129 シバテツ 非常に不安にかられる
シバテツ。那由多達のお話を書こうとしたんだけど、とっかかりが見えずペンディング。今とってもよくビジョンが見えているシバテツ君のお話を書きました。
オーナーから店を任された。
いや、語弊があるな。
オーナーからは基本的なカクテルの作り方しか教えてもらっていない。
そんな状態で
「じゃあ、今日からがんばって」
とオーナーに丸投げされた。
右も左もわからない状態で、客商売が始まった。もはやバタバタのメタのメタである。心折れる寸前まで打ちのめされ続ける毎日である。
そんな殺伐とした気持ちの中、ずっと顔を出していなかったオーナーがひょっこりと現れた。
「がんばってるなあ」
がんばってるなあじゃねえですよ。と喉から抗議の言葉が出かけたわけだが、なんとか呑み込んでみる。ほんとに此処を辞めたら後がないと思っていたのだから。ここで踏ん張らないと、多分俺はダメになる。そういう予感がしていた。
「シバテツはさあ、オカルトとか好き?」
「オカルト? 『事件記者コルチャック』とか『Xファイル』とか『アメリカン・ゴシック とっておきの恐怖』とか『フリンジ』とか『スーパーナチュラル』とか映画の『コンスタンティン』とか『ストレンジャー・シングス 未知の世界』とか『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』とか『パラダイム』とか『フロムビヨンド』とか『襲い狂う呪い』とか『デッドウォーター』とか『宇宙の彼方より』とか『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』とか、そういう類のものは大好物っス」
「わははは。たくさん出てくるねえ。しかも、途中からみんな同じ原作映像化だし、ラブクラフトだし。
うーん、シバテツには下地があるから大丈夫っと。」
なにが大丈夫なのかはわからないが、オーナーはここで一拍置いた。
「で、しばらくうちのバーにはちょっと面白いお客さんが尋ねてくると思うから」
「面白い?」
「うん、面白くて実に興味深い」
「面白くて実に興味深い?」
「そうそう。まあ、シバテツが今、思い迷っていることの答え……とまではいかないけど、まあなんとなくの方向性は教えてくれると思うんだ。いろんな意味で」
「いろんな意味で? あ、ありがとうございます? てかオカルトが好きと、面白いお客さんてどういう風にリンクするんスか?」
オーナーは含み笑いをしながら、じゃあ、僕は用事があるからとぬるっと去っていった。いろいろ聞きたいことや、教えてほしいことがあったんだけどなあ。
オーナーが言う「面白い」客は確かに来た。
客なんだけど客じゃないというか、まあいわゆる同業者が次々と店を訪れたのだ。同じ界隈でバーや飲み屋、スナックなんかを経営しているオーナーだったり、ママさんだったり。そんな興味深い客が次々と訪れた。なかなかに得難い経験だった。オーナーが言う通りなんとなくの生き方は示唆してもらえた気がする。とても散文的にいろいろとめどなく思い出すから説明が難しいな。そのうちきちんと順序立てて思い出すこととしよう。
新規店が営業を始めた時、どんな人物が営んでいるのか、どういう系統(LGBTER的な多様性なことも含めて)の店なのか、そのあたりを個人経営のオーナーたちが確認しに来る。まあ、通過儀礼みたいなものだよと、シバテツは後になって教えられた。
今ドアを少しだけ開けて顔を覗かせているママさんも、その時にやってきた一人だった。
「見附さん、お久しぶりっす。まだ大丈夫ですよ」
「それじゃあ、ちょっとだけ……おじゃましまーす」
そういうと見附はそろそろと店内に入ってきた。見附はそのままシバテツが掌で弄んでいた謎の箱を凝視している。
見附さんはスナックを経営している。頼まれればタロット占いを行っている。でも彼女は占いを勉強したことはない。霊感が強く、いろいろと見えてしまうのだ。来てくれたお客さんに不利益がある場合、当たり障りなく伝えるため、あえて占いと称しているのだという。
その見附さんが箱をみつめたまま固まっている。
「それ……」
「ああ、これ、お客さんからの預かりモノで……」
「それ何? 真っ黒すぎ!」
OMG。
ハナは俺に何を預けたんだろか?
シバテツのお話を書いていると、愛しの師匠と麗しの毒島ちゃんの話も書きたくなってきますね。
青木ヶ原の樹海はやること決まっちゃってるのに、モチベーションが上がらないのです。樹海話は早く終わらせて、8課の面々をいろいろなお話に乱入させたいんだけどなあ。
定期的にインド映画は見るのだけど、これは凄いよとお勧めされたので観たのが『JAWAN/ジャワーン』。冒頭の少数民族部落での包帯燃え燃えアクションを皮切りに、地下鉄丸ごとハイジャック、刑務所のダンスと息つく暇なし怒涛の3時間。すげえ面白いんだけど、すげえ疲れた。
最近サーガ的な展開のインド映画が多くって、3時間の大作だと思ったら、次に続く! ってのが多いんだよなあ。でも、あの外連味たっぷりのアクションシーンはクセになるよねえ。
次はサメ映画『ディーヴァラ』が観たい。