84 勝負の行方
ザッザッザッザ! 私はミーネを振り切ろうと全力で走った。
「負けフラグに負けてたまるか~!」
ミネルヴァも引き離したかと思えばまたしつこく近付いて来る。
やばい、このままでは直線で抜かれる!
しか~し!
私たちは最後の直線コースに差し掛かった。
ミネルヴァが私を追い抜きにかかる!
私は必殺『抜き去り封じ』の封印を解いた。
スピードの拮抗した相手と一対一の勝負になった時、相手の進行を妨げながら走るこの技。
確かにこの技はみんなにはブウ垂れられる。
「そんなのずるいだけじゃん。」
「運動会でやったら先生に注意されるよ。」
「あ~あ、ミヨちゃん泣いちゃった。ズルいから!」
等など言われ放題だ。
しかし、それはこの技がとてつもなくハイクオリティなテクニックに依り成立している事に気付いていないからそんな御託が言えるのだ!
後ろの気配を敏感に感じ取りながら左右に巧みなステップを入れて行く。
スピードも若干落ちるから失敗したら後はない究極の技なのである!
「うおおおおお! 追いついたぞ‼」
「な、何!?」
私が声のする方へ振り向くと遥か後方外側にアテナ、メーティス、ニーケの三人が現れた。
「何故あんな所に!」
三人は池の外側の固い道を選択して追って来たのだ!
「や、やばい!」
外側ってあれ400メートルは距離長いぞ?
「あの化け物どもめ~! しかしゴールはすぐそこ。抜かれいでか!」
私は必殺技を繰り出しながら全力で走った。
「ゴール目前! 勝利は我が手に!」
丁度その時足が言う事をきかなくなった。
「い、痛てて!」
どうやら足の筋肉がオーバーヒートした様だ……。
ゴール直前、私はその場につんのめって転んでしまった。
ゴロゴロゴロゴロと見事な転びっぷりだった。
一着のミネルヴァはピョンピョン跳ね回って喜んでいた。
アテナとメーティスは自分こそが三着だと言い張って譲らない。
二着のニーケが私の方に寄って来た。
「大丈夫ですか?」
私は一筋の涙を流しながら瞳を閉じ、半笑いで懇願した。
「少し……眠らせてちょうだい……。」
「やだ~っ! 縁起でもありません事よ! オ~ホホホ。」
と言いながらニーケは私の肩や背中をバシバシと叩いた。
何か励ましてくれてるのかな?
にしては悪意を感じるのだが……。
私の足は何とか歩けるまでには回復した。
宙に浮くこともできたが、帰りはみんなで歩きながら帰った。
ミネルヴァはニコニコ顔でスキップした。
「今日は楽しかったね!」
みんなも嬉しそうなミネルヴァを見て喜んだ。
「ええ、ミーネもなかなかやるじゃないの。」
アテナがそう言うとメーティスも笑顔でミネルヴァを見た。
「ああ、ミーネが楽しそうで嬉しいよ。ああゆうの好きなのかい?」
ミネルヴァは大きく肯いた。
「うん! 大好き! またみんなで遊ぼう!」
私は自慢げに告げた。
「ミーネ、遊びの事なら私に任せてよ! いくらでも知ってるわよ。」
ミネルヴァは目を輝かせながら私の顔を覗き込んだ。
「え、すごい! どれくらい知ってるの?」
私はミネルヴァの瞳をチラッと見ると更に偉そうに言ってつかわした。
「そうねえ、ざっと100いや……300は知ってるね!」多分。
ミネルヴァは飛び跳ねて喜んだ。
「やったーっ! フィナさん神!」
ニーケが驚いた顔をした。
「神って……あなたそんなネット用語どこで覚えたの?」
ミネルヴァが少し考えてから返答した。
「う~ん。多分ミナミの時の記憶だと思う。」
皆、成程という顔をした。
ミネルヴァはさらに加えた。
「何かいろんな事覚えてる。ミナミのそのずっと前の事とかも。多分だけど。」
それを聞いた瞬間ニーケが動きを止めた。
というか文字通り停止した。
皆ニーケを気遣った。
メーティスが慌てた様に声を掛けた。
「ニーケ、大丈夫かい?」
私は何かこの光景に見覚えがあった。
「多分大丈夫。ちょっと待っててみて。」
これはニーケが前世の出来事を私に分かりやすく表現する為に何か凄い能力を使っていた時と同じ感じだ。
ただ、今回は少し長いみたいだけど……大丈夫かな?
私が少し心配になって来た丁度その時、ニーケはハッと我に返った。
「あ、ごめんなさい。ちょっと計算事……。」
計算事……考え事的な?
アテナは胸を撫で下ろした。
「ふう、計算事か。たまにあるけど今回はちょっと長かったね。」
計算事で通じるんか~いっ!




