1 和三郎 馬のしっぽを目で追う
なんも考えずに、書き始めてしまった。
ものぐさなのでどのくらい連続で投稿できるかわかんないです。
自分が好きな物全部ごっちゃに詰め込みます。
よくわからないサブカル話をしたりもすると思います。
いや作者の俺がするんじゃないです。主人公の和三郎がするんです。
まずは暖かく見守っていただければ。
2024/03/14
煽り文を追加。大好きなスティーブンソンへのオマージュ。
「忍びの家」みたいに文化庁預かりにした方がよかったかなあ。
すげえ今迷っている。8課の緩さは警察じゃないよなあ。
2024/08/15 煙草について追加
2025/05/02 ダイアログの調整をメインに調整。
読むのを躊躇する人に
もしも転生調子の異世界物語や、
逆境上等や冒険、無職やクズが、
もしも役立たずスキルや、最弱や、
弱小領地や婚約破棄や隠しスキルや、
さてはまた昔の風のままに再び語られた
あらゆる古いロマンスが、
私をかつて喜ばせたように、より賢い
今日の少年少女たちを喜ばせることが出来るなら、
――それならよろしい、すぐ始め給え! もしそうでなく、
もし勉強好きな青年たちが、
昔の嗜好を忘れてしまい、
ラヴクラフトや、ゼラズニィや、ハインラインや、
火山に指輪を捨てに行く話を、もはや欲しないなら、
それもまたよろしい! それなら私と私の警官どもは、
それらの人や彼等の創造物の横たわる
墳墓の中に仲間入りせんことを!
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「ここでほんとに合ってるのかなあ?」
東京都新宿区大久保1丁目7番地。
新宿区小泉八雲記念公園。
スマホの地図ソフトで赤いマーカーが指しているのは、小泉八雲終焉の地近くに造られた公園だ。アプリに案内されるままにここまで来た。
前の部署で移動の命令が出た。何かやらかしたわけではないのだが、ほんとに突然の出来事だった。なんで凡人の俺が選ばれたのかさっぱりわからん。
「太陽が黄色かったからや」
と言われても納得してしまうくらい、自分にとっては突然の出来事だったのだ。
事務方のかえでさん(山村美紗の娘さんみたいな感じの)というお局さんに
「次の配属先送ったわよっ」
と大きな声で言われた。
直後、住所とマップのリンクがメールで送られてきた。
配属先の移動は職業柄しょっちゅうだ。慣れっこではあるのだけど、配属先が公園って、いやほんとかなあ。
周りを朝鮮街と東南アジアごった煮の店に囲まれて、ひっそりと在る公園。
小泉八雲ってラフカディオ・ハーンが本名なのか。ギリシャのお人だったのね。
だから公園はギリシャ建築っぽい作りなのか。
しかし、今更なんだけど新大久保界隈はなんでもありだなあ。
文化の坩堝だな。“るつぼ”って小さい頃はそういう名前の壺があるんだと思ってたな。気になって今調べたが、ああ、間違ってはいなかったか。壺は壺なんだよな。
鋳る壺、炉壺か。
「ここは禁煙です」
不意に声をかけられて、振り返った。無意識のうちに煙草を取り出し喫おうとしていたらしい。
人差し指と中指で挟み込んだ紙巻煙草を一瞬目で捉えてから、声の主の方を向く。
「あ、ごめーん」
量産型の紙巻き煙草である。すでに巻かれた状態で、10本もしくは20本もしくは50本単位で紙製の箱詰めか、缶詰されて売られている。昔は日本専売公社ってところが販売していたんだけど、今は民営化されてJTっていう企業が製造・販売している。利益追求のためか、あんまり売れない煙草は生産中止となった。生産中止となった中には名品と言われる煙草も数多くあった。チェリー、峰、両切りゴールデンバット、国産に移行する前のキャメルなどなど。無くなった煙草はどれも旨いうえに趣があったのになあ。
加熱式カートリッジも格段に使い勝手が良くなって、当初は特定銘柄しか喫えなかったが、現在は含有するニコチン、タールも多岐にわたり、まあ割と普通においしく喫えるようになっている。匂いもそんなにないし、副流煙の心配もいらないから、ぜひ乗り換えてはどうかと、ニコニコな営業に迫られたりもした。迫られたのだけど、あえて変えなかった。
なんかやっぱり紫煙を燻らせたいのである。
古くはダシール・ハメット、ちょっと前はロイド・ホプキンズやら、魔界探偵コンスタンティン、チョウ・ユンファと双子の弟ケンみたいに、プハーっとやりたいわけですよ。ケンはライターの火も喫ってたけどな。
喫煙は中々にハードボイルドな感じがするじゃない?
