120 淡島流合気術炸裂! 阿弥陀バスターVS人面戦車
なんだろう? こうしようという展開を考えていたのだけど、そうはならなかった。
いろいろと邪魔が入るよねえ。
樹木をなぎ倒し迫りくるのは金属製の巨大な人の顔面であった。額と口の部分から巨大な銛が3対とピノッキオのように銛が突き出た鼻を携えている。
「あの銛で以て歩兵を蹂躙しまくったのだろうねえ」
典型的なラテン系ローマ人の顔がガシガシと金属音を立てながら迫ってくる。
人面戦車。
巨大な人の顔を模した対集団粉砕用兵器として、3~4世紀くらいのヨーロッパの戦場を跋扈したらしい。ウイチグス呪法書を著したと思しきウイチグスさんが、その昔著した兵法書に図説が載っている。巨大な丸坊主の金属製顔面が車輪付きの戦車にどでんと載っている異様な物体である。
その車輪の部分が昆虫の歩脚的なものに挿げ替えられて、森林を闊歩可能な状態に改造されている。その人面多脚戦車が旧林道方面から、樹木や巨岩を押しのけて迫って来ていた。
「宮崎さんとこのお城よろしく、蒸気の煙をぷしゅーっと噴き出してやがる」
どうも一台だけではないようで、少し遅れて2台、2匹? 2匹目も迫ってきている。
「ここは私が阿弥陀バスター改め満州男バスターで迎え撃ちます! 皆さんは速やかに退却をお願いします!」
ヒルヒルが両腕をバスタータイプに換装し終えてから、警官達に向けて叫んだ。警官隊が退避の号令の下、特型警備車の後ろに走っていく。
「9番義肢はいつから警部になったんだよ」
和三郎が混ぜっ返す。
「いあっいあっ!」
するとシュタ公が和三郎の頭の上で騒ぎ出した。頭の上からさかしまに和三郎を覗き込んでいる。その上たしたしと和三郎の額を叩いている。
「なんだ? 最近は壁の花状態でひっそりと私の肩の上に佇んでばかり。ヌイグルミのあるべき姿を体現していたシュタ公クンであるが、今は俄然なにやらモーレッツにアッピールしているようだけど。
今はそれどころじゃないんだよー!」
和三郎の戯言に惑わされることなく、シュタ公は変わらずたしたしを止めない。
「その飽くなき欲求は“祓え”ってこと?」
「いあっ! いあっ!」
心なしかシュタ公の声が大きくなった。
「お前、シュタ公ジャイアントになってめくら手裏剣でも放とうってのかい?」
「十七話ですね! サブタイトルが今ではヤバい。ヤバいと言えば『サンダーマスク』の19話もヤバいです。サブタイトルが「サンダーマスク発狂す」ですからね!」
ヒルヒルが9番義肢を換装した姿で話に加わった。
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
加わりつつも義肢の起動は忘れていなかったようだ。
ヒルヒルの両手の甲に三つ柏の紋が輝く。
両腕両脚から、ボディを守るように結界が展開していく。
そのタイミングで多脚型人面戦車ががりがりとヒルヒルに迫った。戦車の顔面部分から突出した銛が迫る。満州男バスターが両腕を前に突き出し掌を合わせて合掌ポーズから、腕を三角形の形で固定した。その三角形に弾かれるように銛が上滑りしていく。
「三角で受けて!!」
そのまま満州男バスターは銛を両手でがしっと掴み、多脚人面戦車の勢いを利用してぐるんと投げ技へと移行した。
「丸で攻めて!!」
そのまま人面戦車は満州男バスターの動きに吸い込まれるように横転した。地面に右頬を強打する。顔面の金属がべこんとへこむ。
「四角で押さえる!!」
満州男バスターは握った銛を軸に人面戦車を地面に縫い付けた。多脚がじたばたと動き続ける。
「これが淡島流合気術だあっ!!」
ヒルヒルが雄叫びを上げる。釣られて和三郎も叫ぶ。
「祭俵太っ! 『北〇の拳』の元ネタっつうかパクリ先だあっ!」
もう一台の人面戦車がぎゅったんぐりぎゅりと迫って来る。そこへ古傭兵と神様団が対峙する。
「よしっ」
それを確認すると和三郎は
大きく柏手を響かせた。
樹海の空気が震えた瞬間である。
好きだったんですよ。「男大空」。喧嘩骨法だったかな? あの三角で受けてっていうキャッチフレーズと、女性キャラが色っぽかったのは強烈に印象に残っている。というかあらすじとかは全部記憶から飛んでいるのに、ここだけは記憶している。今回色々調べて、あの超有名な世紀末なんちゃら伝説が凄まじくリスペクトしてらっしゃることを知り驚いたなあ。点としては認識していたけど、格闘系漫画として線ではみていなかったということなんだろうなあ。もっと精進せねば。