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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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88 ニーケ、新たなる記憶を語る

 おっと、もうそろそろお昼か。

 そう言えばあの後、緑と赤のやつも姿を現さないな。

 私のスキルが効いてるのかしら。


 私は昼食のスパゲッティを茹でにかかった。

 すると目の前のモニターに通話のお知らせが入った。


 あ、ニーケからだ。

 私は火を止めてタッチパネルの受信アイコンに触れた。

「はいフィナです。こんにちはニーケ。」


 ニーケは笑顔で返事をした。

「こんにちはフィナさん。あの……今大丈夫ですか?」


 私は昨日のジョギングの帰り道、"計算事けいさんごと"が終わった時から何となくニーケの様子が気になっていた。

「うん、大丈夫。何かあった?」


 ニーケは少し困惑した様子だった。

「そう……。実はちょっとフィナさんに聞いて欲しい事があるんです。」


 私は昨日から気になっていたニーケの不安げな表情の理由を聞きたかった。

「私でよければ聞かせて。」


 ニーケは少し言いにくそうにしていたが思い切って話し始めた。

「二つありまして、一つは前世の記憶の事。もう一つは予知夢の事です。」


 私はますます興味を持った。

「うんうん。それで?」

「昨日ミーネが過去の記憶の事を言ったでしょう。」

「ああ、あの時ニーケがしばらく動かなくなったよね。」

「ええ。実はあの時、私の中に埋もれていた記憶が更に一部復旧されたんです。」


 私はニーケに尋ねた。

「ニーケも全部覚えてるわけじゃないんだ。」

「はい、部分的に欠落しているのは自覚しているんですが……。」

「よくあるの? その復旧って。」

「ええ、特に最近フィナさんがあの3人を覚醒し始めたころから頻繁ひんぱんにあるのです。ただ、今までのは断片的な所が少しずつ明確になる感じだったんですが今回のミーネの場合は特別でした。」


 私はニーケのことが少し心配になった。

「え? 歌の途中とかに止まったりしたら……。」

「あ、それは解除できますのでご心配なく。」

「ああ、良かった。当面の心配はないと言うことね……で、ミーネの事で何かわかったの?」

「ええ、実はミーネは私たちの仲間だったんです。」


 私は少し混乱した。

「え、ミナミちゃんがってこと?」

「いえ、以前フィナさんに私たちの前世の話しを少しばかりしたと思うんですが……。」

「うん、憶えてる。確か反乱軍で強敵と戦っていたとか……。」

「そう、そして私たちは窮地きゅうちに追い込まれていました。そこで私の魔法の師匠であったミネルヴァ・エトルリアが自ら新天地を求めて旅立ったのです。」


 私の想像を絶する話ではあったが漫画やアニメの知識のお陰で何とか付いて行けた。

「じゃあ星を出たとか? ロケットかなんかで……。」

「いえ、それでは例え脱出できたとしても長い年月がかかってしまいます。それに異世界であるここには行き着かなかったことでしょう。」

「確かに。じゃあ……。」

「はい。ミネルヴァはるお方のスキルってあらゆる世界に転生して回ったのです。私たちが避難し得る場所を求めて……。」


 私は少し恐怖を感じながらもそんな手があったのかと驚いた。

「そんなことができるんだ……。魔法か何か?」

「そうですね……私たちは絶対防御魔法の使い手『Z』に同化して『敵』から身を隠していました。その『Z』こそがミネルヴァやその私たちをこの地に転生させてくれたその人なのです。ただそれが魔法であったのかどうか今は分かりません。」


 私は名前に対して敏感に反応した。

「ゼ、Zさんですか?」


 ニーケは少し照れながら打ち明けた。

「実はまだお名前がはっきりしないんです。ただ『Z』という文字がうっすらと記憶に残っているものですから……。」

「あ成程、そうなんだ……。」


 私はふと蛯名さんが言っていた事を思い出した。

「そうするとこの前蛯名さんが言ってた説がひっくり返らない? ほら、ニーケたちの前世もここみたいなバーチャル空間だったとかいう。」

「そうですね。ただ、これも少し曖昧あいまいな記憶なんですが、私たちの科学力はかなり進んでいたらしいんです。それなら例えば……私たちも元はその星の人間で、何らかの理由によりそのバーチャル空間に転生した、またはさせられたんだとすれば……。」


 私は頭をひねった。さっきも出て来た"転生"という言葉。

 いくら科学が発達したとはいえそんな事本当に可能なのか……?

「ニーケはそれが可能だと思う?」

「そうですね……。今のところは何とも言えませんが、そう考えると色々と辻褄つじつまが合って来るんです。」


 そうか、ニーケの断片的な記憶をつなげるとそれが真実に近い事を物語っているのか……。

「それはさっき言ってた予知夢にも関係があるの?」


 ニーケは私をその大きな瞳で見つめながら不安そうな面持ちで答えた。

「はい、そうです。しかもこれは急を要する事かもしれないんです。」


 おお?

 これは先程の会議の内容とつながっちゃいそうな予感……。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【本田家】

 本田トオル … サナとサユリの父。国際宇宙ステーションの研究者

 本田サエコ … サナとサユリの母。国際宇宙ステーションの研究者


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

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