105 谷山さんと吉田クンは迷い込んだらしい
谷山さんと吉田クンの登場です。
というか、なんだこれ?
張り切ってどうぞ!
あと雁狩博士もね。
2024/12/25 あとがきを恐ろしく更新
「今になる、蛇になる、
きっとなる、笛が鳴る、」
団地に囲まれてぽつんと児童公園があった。
その児童公園では子供が遊んでる姿を一度も見たことがない。住宅公団が用意した人が住むためのささやかな部屋が、いくつもいくつも重なった建物がお行儀よく並んで建っている。
生活の匂いに満ちた空間と空間の、忘れられた狭間の児童公園。
そこに白いワンピースの少女がいた。
「深くなる、夜になる、
真直になる」
歌いながら少女は水飲み台の蛇口をひねる。少女はちょうどバレリーナの格好で足を洗い始める。
髪をかきあげながら身体を起こした彼女は、にこにこと辺りを見回した。
ひたと視線を一点に集中させた。
少女は大きく笑うと、徐に水飲み台の飲用水栓の蛇口を思いっきり解放する。
水が透明な軌跡を描いて、空に向かって吹き上がる。
「あはははははは」
彼女は高らかに笑う。彼女の声に生ゴミを漁っていた、烏が一斉にユニゾンを返してきた。満足げに大きく頷くと少女は再び歌い出す。
「今になる、蛇になる、
きっとなる、笛が鳴る、
深くなる、夜になる、
真直になる」
高く高く吹きあがる水飛沫の中、きらきらと白いワンピースの少女がステップを踏む。
ふと顔を上げると誰かを見つけたのか、にっこりと笑顔になった。
「吉田クン!」
声をかけられた吉田クンは、ぼーっと少女の方を見つめた。
「あれ、谷山さんじゃないの」
そうは言ったものの、吉田クンは戸惑いが隠せない。
だって吉田クンにとって、この公園は見た事も無い場所だったから。
なぜに自分は此処に居るのだろう?
たしか濃霧にまかれて……。
ヤクモデバイスを使える状態にする。その目処がついたと連絡があった。出来るわけがない、あんなデータばっかり食いつぶす出来の悪いプログラムに、操作性の悪いスマホケース。気持ち悪いったらありゃしない。美しくない、あれはほんとに美しくない。
背蓮に運転を任せて本栖湖を後にして数時間後には、開發恵は見た目は廃棄されたホテルといった趣の、とある建物に辿り着いた。
「そんでもって、これがデバイスなの?」
「だったもの、かね?」
開發恵の眼前には手足を椅子に拘束された中年太りの男がうなだれて座っていた。
どう見ても心肺停止状態である。
「そうそう、ひとつ疑問だったのだけど。ニュースで『心肺停止』状態で発見されるじゃない、溺れたり、交通事故に遭ったり、火事にまかれたりした人がさ。どう見ても死んでるとしか思えない状況なのに、『死亡』とは言わないわよね。
あれっておかしくない? おかしいでしょ。どうみたって死んでるシチュエーションだよ」
「心臓止まって息してない状態なんだがね、そこから蘇生することもあるわけでね。救急隊員が死んだと思って放置したら、まだ死んでなかったとか、そういう事が散見してね。みんな死んだって確定することに臆病になっているのだよ。だから大火傷で皮膚が炭化してボロボロだろうが、上半身と下半身が泣き別れていようが」
「ぜーんぶ心肺停止なわけね。医者に全部責任押し付けたわけか」
「まあそんなとこだろうね」
「自分で脱線しておいてなんなんだけど、この肉だるまがなんでデバイスな訳?」
開發恵に尋ねられたのは、ひょろりとした痩せぎすで高身長、一見するとスペイン人にみえかねない白髪の老人だった。
「肉に埋もれてはいるのだけどね、ほれ此処に」
男のうなだれた後頭部に穿たれた長方形の溝を見つけて開發恵の瞳はきらきらと輝いた。
「えーと、雁狩博士。この肉だるまはひょっとしても、しなくても……」
雁狩博士と呼ばれた男はひょっひょっひょっと笑いながらうなずいた。
「まさしく異界からの闖入者だよ」
「ワーオ」
開發恵が歓喜の声を上げる。
新キャラ登場というか、ケンゾー君がかなり早い段階で説明してましたね。
あと、O・ニーマンドに最敬礼ってとこでしょうか。
というわけでどうも年内区切りのいいところで終わりという風にはいかないようです。
ちょっと今まで書いた分を読み返してみたんですが、恵ちゃん、口癖が「じゃん」だったんだあ、
とかなんだかまじめなこといろいろ言ってたりする人が居たり、えー、こんなこと書いた記憶がないなあみたいな物事とかがたくさんあってですね、面白がって読んでしまいました。
和三郎を早く佐渡に行かせてあげたいのですが、どうもそうは問屋が卸さないような気がしますです。
本来は公安8課の人々を助けるべく登場する予定だったヤクモデバイスがですね、シバテツの初期プロットと合わさるとですね、非常に悪いことを呼び込んでくるようです。
おそらく自衛隊関係は敵に回りそうです。公安7課とか探偵師匠とか愛しの毒島伽緒子ちゃんなどの、メンツが活躍してくれることでしょう。その辺の人たちが物語の中でどう動きたいのか、この事件をどうしたいのかで大きく変わっていくんだろうなあ。
「海百合の挑戦」ももう少しコンパクトなお話しのはずだったのに、どんどん長くなっててまして、ご迷惑をおかけしております。
あと、そうそう、これをやっておきたかったのだ。
なんか皆さんやってらっしゃるので、これ書いたら少し変わるんでしょうか?
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