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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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91 QCの使い道

 私はニーケの話しを聞き終えるとすぐに蟹江さんと連絡を取った。

 勿論、ニーケも交えて。


 ほんの数秒待つと蟹江さんがモニターに映り込んだ。

「こんにちは。あ、やっぱりニーケも一緒にいた。」


 私は蟹江さんが何故そう言ったのか分からず聞いてみた。

「あ、先程はありがとうございました。蟹江さん、ニーケがいること知ってたんですか?」


 蟹江さんは少し浮かない表情だ。

「今、緑から電話があって……。」


 私はあまりのジャストタイミングに驚いた。

「え! 緑から……電話?」


 蟹江さんの後ろから蛯名さんの心配そうな顔がのぞいていた。

「はい、私も一緒にいました。話しの内容からして緑に間違いないかと……。」


 蛯名さんの口振りからもどうやら間違いなさそうだ。

 私は自分たちが連絡した理由を告げた。

「実は私たちもその事で連絡させてもらったんです。」


 私は先程のニーケとの話をつまんで説明した。

 ミネルヴァや『Z』、『GmUゲーム』の事、そして予言スキルでニーケが見た『緑と赤』のイメージについて等。

 蟹江さんと蛯名さんは真剣に私たちの話しを聞いてくれた。


 私たちが一通り話し終えると蟹江さんは蛯名さんに尋ねた。

「うん。緑が言ってた事と合わせると少し分かった様な気がする……だけど、そもそも色々無理がある様な気がしない?」


 蛯名さんは蟹江さんの方を向いて言った。

「もしその転生によるテレポーテーションが可能なら緑と赤もってことですかね。」


 蟹江さんは「う~ん」と考えてる最中、思い出した様に手をポンと叩いた。

「あ、そうだ。緑の言う事なんで当てにならないかもしれないけど、ニーケの見た怖いイメージはフィナと連絡取らせるために見せたものだから謝っといてくれなんて言ってた。」


 私とニーケは顔を見合わせた。

「はい、まさに私は相手の作戦通りの行動をしようとしてました……。私が奴らと話しをつけるしかないんじゃないかって。」


 蟹江さんはゆっくりとうなずいた。

「私たちの思考や情報が何らかの方法でのぞかれてるのかも……。」

 蟹江さんは怪談話しか何かで人をおどかした時の様にニヤリとした。


 蛯名さんも半笑いで肩をすくめた。

「もう、そうなって来ると正直お手上げですね。」


 蟹江さんは少し微笑みながら私たちに確認した。

「そうだ。緑と電話で何を話したのか。まだ二人に言ってなかったわね。」


 蟹江さんと蛯名さんは緑との通話について私たちに教えてくれた。

「……てわけなのよ。ニーケなら何かわかるかも……て。固まってる?」


 ニーケはまた"計算事けいさんごと"をしている様だった。

「あ、今は過去の……前世の情報が復旧してるんだと思います。しばらくお待ちください。」


 蟹江さんは心配そうな顔をした。

「え? それ大丈夫なの、色々と……。」

「ええ、私も心配でニーケに聞いてみたんですけど、何か解除できるから大丈夫って言ってました。」


「それならいいんだけど……。」

 蛯名さんも心配そうにそれを聞いていた。


 私はニーケが少し心配になった。

「ニーケは緑と赤に強敵『GmUゲーム』」の影が潜んでるって言ってました。しかもあの二人はニーケのスキルに平然と干渉して来たんです。となると今回の計算事は少し長くなるかもしれません……。」


 蛯名さんが私見しけんを述べた。

「そうね……。情報が確信に近いほど情報量も多くなってきそう。」


 蟹江さんはふと疑問に思った事を口にした。

「大体、何で後から記憶を付け足していくような感じになってんのかしら。ほら、緑と赤たちと同じ世界にいたんでしょ。科学の発展した。だったらそんな面倒くさいことしなくても最初から全部覚えていてもおかしくないんじゃないかな。」


