15.サボテン登頂団
テアとメリックが珍しく肩を並べて佇んでいます。いつもは追いかけっこをしている二人。ようやく仲直りでもしたんでしょうか?
サボテンの登場を見上げていて、よく見ると口をパクパクしています。
"しゃ、しゃべってる!?"
ギョッとなる私の側で言神さんは冷静でした。
"聞いてみましょうか"
"そ、そそそそそそそそんなこと出来るの!?"
言神さんの不思議な力が二人のゾンビに直撃。
するとなんとなんと声が聞こえて参ります。
「ノボッテミタイナ」
「アア、ノボッテミヨウゼ」
テアとメリックは数人の登頂団を作りました。そして数日後。彼らはサボテン登りを開始したのです。
柔らかいサボテンの皮に足掛けを開けて、命綱無しで上を目指します。もちろん風が吹くと下へ落ちました。
下では救護班が待機しています。
別に頭から落ちてもゾンビは不死身なのですが、救護班はせっせと動いて落ちた者を離れたところに寝かせました。
テアが下に落ち、メリックが登る。
メリックが落ちてしまう頃、テアが登り始めている。
お、お前ら一体何年掛かるんだよ。
百年単位で見ないとならない長期戦です……。
しかし二人に諦めの文字はないようで、繰り返し繰り返し登りました。
まあ……そちらはお好きなようにやっていただいて。私が気になっていたのは救護班の行動でした。
救護とは形だけで、本来は治療も何も要らないはずなのです。ならば付きっきりで何をしているのかというと……。
翌朝。救護班の女性ゾンビが、たちまち妊娠していくのが結果です。
中でもテアとメリックのお世話は、他のゾンビを張り倒してでも当たりたい女性ゾンビが目立ちました。
彼女の名前は「リビア」とします。
その後も様々な場面で彼女を見かけることになります。