1.人生を終え、神様に
不慮の事故。早すぎる死でした。
途中退室になった人生に未練があるのは言うまでもなく。しかし地縛霊として置いておくには動機が弱すぎる。
どうしたものか。
そう言いたげに溜め息のようなものが私に届きました。
エライ神様はエライなりに忙しいのだそう。
私がこれからどうなるのかを訊ねてみても教えてくれません。それよりもこんなことをいきなり言います。
"お前は短い人生だった。だから小さい星をやろう"
"星……ですか"
スケールの大きい話のようだけど、いただける星とやらは小さいみたい。
"生前の知恵と経験で良い神になりなさい"
それを聞いた途端、私はひたいに衝撃を受けます。
デコピンを脳が揺れるぐらいの強さで受けたような感覚。
生前、銃で撃たれた経験はありません。でももしかしたら、こんな感じだったのかもしれませんね。
エライ神様のお姿も、指のような形状も何も見えやしません。何もかもがおぼろげで有耶無耶。ここは濁った水の中のような場所でした。
もう深く物を考えられない私はそれを『混沌』という事にして、その中でぎゅるりぎゅるりと泳いでいく……。
まさに洗濯機のように渦の中へ回されると、体も心も混沌の中に溶けていくような気がします。
だんだんと視界も暗くなっていきます。
このまま暗闇の中で永遠の時間を彷徨っていれば、やがて私は小さな光の点を見つけました。
あそこに向かうのですね。
直感でそう思うと同時。この体に誰かが指示を出したかのように、その小さな星に向かって私は飛んでいきました。
小さな星とはいえ、いざ目の前にするとまあまあな惑星です。
茹で玉子の黄身のような薄黄色い星。堂々とそこにあり、自転に任せてただただ静か。
私は宇宙と思わしき場所と一体となって、ひとりでその星をじっと眺めているのでした。