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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 青木ヶ原樹海 暗黒舞踏変
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117 第2回平定戦の思い出と仮面の系譜

覆面歌手ってどっからきたのか? 最近の覆面シンガーとは違うよ。

黄金仮面なんかのほんとすっごい古い歌手のお話。それを面白おかしく書くつもりが、なんだか難しいところへ入り込んでしまいました。

巨大門扉が開くと目の前に大きく開けた広場が現れた。大きなキャタピラー状の轍が地面に幾筋も残されている。その轍を避けるように雑草が茂っていた。89式装甲戦闘車が遺していった足跡である。

アレソレが跋扈する青木ヶ原樹海。今までに不定期に3回ほど攻略が試みられている。樹海平定戦と呼ばれていて、小中学校の教科書の近代史でも取り上げられるほどには有名だ。第2回平定戦で使用された武器に関する収賄事件で平定戦は世に知られることとなった。製造メーカー、自衛隊、政界を巻き込んだ汚職事件とは、非常に不名誉なものではある。

平定戦は自衛隊が主導で行なわれたもので、現有兵器の試験場などと揶揄されたわけだが、対アレソレ戦に関した、戦闘技術は飛躍的に進歩したのも事実である。大量に登用された兵器群を以てしても、攻略はほとんど進まなかった。圧倒的にアレソレの方が強かったためだ。

「2回目が一番派手にやったんだけどね。甘い汁を吸おうとしたお偉いさんのせいで台無しだよ」

「あの時の理解不能な撤退指示は、なんとも後味の悪いものだったな。割といい線行っておったんじゃが」

田部サン自体は一緒に参加した仲間が命を落とし、自身も吹き飛ばされたりと、散々な目に遭ったらしい。

実際、豪華な兵装を用意した割には成果が上あがらなかった。とはいえ打開策がないわけでもなく、さて今から逆転に転じるぞと勢いをつけていたところに、急な撤退命令である。

蓋を開ければ汚職事件のあおりを喰らったという、実にくだらない理由。第2回平定戦はあまりに人間的な理由でもって、しりすぼみに終わってしまった。

第3回平定戦も実施されたが、2回に比べて非常にこじんまりとしたものとなったという。田部サンは仲間を無駄に死なせたこともあって、嫌気がさして断固拒否したそうだ。鳰鳥はこの頃から知らぬうちに古のもの関係の依頼を受け始めていという。

「クライアントが誰か知っていたら、断ったのだがな」

むむーと腕組みをしながら鳰鳥が樹海の奥をにらみつけた。

「ほんとはあそこで死んでいたはずなんですよ」

鳰鳥姉さんと同様に田部サンも、樹海の奥へと視線を巡らす。

「変な能力が発現したせいで生き延びたわけですが。ああ、鳰鳥さんが居なかったら、結局あそこで死んでいたと思います」

「そうそう。我は未華男の命の恩人と言う訳であるよ」

「ははは。いやはやあの時は助かりました」


田部サンと鳰鳥姉さんは、思い出すことが多いのか、とってもとっても遠い目になっていた。


「『仮面ライダー』からなんじゃないの?」

白糸台が投げやりに言い放つ。

「違いますってば、第一次怪獣ブームってのがその前にあって、それよりも前はブームってわけじゃないけど仮面をかぶったヒーローってのはそこそこいるんですよ。『黄金バット』とか『七色仮面』とか『スーパージャイアンツ』とか。鞍馬天狗とか怪傑黒頭巾とか」

どうもヒルヒルはミス・コロムビアや黄金仮面(ゴールデンマスク)などに代表される覆面歌手について話がしたかったようだが、白糸台はヒルヒル=オタクという思い込みから『仮面ライダー』の発言となった模様。面白いので和三郎は頸を突っ込んだ。

「そうだよね、仮面のヒーローを紐解いていくと、日本は時代劇、さらにさかのぼっていくと歌舞伎とかそっちへつながっていって、面に行きつくんだよね」

面は特定の神様を呼び込むとか宗教的な意味合いが強い。すっごく大雑把なくくりで行くと、面の文化の有る無しは、チベット仏教の洗礼を受けたか、受けないかで決まるんだと、偉い学者さんが言っていた。面白いのは西洋などの仮面は匿名性を重視したモノ、正体を隠すためのものであることが強調されている。面の個性を宿す機能とは全くの逆なのだ。だから仮面ライダーは実のところ、お面ライダーなのである。

「ああ、納得。だから正体を隠したい鞍馬天狗や怪傑黒頭巾は覆面なんですね。あとプロレスラーの覆面も正体隠すためのマスクですもんね。伊達の兄ちゃんも正体隠すのに四苦八苦してましたからねえ。そうそう『タイガーマスク』は原作とアニメではラストが全く別物なんですよ」

というヒルヒルの説明を遮って、和三郎が話し出す。

「ああ、そうか『鉄仮面』も、仮面かぶせられた正体不明の囚人ありきの小説だもんな。キャラが立つというより、その氏素性を探る方がメインだもんなあ」

「えっ? 南野陽子が最初じゃないの? 『おまんら許さんぜよ!』これ、これ。これが最初だろ」

白糸台が自信満々のどや顔で宣った。


みんなは聞かなかったことにした。


遅ればせながら関テレ版「秘密」を観ている。貝沼の扱いが原作と違うとか、いろいろ文句言ってる人も多いけど、原作者も納得してるんだからいいんじゃない? 普通に面白いし。3話のゲストの池脇千鶴が誰だか全くわかんなかったことが、かなり驚きだった。あと、板垣李光人のお姫様感がたまらんわー。

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