表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
八雲式端末 其の弐
140/144

136 シバテツ 自覚する。

ほんとはもう少しじっくり、双方の人となりが紐解かれていき、気持ちが通い合うとかそういう事をやるべきなんだろうな。けどな、人が恋に落ちる瞬間なんて千差万別、わかるわけないだろ! つうことで強引に行こうと思います。

2025/07/01 なぜかクラーケンをオクトパスと間違えていたのを修正。がっつり歌詞を足す。もうだいぶ前から版権のこととか考えてないね。こういうことしちゃいけませんって言われたら、修正するの大変そうね。

「シバテツ、YouTubeに変えていい?」

ムラカミさんがニコニコと尋ねてきた。『女体渦巻島』に未練はあったが、『悪魔のキッス』のくだりも終わっているので、シバテツは大きく頷いた。ムラカミさんはYouTubeでPVを見ようとしているようだ。シバテツは視線を元に戻した。小柄な男、郁さんが視界に入って来る。郁さんはシバテツの眼を覗き込むように口を開いた。

「うん、やばいね。シバテツ、早くいかないとハナちゃん、死んじゃうよ」

死ぬ。その言葉を聞いて途端にシバテツの表情が歪んだ。

ハナが死ぬ。いや、そもそもなんで俺なんだろう。そんなに接点はないはずだ。なのになんでこんなに苦しいんだ?

そんなシバテツの姿を見て、郁さんがにっこりとほほ笑む。

「なんでって思ってるよね。シバテツくん、そうだろう? その感情抑えきれないだろう? どうしようもないだろう?」

「もうね、それは病だから、どうしようもないのよ」

九重さんが郁さんに同調する。

「やまい?」

“恋煩い”。

シバテツは、自分がハナに好意を寄せていることに気がついていないふりをしていた。人なんて煩わしいものだと思っていた。だから客のそれぞれ個人の事情には首を突っ込まないようにしていた。お人好しの自分はそれでずいぶんひどい目に遭ってきたのだ。だから、自分は自分の気持ちを押さえ込もうと抑え込もうとしていた。

だからって、これは九重さんや郁さんが言わんとしている恋なんだろうか?

いやなんか違う気がする。

ハナのことを好きなのかと問われれば、自分はハナのことが好きなんだと思う。好きなんだけど「好きだ」とか「愛してる」とか、そういう身悶えする様な激しい感情では無いと思う。

くだらない話をして、ホーセズネックに挑戦して、失敗して、それを二人で笑い合う。ほぼほぼ、そんなことしかしていない。でも、そんな他愛もないことが愛しかったのだ。


シバテツの愛する幸せな日常に欠かせないピースが失われようとしている。

「俺はどうすれば」

何も手掛かりがない、のだ。いや、あるにはあるが、ミネギシを頼るのは悪手だと思う。それ以外に、今ハナのことを探る手掛かりがない。


「僕には何もないな 参っちまうよ もう

とっておきの台詞も特別な容姿も

きみがくれたのは愛や幸せじゃない

とびっきりの普通と そこに似合う笑顔だ♪」


ムラカミさんの選曲か。マカロニえんぴつの『なんでもないよ、』のPVが流れ始めた。俺の今の気持ちを言い当てている気がする。なんだか涙が出そう。

シバテツの揺れる感情を微笑ましく捉えた郁さんが、再びにこりと笑う。

「大丈夫。君は知らないけど、いろいろと守られている。少しここで待っててご覧。救いの手が差し伸べられるからさ」

郁さんは何重もの現実に重なる階層を観ることができるんだっけ?


「からだは関係ないほどの心の関係

言葉が邪魔になるほどの心の関係」


その瞬間、店のドアが開いた。

紫と青のグラデーションのロングヘアがさらさらっと流れる。GRANDSのごっつい靴が顔を出す。髪の毛のキューティクルが光り輝きながら、女の子が入口から顔を突き入れてきた。店内をくるくると大きな瞳で見まわした。シバテツの顔を確認すると、指を指した。

「シバテツ?」

問われたシバテツはおどおどと頷いた。

「師匠、此処で合ってる」

その言葉と同時にスカジャンの大男がぬっと姿を現した。

「クラーケンをロックで」

師匠は安心しろというようにシバテツに向かって大きく頷いた。

「あたしはブラッディマリー」

毒島伽緒子が後を追う。


「会いたいとかね そばに居たいとかね 守りたいとか

そんなんじゃなくて ただ僕より先に死なないでほしい

そんなんじゃなくて ああやめときゃよかったな

「何でもないよ」なんでもないよ」

えーと「トゥルー・ディテクティブ」というTVシリーズがありまして、その第1シーズンを大喜びで見ていたんですな、11年前。ルイジアナ州を舞台に連続殺人事件を追う二人の刑事のお話しなんですな。田舎の因習とかしがらみとかドロドロな人間関係が邪魔して捜査は進まない。しかも主人公二人はずっと昔に仲違いしちゃってて(痴情のもつれなので始末が悪い)、非常に気まずい状態。これがとても面白かったわけです。

死体にプリミティブな紋様が入れ墨されていたりするんですが、これ第4シーズンで再び出てくるんだよな。10数年かけての伏線ですよ。第4シーズンはオカルティックな導入なんですけど、第1シーズンもわりとクトゥルフ神話的なニュアンスもあったりして、逐一符合させてるんですな。お話自体は陰陰滅滅なんだけど、この辺は観ていて楽しい。

あとジークアクス観ました。いろいろと思うことはあるのだけど、なんだろなあ。もう少し考えてからなんか書くと思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