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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
八雲式端末 其の弐
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137 シバテツ 師匠と宴す

えーと、また後半書き足します。

今日はなんだか忙しいのでしたわ。


2025/07/18 ようやく少し書き足し、加筆修正できる感じになったので、サブタイ変更して、師匠の身の上などを追加する。


2025/07/23 と言いながら、本業の方が忙しくなってとん挫していた。師匠のお話を追加。ジークアクスの話はなんか違うなあと思うので書き直す予定。自分でこういう小説書いてて思ったのだけど、どうだい俺っていろいろ知ってるだろ? 的なひけらかしって、ある種オタクの老害みたいなとこあるなあと。ジークアクスを見ていて、その思いがさらに強くなった。

 毒島伽緒子は九重さんを見つけると、両手を振りながら近づいていく。九重さんの知り合いらしい。

「カオちゃんはお仕事中ね」

「そだよー。このシバテツ?」

また毒島伽緒子がシバテツを指差す。指を指されたシバテツはおどおどと頷く。それを見た毒島伽緒子も大きく頷く。

「こちらの……シバテツ兄さんに用があるって」

「師匠が?」

九重さんの問いかけに毒島伽緒子は再び大きく頷いた。

「今、師匠確変中だからさ」

「ああ、なるほど」

九重さんが視線を師匠に向けて、軽く会釈する。

「お久しぶりね。この世界にも慣れたかしら」

師匠は毒島伽緒子の隣に窮屈そうに座る。

「うーん、どうなんだろうか。違和感は変わらないな」

自分の元居た世界に寸分違わずそっくり。だけど、ずっと付きまとう“じゃない”という感覚。具体的に何がどう違うのかは指摘できないくらい、非常に細かい部分で感じる違和感が、ずっとずっと憑いて回るのだ。

師匠と毒島伽緒子は九重さんと郁さんの隣に座った。シバテツは師匠の前にクラーケンのロックを、毒島伽緒子にはブラッディマリーを提供する。

「師匠さん? 師匠さんは九重さんと知り合いなんですか」

シバテツが恐る恐る尋ねる。

「知り合いかあ、まあね、そう、知り合いね」

「九重ちゃんにはいろいろ相談に乗ってもらったからさ、そっちの郁さんと一緒にね」

自分の世界→似てるけど違う世界→限りなく同じに見えるが肌間隔で違うと思う世界。自分は並行世界をいったり来たりしている。その辺の事情を分かってくれている人物が、九重と郁さんなのだが、その関係性を説明するのはなんだか難しい。一応内緒の事項らしいので、むやみに話すことは難しいし、どこまで詳しく話して良いやら判断にも迷う。まあ、このシバテツくんがどのくらいの深さまでハマっているのかにもよる。肌感覚としては説明しなくてはいけないと感じているのだが、さて。

クラーケンのロックで口を湿らした師匠はにっこりと笑う。

「この味は何処の世界も同じだな」

ホオジロザメのスカジャンを着た大男が、子供のように笑う。シバテツは師匠の笑顔にしばし見入ってしまった。

「ほら、シバテツの救世主が現れたよ」

「郁さん、彼は俺のことは?」

「ううん、説明してないよ。でも説明しても大丈夫。そういう知識は持ってる人だから」

シバテツは自分の目の前で、自分が今まで気づいていなかった事柄について話合われていることに、うっすらと気がついた。

「ハナが居なくなったことに関係がある?」

ぼそりとつぶやいたのだが、それを毒島伽緒子は聞き逃さなかった。

「師匠ー。ほんと確変中はスバ抜けてるよね。鴨居華のこと知ってるって」

また指を指す。

「シバテツ兄さんが?」

なぜか疑問形である。毒島伽緒子に続いて、師匠が話し始める。

「ラリィ・ニーヴンって小説家がいてね、ファンタジーやハードSFとかで一世を風靡したんだけど」

「ニーヴン&パーネルの侵略ものなら読んだ記憶があるっす。『降伏の儀式』だったかな」

「かわいいゾウさんが地球侵略にやってくるって話だっけ? あれは地球人と侵略者のカルチャーギャップが面白いよね。それじゃなくってニーヴンの短編集で『無常の月』っていうのがあって、あ、あったらしい方には収録されてなくて……」

師匠はどうにか自分が経験してきたことを語ろうとしているようだが、非常にまどろっこしいことになっている。見かねた毒島伽緒子が師匠を遮って口を開いた。

「師匠ぉぉっ、それじゃ、シバテツ兄さんどんどん混乱しちゃうよ。シバテツ兄さんはパラレルワールドとか異世界とかは大丈夫な人?」

毒島伽緒子に覗き込まれ、シバテツ少しだけ、たじたじっとなる。

「そ、そうっすね。大丈夫と言えば大丈夫っす」

それを聞いた師匠が改まった口調で話し始めた。

「俺は自分が生まれた世界、それによく似た世界、生まれた世界に戻されたはずだったのに、どうも違う世界。都合3つの並行世界を知っている」

『無常の月』に収録された並行世界の話は二つ。そのうちの一つをシバテツは思い起こした。

並行世界が実証されて、並行世界間の行き来が可能となった世界。原因不明の自殺や無差別殺人が続発する。主人公の刑事は捜査を続けるが、その原因は不明なまま。辿り着いた並行世界が、自分たちの世界とかけ離れたものならば問題は無かった。しかし、自分たちの世界に限りなくそっくりな並行世界へ行ってしまったものは、数多に存在する並行世界にも自分が存在することに気づく。自分がしなかった選択をしたものが存在する。あの時、別の選択をしていたらという後悔の念を持つ自分が居る此処が自分の世界だとした場合、選択したことで明るい未来を勝ち得た世界もあることに考えが行き着く。では今此処に居る自分は何者なのか? 自らの選択の自由を無意味なものだという考えに至った時、人々は選択することを放棄するだろう。その末路が、殺人や自殺なのではないか? 刑事はそんな結論に思い至る。

「ああ、だから『時は分かれて果てもなく』か」

シバテツは合点がいった。

「似た世界を行ったり来たりだよ。結局、自分が生まれた世界へはたどり着けなかったようだよ」

師匠はクラーケンを一口含み、シバテツに厭世的に笑いかけた。

「そんな稀有な体験を経たせいか、なんなのか知らんのだが、見えちゃうんだよ」

「この世じゃない幽世のレイヤーっすか?」

シバテツは九重さんをチラ見する。

「この人の視えるものは、わたしの視るものとは違うわよ」

九重さんがにっこりとほほ笑む。

「ある程度調べ物をすると、最終的に辿り着く結果が視えるの」

毒島伽緒子が横から口をはさむ。

「だから私と師匠が此処へ来たわけ」

師匠がシバテツに掌を差し出した。

「真っ黒いカートリッジ持ってるだろ?」

シバテツの額を嫌な汗が伝った。




一区切りと言いながら、全然一区切りつかん。

というか気づいたら師匠と毒島伽緒子がやって来てるし。


1979年公開の「太陽を盗んだ男」で原爆を作って政府を脅迫する主人公のお話しなんだけど、

政府に対して何を要求したらいいのかさっぱり思いつかない。ラジオで要求を募集するというくだりがある。

「ジークアクス」って、さて「宇宙世紀」を題材に、自由にいじっていただいてOKだよと言われて、

はてじゃあいったい何をしたいんだろう? ってなっちゃったんではないかと。

好きな物考えなしに投入したら……って感じなのかなあと、勝手に推測していました。

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