有名人に会えそうなのだもの、テンション上がるでしょ」
暁裕次郎は仕事依頼してる元刑事も有名人なのにとつぶやくと
「あの叔父さんは出現率高すぎなんだよ。新鮮味が薄れちゃう。一緒に居るカオコちゃんを愛でるくらいしか役に立ってないもの」
ふーんと少し納得のいかない表情で、暁裕次郎はコーヒーを舐める。
「そんなにミネギシだかカワギシとかいう調節役はレアなんだ」
那由多柚子は大きく頷くと動き出す。どこに行くのか誰何する暁裕次郎に返事をするのももったいないように先を急ぐ。
「うまいことしたらミネギシの姿だけでなく、手口ものぞける大チャンスじゃないの」
ほらほら急げ急げという感じで、那由多柚子は暁裕次郎に手招きする。
「君はそれ、ブルース・リー気取りかも知れないけど、俺にはサザエさんのエンディングにしか見えないぞ」
それを聞いた那由多柚子は立ち止まって、不満の溜まった兎のように足を踏み鳴らすと、ぶるぶると大きく頭を左右に振った。
「え? 那由多ってそういうキャラだったの?」
暁裕次郎は軽く引いていた。
スマホの通話がオフになった。
「シバテツくんって、籤運、相当悪いよね」
師匠がブラックサバスの悪魔の掟な携帯の待ち受け画面をのぞき込みながらぼそりとこぼした。
「はい、絶妙に悪いっす。このタイミングで、それかああってくらい」
「そうだねえ、好きな子のお願いーほんとに好きなのかもよくわかんないけどさー訊いたら、大御所に目をつけられるくらいだものね」
面目ないとシバテツは師匠に頭を下げた。
師匠はどうしたもんかと思案顔になった。毒島伽緒子はその横で美味しそうにブラッデイメアリーを嗜む。
「シバテツ君に提案だ。
ひとつめ。件のモジュールは手元を離れたことだし、なーんにも観なかった聞かなかったことにして、一切合切忘れて、元の生活に戻る。うん、今のバーテンの仕事を続ける。日常への回帰だね。
ふたつめ。惚れた女ーほんとに惚れてるん?ーの頼みでもってずるずると足首位、ん~脹脛の半分くらいかな。泥沼にはまったわけだけどさ。麗しの愛しき鹿沼華ちゃんを助けるべく、我らと一緒に首までどっぷり汚泥に浸かる。日常とさようなら、決別だね。
さてシバテツ君。
キミはどうしたい?」
毒島伽緒子は右手を口の前にかざして、おどけてみせる。
シバテツが逡巡した後答えようとしたとき、携帯が鳴る。
ジェリー・ゴールドスミスによる名曲「Main Theme From "Star Trek: The Motion Picture"」であった。
エイリアンアース鑑賞中。意外に面白い。鉄板だけど目玉のエイリアンが好きー。
キーンとあられちゃん走りで襲い掛かるデブの恐怖!WEAPONSがたまらなく観たい!
ありゃだめだと言いながら「オールドガード2」鑑賞。やっぱり駄目だった。イモータルの正体は実は宇宙人だった! とか「ハイランダー2」くらいはっちゃけないとダメだと思う。