122 鈴鹿和三郎は祓えの詞を唱えたとき、自分が森の中で一匹の巨大なシュタ(以下略)
祓の詞で変身その2。
2025/04/16 言葉がたりなくてわかりにくい部分を加筆修正。言葉が出てこなくてもどかしくなるのよな。
2025/04/17 シュタ公が覆いかぶさっているのに、和三郎のことだけじゃあ、なんか違うと思い、シュタ公の気持ちを加筆したのである。
和三郎、三度目の詠唱。
2匹目の人面多脚戦車をバラバラに破壊した神様団からほーっと感心するようなため息が漏れる。
「なかなかのもんじゃの」
古傭兵團も同じように感心している。鳰鳥姉さんはにんまり。ちょいとあっしにゃあ、祝詞の良し悪しなんざぁ解りませんねと甚五は黐竿をびゅんびゅんと撓らせる。佛淵兵庫は顎に手を当て「これはこれは」と驚きを隠さない。
唱え終えるのと同時に和三郎の頭の上で異変が起こった。ぴょんとシュタ公が和三郎の頭の上で軽く飛び跳ねて、膨らんだ。シュタ公は見る間に和三郎を呑み込んでしまった。
一瞬目の前が真っ暗闇となった。
シュタ公に呑み込まれた和三郎はちょっとしたパニック状態である。呑み込まれる寸前に
「寄生獣のパクって食べられる人みたい」
とのヒルヒルの感想ははっきりと聞こえていて、あいつぅこの状態から脱したらどうしてくれよう、なぞと半分気持ちはそっちに持っていかれてはいた。そうはいっても、やっぱり状況としてはパニック状態であった。呑み込まれてすぐは、五感がシャットダウンされた状態だったこともあって、パニック状態に拍車をかけていたようだ。
宮古島まもる君ちんすこうのパッケージの種類は本当は何種類なんだろう?
銃撃戦シーンで『ヒート』はよくこすられるけど、かなり見ごたえ充分な銃撃戦が展開される『誘拐犯』は、ほとんど取り上げられないよなあ。誘拐犯ってタイトルは多数存在しそうな気がしたんだけど、クリストファー・マッカリーが監督したこの映画のみなんだな。ベニチオ・デル・トロのやる気のないけだるい感じが良いんだよねえ。
Confusion will be my epitaph.
光が差し込んできて、周りが見えるようになってきた。何かが自分を持ち上げて掲げている。手? 両手で抱きかかえられながら、抱えあげられている。何? 誰? 自分を覗き込んでいる女? そう、女が居る。足元には楽器を持ったクマ? うん、クマのヌイグルミ達が右往左往している。
「お前の名前は、うーん、そうねえ……ペレドゥルに連なるものがいいわね。そうそう、“谷を駆け抜ける者”ペレスヴァル。フランス語じゃああんまり馴染みがないでしょ、だからあなたはパーシヴァルよ」
“パーシヴァル”……そう名付けられたのだが、自分の心には響かなかった。今のところパーシヴァル(仮)で良いだろうか? そう伝えたつもりなのだが
「うん、うん。君も気に入ったようだねー」
いや、そうは言ってないんだがなあ。
何度も観ちゃう映画ってのもあるよな。『シャーキーズ・マシーン』とか観ちゃうよな。なんといってもOPが最高だ。早朝のアトランタの空撮からぐーっとカメラが寄っていくと線路の上をのしのし歩く主人公・シャーキーが映し出される。さらにカメラはシャーキーに寄っていき、そのまま並走するんである。ドローンのない時代にこれをやってるんであるよ。加えてBGMの「ストリート・ライフ」がまあかっこいいんだよねえ。
Confusion will be my epitaph.
「深淵じゃあ、アレなんで、今日からお前はシュタ公な」
うんうん。パーシヴァルよりもしっくりくるなあ。何も取り繕ってない対等な感じがしていい。周りの女? 女は不満そうだが、自分は納得しているのだからそれで万事OKではないかフタグン。
前の職場でよく休憩に使っていた公園。そう言えば変な人が多かったなあ。黙々と太極拳(あのゆっくり動くやつじゃなくって、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』は洪家拳だから、こっちじゃないや、そうそう『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』の方だ。主演のリー・リンチェイ張りの素早い動きで公園の中をぐるぐる回ってたなあ。
男? 男を肩に乗せて、虫? 蟲を組み伏せたのは楽しかったなあ。いあっ! いあっ!
But I fear tomorrow I'll be crying
突然、燻家取り出して、その場で燻製始め出した人もいたな。
うどんはちゅるちゅるでうまいなあ。この男? わさぶらうと一緒に食べると楽しいな、嬉しいな。
美容師が練習用に使うカットマネキンだっけ? 大量のアレがブランコの周りにきれいに並べて置いてあったこともあったな。よっぽど練習したのか、全部刈り上げられていたなあ。呼ばれてやって来た交番勤務の竹下クンが、ブランコの惨状を見てしばし固まった後、大きくため息ついてたのは笑ってしまった。俺に気づいた竹下クンが苦笑いしながらもにらんできたのは憶えているな。
「困ったことになった。なあ、宮原くん」
Yes I fear tomorrow I'll be crying
Yes I fear tomorrow I'll be crying
ものの数秒の間の出来事。シャットアウト状態から徐々に回復する間、頭の中に思いっきりどうでもいいことばかりか、自分の記憶ではないものも再生されて、いくつもいくつも浮かび上がっては消えていく。
「あっ」
鳰鳥姉さんの声が聞こえた。と同時にああという間に五感が回復して、凄まじい勢いで周辺の情報が頭に流れ込みだした。視覚には超巨大な金属製の顔面が迫ってくるのが映り込んでいる。続いて何か固いものに突撃された衝撃を体が感じる。大丈夫だろう? わさぶらう。ああ、シュタ公が俺の事好きなのはようくわかった。
あんまり痛くないな。
「百年はもう来ていたんだな」
じゃなくて、これは攻撃されている! とこの時始めて気がついた。
和三郎は自分の身体がきりもみをしながら宙を舞っているのを体感した。香港のカンフー映画でやられ役がよくやってる、アクロバティックな動きだ。ああ、これはダメかも知らんね、と思ったときに身体が勝手に動いていた。錐もみ状態から徐々に姿勢を制御して、すとんと着地した。着地はしたのだけど衝撃は逃がしきれていなかった。そのままずずずずずずずと、後方へ滑って行って、特型装甲車にベコンと当たって止まった。
痛くはない。よく見ると『ドラゴンへの道』でブルース・リーにやられた悪漢が壁に激突した際、人型に穴が開いたみたいに、特型装甲車の左側面に自分はめり込んでしまっていた。リアル志向なカンフーアクションが展開する中で、漫画的な人型に抜ける壁。撮影中、誰もおかしいと感じなかったんだろうか?
ゆっくりと特型装甲車にできた亀裂から起き上がった。
無傷の身体を眺めた後、じっと両手を見てみた。毛むくじゃらの手である。指がないミトン状の手である。どこかで見た事のある手である。
マトンの革製ミトン。
「シュタ公になっていたんだな」
とこの時始めて気がついた。
『レギオン』もっとテンポ良い印象だったけど、こんなだったっけ? なぜか砂漠の中の小さなダイナーで、人類の存亡をかけた堕天使ミカエル&人類対神の軍団レギオンの息詰まる戦いが描かれる。うーん、B級テイスト炸裂ですな。
この25年後を描いたのがTVシリーズの『ドミニオン』なのでした。