115 田部サン 青木ヶ原樹海入口巨大門扉を語る
遅れてすみません。
結局まだ樹海の中に入れませんでした。
青木ヶ原樹海調査隊参加者
吉田警察署本栖湖派出所からは中島敦と白糸台ほか精鋭。
公安8課から田部未華男、安城顕造、淡島ハルコ、鈴鹿和三郎、リンちゃん、アラクネー
諏訪神社&古傭兵からタケミナカタ、大国主、出早雄、鳰鳥、鳥刺の甚五
キャンターの特型警備車に分乗して、蕩けて大穴の開いたコンクリートの壁を横目で見つつ、正規の入り口へ向かう。そこには分厚いコンクリートの防壁に挟まれるように巨大な鋼鉄製の門扉が設置されていた。
「軍の基地の入り口とか、刑務所の入り口ってさ、昔の施設をそのまんま利用してるってところはいかつい門扉なんだけどね、割と簡素な造りになってる。要は人の出入りを制御する為のものだからさ。その辺だけ考慮すりゃいいわけだからね。
この富士の樹海の入り口みたいな豪壮な門扉はまあ、他でもあんまり見ないよね」
田部サンが語り始めた。
「アレソレに対応した扉ってなんであろうか? サファリパークの搬入口とかも参考にしたらしいんだけどね、やはり人間を阻む扉とそう大差がないってことでね」
たしかに。刑務所なんかも出入り口のゲートは簡素なものだったよな。参考として思い浮かんだのが『ゲッタウェイ』の刑務所だったりするんで、ちょっとあてにならんけどさ。
「最終的に何を参考にしたと思う?」
田部サンがちょっとどや顔で尋ねてきた。白いヒョロヒョロは凄まじい攻撃力を持っていた。アレソレは見かけに反してつよつよである。そういう輩を受け止めて、なおかつ損壊しない頑強さを持つモノってなんだ? 大銀行の金庫の扉とかは違うよなあ、でもあの分厚さはアレソレの攻撃にも耐えるだろうけど、造りが全く違うなあ。でも帽子が刺さってた映画があったっけ。オッドジョブって名前のふとっちょが、帽子を手裏剣みたいに投げてくるんだよなあ。あの分厚い金庫の扉に突き刺さってたけど、あれは帽子に仕込まれた刃物がすごいんだろうなあ。あれは『007ゴールドフィンガー』だったっけ? 『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』だったっけ?
「金庫には刺さってないよ。鉄格子には食い込んでいたけどね。『ゴールドフィンガー』だね」
そうか、鉄格子だったか。そうそう『ゴールドフィンガー』だったって、また田部サンは心の声に返事を返すし……。でも、帽子と刃物は相性がいいと思うな。なんたって日本刀の先っちょ、切先にできる刃紋のことを帽子って言うからね。
「ちなみにオッドジョブを演じていたのはハロルド坂田っていう日系アメリカ人レスラーだよ。日本プロレスで力道山と戦ってるよ。その後、オッドジョブの名前で再来日して、そん時は新日本プロレスでアントニオ猪木と共闘してる。007の悪役ですぐに思い浮かぶのはオッドジョブか、リチャード・キールが演じたジョーズだからねえ」
いやいや、そんな解説はいいって思ったけど、いつも俺がやってることだ。俺も煙たがれ無いように気をつけないとなあ。
で分厚い扉は必要だと思うんだが、何だろか?
皆が首をひねり始めた所で田部サンがにんまりと笑顔になった。
「参考にしたのは水門だよ」
「なるほど。方式はローラーゲート方式だと思うけど、スピンドル? 巻き上げローラードラム?」
ふいにケンゾーが田部サンに問いかけた。
「えーとローラードラムだね。鋼鉄製の扉を上下に巻き上げて開閉する形だよ」
「アレソレが扉に殺到した時の圧力が強烈であると判断し、水圧にも屈しない鋼鉄製の扉を用意したというわけだ」
あれれ、ケンゾー君がやけに詳しいなあ。と思っていたら目が合った。
「親父が鑿井業をやってたからね。井戸掘りとか温泉堀の方式を調べていくうちに、自然といろいろ気になってしまってね」
甘味と鑿井かあ。なんとなくコアだなあ。
青木ヶ原樹海への入り口が警報音と共に、上がり始めた。
「なんかこういうのワクワクしますね! 『エイリアン2』とか『ジュラシックパーク』みたいで」
「不吉だなあ。どっちも突破されてるじゃんか」
しばらくの間の後、おおーとヒルヒルがリアクションを取る。
「なんだか、今のリアクションの取り方、どっかで見たことあるんだよなあ」
「へっへー。わかりますう? “Do you have any cigarette? ”」
「そうそう、『DAWN OF THE DEAD』だよ。ガチャ目のSWAT隊員だ。あんだけ不穏な空気になってたのに、空気も読まずに煙草くれって言ったって、誰もあげるわけなかろうに」
「巻き上げ用のワイヤードラムはやっぱりSM490 鋼板?」
「そうなんだよー、ケンゾー君! 」
田部サンとケンゾーによって、ヒルヒルと和三盆のいつものオタク話は華麗にスルーされたのだった。
麗しのアニャちゃんを愛でるため
『深い谷の間に』を鑑賞。あのおめめの離れ具合が堪らなくキュートですよ。ちょっと爬虫類入っている感じが非常に愛おしいったらありゃしない。お話しはカウチでポテトでいい塩梅でした。