19.鼻水リーダー……その後
怪我をしたエシュはしばらく寝たきりでいました。
リビアが度々部屋を覗きに来ましたが、その誘いには乗らずにひとりで過ごします。
繊細な彼は、他のゾンビと生活するのが少し息苦しく感じてしまい、悩みの種だったのです。
そこへやって来るのがマノライでした。慈悲深さを持った謎多き女性ゾンビです。
見た目は同じなのに妙に神々しい佇まいに、エシュは鼻をすするのも忘れてしまうほど。
そしてマノライはエシュに提案を持ちかけます。
「カミノコトバ、キク」
エシュはむくりと起き上がって頷きました。その足で部屋を出ると、リビアには目を向けずに祭壇へ足を運びます。
祭壇へやって来たエシュです。
遅れてマノライもやって来ました。マノライは他のゾンビさんたちがくれるトマトを捧げ物にして置きます。
「カミサマ……」
エシュは祭壇で私を見上げて言いました。
「カミサマ……」
鼻水を垂らしたお顔は結構かわいらしいものです。
「カミサマ?」
"…………っえ? あ、はい?"
「カミサマ、キコエタ」
まさかの。意志疎通。
私はこの時、はじめてゾンビさんと会話をしたのです。
"どうされました?"
「マトマリタイ」
"まとまり? 王様になったらどうですか?"
「オーサマ……」
エシュは考えた結果、kenを連れてくることにしました。私はなぜかkenとはお話しが出来ないのです。一番話してみたい相手だったのに。
なので私はエシュが王様になれば良いじゃない。と、適当に指示をあげました。
王様が何とやらも教えてさしあげました。
私の言葉は神様の言葉。
それをエシュとkenは他のゾンビにも伝えてまわり、次第に指導者を中心としたチームワークが生まれます。
チームワークは集落を作り、集落同士が集まって街になり、そして国になるのです。