 蛯名さんは少し考えながらそれに答えた。

「そうですね。話しからすると記憶自体はニーケさんの中に眠っている感じがします。そのデータが圧縮か何かされていて様々な情報をきっかけに解凍している。それが今の状態なんじゃないでしょうか。」


 蟹江さんは大きくうなずいた。

「うん、そうかもしれない。」


 蛯名さんは話しを続けた。

「データが大きすぎて現在の地球上のコンピューターでは容量とか何かと不足してるのかもしれませんし。」


 蟹江さんもその意見に同意した。

「そうね。まあQCのメリットは容量が莫大なことと疑似記憶が可能なことだから。しかもボカロソフトとなればそれほど機密きみつ性もなく自由度が高いってことで転生先に選ばれたのかも。」


 私は質問した。

「疑似記憶ですか?」


 蟹江さんは答えた。

「ええ、私も専門じゃないから詳しい事はわからないんだけど、例えば計算とかだと一つでも数字が違うと答えも全然違って来るでしょ。こんなだと記憶も寸分たがわないものが要求されるけど。ほら、そうじゃないものもあるじゃない。人間の記憶なんか大体いい加減なものがほとんどだし。それでも記憶として立派に機能している場合が多いわけよ。」


 私は確かめた。

「つまり、おおまかに記憶するってことですか。」


 蟹江さんはニッコリと笑った。

「うん、そんな感じだと思う。そうするとかなり容量が少なくて済むし計算もある意味楽になる。ものによってだけどね。」


 蛯名さんは付け加えた。

「そうですね。まあ人間のいい加減な記憶とは比べ物にならないほど『真』に近いらしいですけど。」


 私は訳が分からなかったが感想を述べてみた。

「何かQCって人間に近い感じがしますね。」


 蟹江さんが笑顔で応えた。

「そ、だからボカロのソフトには打って付けだったわけよ。」


 私は感心した。

「成程。QC由来のAIってそうゆう事だったんですね。他のボカロも見ましたけどそりゃ個性も出るわけだ。」


 蟹江さんは嬉しそうに語った。

「そう。QCって以前から開発されてはいたんだけどコストの割には使い道がまだ模索中で。それでうちの親会社がそのテスト運用の候補として手を挙げたわけよ。まあ、そのせいで国の機関なんかも絡んじゃってるんだけど。」


 私はニヤニヤしながら聞いた。

「例のプロジェクトYとかですよね。」


 蟹江さんはさっと頭を抱えた。

「もうホント山本の奴! どこまで私たちの足を引っ張る気なの?」

 ちゃんと凍結してありますよ、別の意味で。


 私は一つ疑問に思った事を聞いてみた。

「そう言えばボカロボットにいる時はQCと繋がってないですよね。」


 蟹江さんは蛯名さんに尋ねた。

「ええと、何か大丈夫って言ってたわよね。」


 蛯名さんがそれに答えた。

「はい、通常の無線通信に加えて量子テレポーテーションと疑似QCを使ってるって聞きましたが。」


 私は確認した。

「つまり、ボカロボもQCとつながってるってことですね。」


 蟹江さんはうなずいてから私に尋ねた。

「そうゆう事みたいね。ところでニーケっていつもどれ位で元に戻るの?」


 私もさすがに長いと思いニーケの方を見た。

 ニーケはまだ先程の状態のままだ。

「ニーケ、大丈夫?」


 声を掛けてみたが変化はない。

「私、スキル使ってみようかな。ニーケがどんな状態か探って……。」


 すると突然ニーケがビクンと動いたかと思うと、その場に崩れ落ちてしまった。

 私はあわてて彼女を抱きとめた。

「大丈夫? ニーケ!」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【本田家】

 本田トオル … サナとサユリの父。国際宇宙ステーションの研究者

 本田サエコ … サナとサユリの母。国際宇宙ステーションの研究者


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

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