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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
95/623

95 ま、プラス思考で

 8月18日木曜日。

 夏フェス開催日の前日だ。

 私は午前中芸能事務所の栗原さんたちと当日の打合せを行っていた。


 私がこの芸能事務所ツイストーラスと契約したのが四日前。

 その翌日にはイベント担当の栗原さんから連絡が来て当日の演出などについてのお話しがあった。


 栗原さんは私に前以まえもって録画した映像を流すか生中継で歌うか聞いて来た。

 私は初めからその場で歌うつもりだったが、映像とゆう手もあるのかと少し迷った。


 結果、ファランクスは録画を使わず当日その場で歌うと聞いたので、私もそうすることにした。

 栗原さんも実はその方がいいと思っていたらしく喜んでくれた。

 他にも何かあれば遠慮せず言って欲しいと言われたが、さすがにバックダンサーの事は言い出せなかった。イベントってもう二日後だもんね……。


 私は服の動きが少し気になる事を伝えた。

 すると栗原さんは目を輝かせながらこれまた嬉しそうに話してくれた。

「それなら少しは満足させられるかもしれませんよ。期待してて!」


 さて、今日の打ち合わせはその最終確認だった。

 やはりファランクスの後か……。


 栗原さんは「気楽にやってくれればいいから。」と言ってくれたけど……やはり不安がよぎる。

 まあデビューのステージなんてこんなもんだけどね。


 私のクラスはSということであまり期待はされてないだろうし。

 ここまで来たら自分ができる事を精一杯やるだけだ。

 私は自分にそう言い聞かせて緊張を振り払った。


 思い起こせば、前世でもこんなシチュエーションはあった。

 名のあるユニットのすぐ後なんかはホントしんどい。

 しかし、あの頃は正直誰に期待されていたわけでもなく気ままにやれていた。


 それが今回とは違う所だ。

 そう、今回はサナやサユリ、蟹江さんたちや芸能事務所の人たち、そしてファランクスのみんなも私を見ている……期待している!


 更には他の関係する人たちも、たくさんの人が見ているのだ。

 口には出さないけど私に期待しているのだ。

 そう思うとまた居ても立っても居られない気持ちになってしまう。


 これがプロゆえのプレッシャーというものか……。

 今まで数多あまたのアイドルたちがこういった状況を乗り越えてパフォーマンスを繰り広げて来たのだろう。


 いや、私などまだ恵まれている方なのかもしれない。

 アイドルの先輩方、本当に凄い。尊敬する……。


 私はアイドルヲタクということもあって楽曲だけではなくかなり色々と調べていた。

 ただ、歴代のアイドル達が実際にどんな感じで仕事をしていたのかは結局の所よく分からなかった。


 その理由の一つに関係者の口の堅さがあった。

 芸能関係者の暴露記事や本なんかも出版されていたが、そこに見え隠れする部分はあったとしても肝心の所はうまい具合にかわされていた。


 確かにアイドルってのは半分は演じるものだから、その種明かしはある意味御法度ごはっとなのだろう。

 関係者が応援してくれる人たちのことを思いやってなのか、はたまたとても言えない様な裏があるのか。


 それは結局分からずじまいだったが、分かった所で人それぞれ事情が違ったことだろう。

 今は彼女たちが演じたパフォーマンスの歴史と文化だけがただ記録として残っているだけだ。


 その輝かしい歴史と文化が今の私たち、現代のアイドルを支えてくれている。

 そう私は思っている。


 これは他の様々な仕事や科学、文化伝統にも言える事だろう。

 私一人ではない。みんなで作ってるんだ。


 あ、何か色々考えてたら歌詞が浮かんで来たかも。

 歌の題名は『一難去ってニューストーリーズ!』

 私は早速、思い浮かんだ詩を書きつらねた。


 そして二十分程してネタに詰まると休憩に入った。

「う~んやっぱ無理。作詞って難しすぎ。テヘ!」


 今、蟹江さんたち3Dボカロ社の人たちは当日の準備や国内外からの来賓対応に追われている様だ。

 予想以上に大勢の参加者が来ることになったらしい。


 特にAIやQC関連の学者や関連企業の人たちがいきなり増えてしまった様だ。

 また、昨年の夏フェス参加者の口コミや急伸したボカロたちの活躍が注目を集めているのも原因の一つだろう。


 しかし、中には私を見るのが目的の人もいるとのこと。

 例の『ドレミ……』が原因である。


 イベント審査員の中で私に大変興味を持った人がいたらしく、その人が是非研究したいと言って3Dボカロ社公認のもと多くの学者先生や音楽関係者に話しを拡散したのだ。

 勿論、私やサユリの所にも蟹江さんを通じて承諾しょうだくの連絡は来たが、いずれデビューしたらばれる事だし断る理由もないので面会やインタビュー等のコンタクトは無しという条件でOKした。


 ところで、私が歌を人前で披露したのは身内とのカラオケのみ。

 後はサナやサユリと練習した時くらいだ。


 勿論歌や動画もネット上にアップしていない。

 つまり研究者の人たちからすればあの『ドレミ……』を歌ったボカロの歌を聞くことができる初めての機会というわけだ。


 普段なら「目にものを見よ! 私の実力どやーっ‼」となる所だが、今回はファランクスが前に控えているからな……皆きっと研究対象変えるよ。

 もしかしたらその前に他のボカロに目をつけるかもしれない……あのパフォーマンス、ハンパなかったもん。


 ま、それならそれで気楽ってもんだけどね。

 ちょっと寂しい気もするけど……フッ……。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【前世】

 ヨシエ … 前世で地下アイドルユニットを組んでいた仲間

 スミレ … 前世で地下アイドルユニットを組んでいた仲間

 カナ … バイトの仲間。新人


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 須賀ユウタ … 専務。2児の父。車とバイク好き

 佐山クロウ … 営業担当。体格がいい

 大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ

 下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き

 竹ヒマリ … 制作担当。絵やイラストがうまい

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1

 小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家

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