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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
98/623

98 酒が飲めるぞい

 程なくして車はQCが設置されている施設に到着した。

 門には古めかしい青銅の銘板がかかげられていた。

 『株式会社コスパルエイド 新素材物性学研究所』


 四人は以前にも何度かここに訪れていたので門番の警備員とも顔見知りだ。

 初老の警備員である川上ケンサクは窓枠から顔を突き出して挨拶した。

「どうも、お久しぶりでございます。」


 熊谷と午藤も車から降りて上川に挨拶あいさつした。

「どうも川上さん。腰の方はどうよ?」


 川上は腰をさすりながら苦笑いした。

「ああ、まあ大分良くはなったかな。」


 午藤は彼の様子を見ながら尋ねた。

「あれ、先月だっけ? 病院行ったんだっけか。」


 川上はからからと笑った。

「ああ、あんときゃ酷かった。病院行ってブロック注射打ってもらって帰って来たよ。」


 熊谷は笑いながら皮肉を言った。

「運動不足なんじゃないか? まあ人のこと言えないけどよ。」


 午藤は車で待機している白鳥に告げた。

「あ、ごめん。ちょっと先行っててもらえるか。」


「分かりました。じゃあ川上さん、またよろしくお願いします。」

 白鳥は川上に挨拶してから車を出した。

 卯月も笑顔でお辞儀をした。


 川上は少し大きな声で呼びかけた。

「ああ、何処でも好きな所止めていいから。」


 白鳥はQCの設置してあるクリーンルームがある大きな建物の出入り口付近に車を駐車した。

 クリーンルームとは給排気システム等を利用してちりほこりがほとんど無い、所謂いわゆる空気清浄度が確保された部屋のことである。


 二人が中に入ると玄関の奥にドアがあり、その右側の壁にはロックセンサーが埋め込まれていた。

 顔、指紋、声帯そして社員証の認証によりロックが解除された。


「これ声帯まで必要ありませんよね。」

 卯月が文句を言うと白鳥は真面目に答えた。

「ホントに。指紋もいらない。」


 二人は通路をしばらく進み自動ドアから中へ入ると、そこで強烈なエアシャワーを浴びた。

 そして、そこから更に奥へ進み、左側の女性用更衣室に入って行った。


 更衣室には防寒用の上着と防塵服が置いてあった。

 夏でもここはとても寒いのだ。


 それを着込でから再び通路を進み二度目のエアシャワーを浴びると、ようやくクリーンルームの入口に辿り着いた。

 クリーンルームの中に入ると通路に沿って様々な装置ボックスが規則正しく設置されていた。


 その周囲にはアルゴンガスや窒素ガス等の配管群が所狭ところせましと固定されていた。

 時折ボックスに接続されっぱなしのノートパソコンやプログラマブルコントローラーが下に転がっており、現場感がただよっていた。


 更に足を進めるとそこにはスーパークリーンルームの入口があった。

 ちなみに出口は別にある。

 スーパークリーンルームとはクリーンルームの清浄度を更に高めた場所である。


 二人が例の『システムA03』に行き着いたところで熊谷と午藤が追いついて来た。

 白鳥はセンサーBOXのロックを解除すると中からメモリーカードを抜き出してケースにしまい、新しいカードを差し込んだ。


 午藤は『システムA03』のモニターのタッチパネルを触って以上がないか確認した。

 熊谷も後ろからそれをのぞき込みながら後藤に操作を頼んだりしていた。


 しばらくすると午藤がポツリとつぶやいた。

「特にないな。」


 卯月と白鳥はシステムA03の周囲を探りながら異常な所がないか調べた。

 熊谷もQCボックスの外壁周りを注意深く探った。

ほこりでもついてりゃあ誰か触ったかなんてすぐ分かるのにな。」


 午藤は卯月に聞いた。

「防犯カメラには何も映ってなかったんだよな。」


 卯月は答えた。

「はい。全部の防犯カメラに画像検索かけたんですけど人物含め不審なものは何もありませんでした。改変された痕跡もなかったし……。」


 白鳥は三人に声を掛けた。

「どうやら手動による操作はなかったみたいですね。後はこのデータを確認して何もなかったら一旦それで報告しましょう。」

 それから四人はクリーンルームを出て帰路についた。


 車中で熊谷が何やら足元にゴソゴソしまい込んでるのを卯月は見逃さなかった。

「ん、何ですか? それ。」

「え、いやこいつは……この前やった見舞いのお返しで……。」


 午藤はやれやれといった感じで暴露した。

「酒だよ。川上さんからもらってた。」


 卯月は熊谷の方を向くと疑う様な目で熊谷を睨んだ。

「まさか今飲むつもりじゃないでしょうね。」


 熊谷は弁解した。

「え、だってもう今日の仕事は終わりだろ。だったらいいじゃないよ。」


 卯月ははっきりした口調で戒めた。

「ダメです。まだお仕事中です。」


 熊谷はお願いする様な目で卯月を見た。

「一口だけ。おっちゃん仕事のし過ぎで喉乾いちゃったから。」


 卯月は無言の圧力というものを行使した。

「……。」


 熊谷は慌てて卯月の顔色をうかがった。

「……あ! やっぱり帰ってからのお楽しみにしようかな……。」


 誰も何も反応しない。

「……。」


 熊谷はうらめしそうに酒びんを眺めながら歌い出した。

「お酒はぬるめの~かんがいい~♪」

 寂しそうな熊谷の姿に皆思わず吹いてしまった。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 卯月カナメ … 第2研究開発部主任。

 白鳥マイ … 第3研究開発部主任。天才。息子1人

 熊谷トシロウ … 第4研究開発部主任。妻死去。息子1人娘1人。酒好き

 午藤コウジ … 第5研究開発部主任。柔道4段。妻、息子1人

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

 未木タツヤ … 第7研究開発部主任。バンドVo.、ビリヤード

 龍崎アヤネ … 第8研究開発部主任。文句大好き。彼氏あり


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 須賀ユウタ … 専務。2児の父。車とバイク好き

 佐山クロウ … 営業担当。体格がいい

 大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ

 下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き

 竹ヒマリ … 制作担当。絵やイラストがうまい

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1

 小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家

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