2.ゾンビが生まれた
とりあえず右も左も分からない。がむしゃらにやってみるしかありませんね。
やりながら要領つかんでいけば良いんです。
"えい!!"
このように雰囲気で念じてみたのは、人間でも作ってみよっかな~なんて試みです。
やってみて分かりますけど実はこれが大変に難しい。
何回かの空振りを経て、やがて「スポンッ」と軽い音を鳴らせることで私は何かを生み出しました。
卒業証書の筒を開ける時のような爽快な音。それと同時にほのかな湯気も立つのです。そして現れた人間は五体満足でした。
しかし血色が悪くて足で立たせてみると緩いグミみたいに安定しません。それには既視感があって私は引き気味。
"うぅ……"
通称ゾンビと呼ばれる生物。間違いありません。
スポンッ。スポンッ。
湯気とともに追加で二体、ゾンビが完成しました。
私はそれが気持ち悪いので星の中に投げ捨てます。
薄黄色の星は静かに自転するのですが、その地上は砂嵐がすさまじく吹き荒れるようでした。
そうとは知らなかった私も悪いです。ゾンビは地面に足つく間もなく、一瞬にして強風に飛ばされました。
乾燥機で回される雑巾のように。
まあ私は神様ですから、たぶん本気を出せば彼らのことは目で追えるんでしょうけど。
でもあんまり愛着も無かったのでとりあえず放置。
次。今度は犬を作ってみたいと思います。
スポンッ……。
ゾンビ犬も乾燥機に入れておきました。
ああああ!
神様って全知全能じゃないんですかああああ!
それとも神様って!
器用さが求められる系なんですかあああああ!
さっそく嘆く私。
荒れる竜巻の中から無表情なゾンビが時々チラ見えしました。無視を貫くのも心痛くありません。
……心は痛くないですけど、さすがにうっとうしい。
"竜巻停止"
私のひと声で星の激しい砂嵐は止まりました。命を作る事は失敗でも、風を止める事はとりあえず成功したみたいです。
星は急に無風になりました。空中から三人のゾンビと一匹のゾンビ犬がそれぞれ地上にぺたりと落ちます。
それら四枚は本当に、ボロ雑巾以外の何物でもありませんでした。