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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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94 とあるアイドル研究会の視察計画

 一昔前のアイドル研究会と言えば、アイドル好きの主に男子学生が集まってアイドルの文化や歴史を調べたり、現アイドルの魅力や傾向、今後の動向を探るといったものが多かった。

 勿論、現地にも足を運び、好きなアイドルや新人を応援したりファンクラブに入る者もいた。

 中には盗撮した写真や動画、更には何処どこで調べたのかスケジュールや住所までファンに売買する悪質なも者もいたらしい。


 さて、現在のアイドル研究会はどうかと言えば、アイドル好きの女性が集まってアイドルのコピーやオリジナルのユニットを組んで楽しむものが主流だ。

 勿論、昔ながらの流れを組む研究会もあるが、時代の流れからか減少傾向にあった。


 十勝とかちエイトは北都大学アイドル研究会の代表を任されていた。

 彼は主にアイドルの歴史や文化、その背景や社会的な影響等を研究していた。


 実は昨年暮れにしていたアイドルが卒業してしまった為、現在はフリーの状態であった。

 そんな事もあって現在十勝はボカロアイドルに興味を持ち始めていた。


 これは今を去ること2か月ほど前、6月中旬の話しである。

 ここ北都大学アイドル研究会の部室では四人の幹部が集まって何やら話し込んでいた。


 会計の旭川あさひかわセルが皆に尋ねた。

「なあ、今年の夏も東京行くの?」


 十勝エイトはボソッとつぶやいた。

「俺は行こうと思ってるけど。」


 幹事の日高レンジは遠い目をしながら、その小太りの身体をソファに埋めていた。

「またお金がかかりますな。」


 同じく幹事を務める紅一点の石狩ユキは意見した。

「この時期はイベント目白押しだから、行くならスケジュールもしっかり立てないと。」


 旭川はその意見に反応した。

「確かに。去年は無計画で行ったから大きなコンサートとか行けんかったしな。」


 日高は魂の抜けた様な声でボヤいた。

「スケジュールって言っても今一つですな。行きたいのが無いというか……はあ。」


 日高は先月まで推していたアイドルが男性と会っている現場を週刊誌に破抜ぱぬかれてしまい、即引退からの結婚発表という仕打ちを受けたばかりであった。

 しかし、皆ドルヲタだけに日高の傷心をあざ笑うものはいなかった。


 研究会はこの四人を中心として、総勢四十五名の構成となっていた。

 日高レンジは大人数ユニット、旭川セルはソロまたは少人数ユニットのチームをまとめていた。


 また、石狩ユキは自身がアイドル系バンドのボーカルをしており、他にアイドルユニットも兼任していた。

 彼女の所属するバンド『ユーカラ』は4名で、アイドルユニット『北都大ワカメノ娘』は現在十八名で構成されていた。

 但し、全員が北都大学の学生というわけではなく、入れ替わりもよくある。


 石狩ユキにとって夏のライブ巡りは最新のアイドル情報を得る為には欠かせない行事となっていた。

 そして、彼女が今回この計画にこだわったのには理由があった。


 例えば大きなライブやコンサートはしっかり前売りチケットを購入するところから準備しておかないと去年の様な事になってしまう。

 去年は何の準備もせず上京したために、飛び込みで入ったライブハウスや観光だけで終始してしまったのだ。

 まあ、それはそれで楽しめたのだが。


 旭川は日高を元気づけた。

「日高、気持ちは分かるけどな、新しい"推し"が見つかるかもせえへんで。」


 日高は旭川の方を向いて意見を述べた。

「まあ、どちらかと言えば地元のアイドルの方が応援もしやすいんだけどね。」


 旭川はうなずいた。

「うん、それはわかる。」


 石狩はやや不満げに言った。

「それならうちのユニットで誰かいないの?」


 日高は真顔で返事した。

「いや、それはないですな。」


 石狩は少しムキになった。

「な~に? 何かダメな所ある?」


 日高は彼女の話しに乗った。

「正直言ってまだまだかな。ずメンバー構成が不安定だしチームとして完成してないって言うか……。まあ、頑張ってるのは分かるんだけど。プロやセミプロとどうしても比較しちゃうんだよね。」


 石狩は苦笑いした。

「む、何も言い返せない……。そう言えばエイト。東京行くって何かお目当てのものでもあるの?」


 十勝エイトは石狩の方を向くとおもむろに読んでいた雑誌を広げて見せた。

「これに行こうかと。」


 雑誌にはボーカロイドの特集が組まれていた。

 旭川は驚いた様な顔で十勝に聞いた。

「ボカロ? 何でまた……。」


 石狩は十勝から雑誌を奪い、その記事を流し読みした。

「ああ、これ? この『ボカロ祭りサマーバージョン』てやつ。」


 旭川は少しあきれ顔で言った。

「え、まあアイドルっちゃあアイドルか。何でそんなのに興味持ったん?」


 日高が話しに加わって来た。

「ああボカロか……。まあアイドル研とは関係なく僕も興味はありますけどね。この前も動画サイトでいくつか見てみたけど、あれはあれで面白いかも。」


 石狩は思い当たる事を口に出した。

「でも最近じゃあリアルなアイドルじゃなくてアニメに出て来るアイドルユニットを見てうちのユニットに参加してる子も何人かいる。」


 日高はそれにうなずいた。

「まあ、確かにアニメの影響は大きいと思う。アイドルものだけじゃなくてパラキューレみたいな女児向け変身アクションものもアイドルになりたいきっかけになってると思うしね。」


 旭川は十勝に尋ねた。

「確かにそれは認めるけどボカロってまたそれとちゃうんやない?」


 十勝はここでボカロ祭に行こうと思った理由を話した。

「まあ、これは俺の研究の一環て所かな。アイドルの新しい形。しかも最先端のAIやQCが使用されてるってのも魅力だろ? かなり人気のあるボカロも出て来てるみたいじゃないか。」


 日高はその話に興味を示した。

「僕もそれは行ってみたいかも。どんなもんか見てみたい。」


 旭川もそれに同意した。

「まあ、そんなに言うんやったら俺も興味が出て来たし。」


 石狩も賛同した。

「なら、みんなで行ってみますか。何かの役に立つかもしれない。」


 こうして北都大学アイドル研究会の四人はボカロ祭(夏フェス)に参加することを決定したのだ。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【北都大学アイドル研究会】

 十勝エイト … 代表。(株)コスパルエイド会長の孫

 日高レンジ … 幹事

 旭川セル … 会計

 石狩ユキ … 幹事。アマチュアアイドル系バンドのボーカル


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