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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
八雲式端末 其の弐
139/144

135 シバテツ世代は鎌倉の老人なんて知らない

ということでまた中途半端な状態でアップ。

後半はじくじく書き足します。


2025/06/24 後半を追加。

2025/08/26 今後の為にミネギシの性格を若干改変。

駅前のターミナル。確かに南側の方が賑やかである。南口に噴水広場がある。その噴水広場に頭一つ抜きんでた女性が一人。やはり自分の背が高いことを気にしているのか、少々猫背になっている。そんな彼女が電話で話をしていた。

「ミネギシです」

ミネギシは依頼主と話している。

「いただいた情報通りでしたです。おそらくモノはあのバーテンが持っているです」

少しミネギシの顔が曇る。

「ああ、女の方はタイミングが悪かったです。ほんの少しの時間差で逃げられたデス。どこか逃げ込むところの手掛かりでもあれば良いですが……なるほどです。監視カメラか。それなら逃げた方向などから、少しは推理できるです。

バーテンが食いついてくれれば、かなり楽ができるですよ。では次の定時連絡でです」

携帯を切ったミネギシが受話口(スピーカー)から何かが漏れ出ているのを見たかのように露骨に嫌な顔をした。

「なぜ受けたですか、淀橋は。基本、あいつとの仕事は楽しくありませんです」

ミネギシは言葉に出してそこまで呟いた。でもね、人を追い詰めるのは話は別なのです。背が高い猫背の美女が気持ち悪い笑みを浮かべていた。


「雁狩卓也って知ってる?」

那由多柚子が暁裕次郎に問う。

「ドイツ表現主義のレジェンド的映画ではなく?」

パレット端末に映し出されたのは不鮮明な画像データ。解像度を上げてもはっきりとしない。杖をつく老人であることは判る。

「うーん、博士なところは一緒だね。ヤクモデバイスの仕掛け人らしいんだけど」

「日本を裏から操る鎌倉の老人的な?」

「実際はそんなフィクサーみたいなものはいなかったんだろうけどさ」

「まあでもそんな雰囲気の老人だね」

「今回のポンコツ復活の立役者なんだけど、全く素性が判らない」

那由多柚子が不服そうにほっぺを膨らます。

「いや、なんでまた突然、雁狩博士の名前が飛び出てきたの?」

「ふふーん、開発スタッフの一人をね、まあ、いろいろと……」

追い詰めていったのか。どういう追い詰め方をしたのかは知らないが、那由多柚子の思い出し笑いの怪しげな表情からして、ほとんど真っ黒寄りのグレーな方法で追い詰めたんだろう。敢えて、その方法は聞かないでおいてやろう。


店のモニターには新東宝映画の『女体渦巻島』が流れている。1960年公開の新東宝の映画だ。

密輸密航の基地に変貌した国境の無法地帯。東洋のカサブランカ=対馬を背景に、悪徳と汚濁にまみれた

愛欲、享楽、官能の渦が展開する。荒唐無稽なアクション映画だ。

新東宝のセクシー路線をしょって立った三原葉子がまさに妖艶で、すんばらしい一作である。


シバテツは本気でハナを探そうと思った。

最初は一人で探そうと思ったのだけど、すぐにこれは無理な相談だと気がついた。真剣に人を探そうと思うとなかなかに見つからないもんである。なのでもう諦めた。一人で探すことは諦めて、ありとあらゆる知り合いに声をかけてまわった。

「そのコの写真はないの?」

九重さんが訊いてきた。写真はあったかどうか?

「そのコの一部でも写ってたら、少しは協力できるかも」

霊視ですかね? ハナは露骨に写真に写り込むことを嫌っていた。良いお客が多いのか、嫌がるハナに無理強いをする者は少なかった。

シバテツは自分の携帯の写真のフォルダーを開いた。店に訪れた客とのツーショット写真がずらりと並ぶ。初めて店を訪れたお客さんと、必ずツーショットで写真を撮る。店に来てくれるお客さんのことを憶えておくために何とはなしに始めたことだった。常連となったお客さん、何らかの理由でふっつりと来なくなったお客さん、再来店は一度もないお客さん、etc.etc.。

ああ、こいつなんだかんだ理由付けて飲み逃げしたやつだ。今度見つけたらどうしてくれようか。

その中にハナの写真があった。自分はノリノリで写っている。その横で落ち着かないように顔を伏せてハナが写真に納まっていた。

「こんなもんしかないけど」

シバテツは九重さんに写真を提示した。九重さんがスマホを受け取るとき、ビシッと黒い火花が散った、ようにシバテツには見えた。

「へー、シバテツも少しは素養があるんじゃない?」

「あ、今の火花は普通は見えない?」

「そそ。このコだいぶヤバいんじゃないかなア」

九重さんが手にした携帯を覗き込む小柄な男の人がいた。

「うん、やばいね。シバテツ、早くいかないとハナちゃん、死んじゃうよ」

小柄な男の正体は、郁さんだった。


モニターでは浅見比呂志が『悪魔のキッス』をノリノリで歌い踊る姿が映し出されていた。


「今夜は死ぬほど酔いつぶれぇ~

恐れもなく

憂いもなく

悔いもない


悪魔のキッス

地獄のクイーン

月の浜辺で寝転んで

ミイラみたいに寝てしまえ♪」


いろいろ重なって忙しいけど、なんとか少しずつでも上げていくです。

ハイポテンシャルの後はプレデターのアニメを見る予定。あと牙狼之介。

『女体渦巻島』ってもう字面のエネルギーが半端ないよ。お話自体は大したことないんだけど。もうこのタイトルでお腹いっぱいです。新東宝映画はこんなのばっかりで楽しくなってくる。

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