俺に声をかけてきたのは、ポニーテールの少女だった。後ろにきゅきゅっと髪を束ねて結っているから、きりりっと少し吊り目がちになっている。年頃から言えば高校生か。制服着てるし、まつ毛長いし、顔は小さいし、スタイルはいいし、NEWJEANSみたいだし、きっと女子高校生だよな、たぶん。
加えて、でっかいバイオリンのお化け、えーっとコントラバスだっけ? それが収められたと思しきケース。これをゴロゴロ引きずりながら近づいてきた。クラシックを嗜んでるということは、まあまあお金持ちでいいとこのお嬢さんなんだろうね。
「鈴鹿和三郎」
少女は俺を見上げながら呟いた。俺の名前だ。
呟いたときに小首を傾げた。ポニーテールの先端がゆっくりと首の軌道をなぞる。
「うん? 如何にも俺が鈴鹿……。
いやいや、なんで君は俺を知ってる? というか何者?」
30過ぎの俺に高校生の知り合いはいない。
「はじめまして。
淡島です。」
深々と腰を折ってぺこりんとお辞儀をする。彼女のお辞儀の動作に、やっぱりポニーテールがひゅるると後を追いかける。
「どうも……鈴鹿です」
「おむかえでゴ、いやお迎えに参上しました」
今なんか言い直したな、まさか手塚のスパイダー? な訳があるか。多分、この年代は手塚は『ブッダ』くらいしか知らんだろう。
「迎えって…ねえ」
「同じ所属になります」
同じ所属。警視庁公安第8課ってこと?
警視庁の公安はほんとは第4課までしかない。あとは外事課と公安機動捜査隊があるのみ……と記憶していたんだけど。
今度の自分の配属先がなぜか5,6,をすっ飛ばして、
7課はあった気がする。そんでもって8課。
同僚にも聞いたのだけど、全く何をしている部署か知らない初耳だ、名前は聞いたことがあるんだが詳しくは知らない。などと異口同音に唱える。
いったい何をするところなんだか、わからん、知らない、不明。
全く情報が集まらなかった。
おかげで、自分の中の妄想の翼が大きく羽ばたいでしまった。
「閑職」
「窓際」
元資料室だろうと妄想が囁く。おそらく特殊な案件を扱う部署なのかもしれないけど、お約束はやっぱり資料室みたいなところだよね。髪の毛が臭くて後に署長になった人も、ウルトラセブンみたいな名前の人も、そういうとこに配属されてた。相方は天才肌なんだけど、日常世界からずれまくった人だったし。
ってことはこの子が、俺の相方か?
「同僚だよ、よろしくネ」
って、目の前の女子高校生が言っていると。
その認識で合ってる?
きゅきゅっとポニーで釣り目の高校生が同僚?
まじで、ほんとにー?
などと思っていたのも束の間。この直ぐ後から俺はとんでもないことに巻き込まれていくんだよ。
俺自身も知らなかったアレやコレやソレなんかに……。
拠り所は警察組織じゃなくてもよかったんだけど、神社本庁にしようかとも思ったんだけど、
やっぱり警察組織にしました。
パイロット版と言える最初のエピソードは、読み返すと猫かぶってるなあと思います。
次のエピソードからは斜め方向にエンジンがかかるので、
ほんともうすみません。