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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
八雲式端末/チーキーズ/師匠と私
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108 再会!死んだ女房との邂逅に咽び泣く中年探偵!(大平透口調で)

毒島伽緒子と師匠とのお話し。

何か知らんけど師匠はスキル持ちだったんですね、知らなかったわー

毒島伽緒子に初めて会ったのは、しとしと雨が降る通夜のことだった。

依頼主が亡くなったので、その通夜に出かけた先でのことだった。そこで自分の依頼を中断させた男を見かけた。伽緒子を怒鳴りつけた男・豊島健吾が元凶だと判りはしても、自分に証明する手立ては今のところはない。

干支が一回りする12年前に自分はあっちの世界に飛ばされた。とてもとても自分が居た世界と似た世界。すぐには今自分のいる世界が別の世界であるとは気づかなかった。妻子が死んでから自宅に居ることがつら過ぎて、逃げ出すように放置したまま、仕事先の近くにアパートを借りて住んでいた。そのアパートへ辿り着いたはいいが、そこは違う人間が住んでいた。璃瑠子達が亡くなった3年前から住んでいるという。すぐには信じられなかったが、内装は自分の記憶している自分のアパートとは似ても似つかぬものだったし、その人間がずっと住んできた匂いというか、生活を積み重ねた気配が感じられた。どうも嘘はついていないようだった。そこは自分の住処だと主張はせず、アパートを後にした。管理会社に連絡をしたが、「現在混みあっております。順番にお繋ぎ……」と謎のインストゥルメンタルな音楽が流れてくるだけで、一向に繋がらないので、早々にあきらめてしまった。

なにやらムジナにでも化かされたような気がした。行く当ては無いわけではない。ただ、足がそちらへは向かないのだ。璃瑠子達と暮らした自宅、璃瑠子と美沙子が切り刻まれた自宅。

今はどうなっているのだろうか? 何もせずに放置していたのだ。さぞやひどい有様に違いない。しかたなく、自分は自宅へ戻ることを選択した。

「実におかしな気分だ。帰ったところであの広い家は寂しすぎ……」

独り言を師匠は呑み込んだ。目の前にあるのはさびしさゆえに逃げ出した家のはずだ。ほったらかしていたからさぞかしひどいことになっているだろう、そう思いながら自宅を見ると、見覚えのある一軒家に明かりが灯っていた。

ここも自分の家だと思ったら、知らない人間が住んでいるなんてことはないだろうな。奇妙な不安にさいなまれながら、恐る恐る門扉に手を掛けようとした。その瞬間、玄関ドアが開いてもうとっくに居ないもんなんだと、もう絶対に会えないのだと、そう諦めてしまった大好きな奥さんが、にこにこと笑顔でドアから半身を乗り出していた。

「よお」

明るく笑う璃瑠子の顔を見た途端。自分は堪え切れなくなって、横を向いて咽び泣いてしまった。


てなわけで、昨今の主流から外れて、わき道にそれまくっております。

いつ主人公たちのところに物語のタスキが戻ってくるんでしょうか。

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