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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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83 みんなで競争

 ニーケは先程の事を思い出した。

「そう言えば……。さっきほら、フィナさんが林の方に走って戻って来た時。」


 私がニーケの方を見ると彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「あの子ったらお腹を抱えて笑ってましたでしょ。」


 私は苦笑いしながら返事した。

「あはは、ええ……。」


「あの子があんなに笑ってるの初めて見ました。」

「え? そうなんですか。」

「はい。あの子多分、私たちに合わせようと何か無理してるみたいで……。」

「ああ、分かります。一人だけ子どもでしかも出遅れてますからね。」


 ニーケは少しだけ目を落とした。

「ええ、それであの二人も心配してるんです。ほら、新しい友達作るって訳にも今行かないでしょ……。せめて同じくらいの歳の子でもいたらって。」


 う~ん考えてる事がいちいち紳士淑女なんだよな。

 感服いたします。


「そうだ。」

 私はひらめいた。

「今度、サナとお話しさせてみましょうか。喜ぶと思うし。」


 ニーケはパッと目を見開いた。

「ああ、それはいいですね!」

「やってみる価値はあるでしょう?」

「ええ、やはり同世代とのコミュニケーションは必要ですもの!」


 そうこう話してるうちに私たちは池に到着した。

「ふう、やっと着いた。休憩、休憩!」

 私たちは池のほとりの原っぱに座り美しい景観をながめながら水分を補給した。


 少し休憩すると私は竹馬を出してみた。

「みんな、これ知ってる?」


 私はみんなに遊び方を教えた。

 皆すぐに慣れて楽しそうに走り始めた。

「高さは『伸びろ』とか言えば調節できるから!」


 負けず嫌いのアテナはメーティスに声を掛けた。

「ならばメーティス。小さい方の池で1周勝負よ!」


 池は周囲5㎞ほどあるが、近くにある小さい方の池は1㎞程である。

 メーティスは提案した。

「どうせならみんなでやろうか。この調整のままで。」

 私はキラ~ンと目を輝かせた。


 ミネルヴァが元気よく賛同した。

「やろう、やろう!」


 私は竹馬が彼らの重力と筋力に耐えられるか心配だったがどうやら大丈夫みたいだった。

 すべては私の予定通り……となれば選択肢は一つ。

「私が勝つ‼」


 私の勝利宣言を聞いてニーケまでもがやる気になった様だ。

「そうはさせませんわよ。勝つのは私です!」


 ミーネは楽しそうにはしゃいだ。

「ミーネが勝つもん!」


 アテナが真面目な表情で宣言した。

「いや、悪いがここは私が勝たせてもらいます。」


 メーティスは半笑いで言った。

「やれやれ、大人気無い……。でも勝つのは私でしょう。」


 小さな池に行き着くと皆横並びになった。

 私はスタートの合図を叫んだ。

「位置について~~~~~ヨドン!」

 私は皆が呆気に取られているのを尻目に猛ダッシュした。


「あ、ずるいぞ!」

「おのれ! 卑怯者め! ゆるしませんわよ!」


 皆が鬼の様な形相ぎょうそうで追いかけて来た。

「ふん! 油断するのが悪いのよ!」


 勝算なくして誰が勝負するかっての!

 竹馬チャンピオン(自称)の私をなめるなよ!


「伸びろ!」

 竹馬はグンと高くなり歩幅が大幅にアップした。


 重力レベルの高いアテナとメーティスはズブズブと突き刺す竹馬の先に難儀している様だ。

 そう、ここは湿地帯なのだ……計算通り!


 この池の周りに関しては私の方に地の利があるのだ。

「縮め!」

 私の竹馬は泥濘ぬかるみの直前でシュッと短く縮んだ。


 どの辺の土が柔らかくてどの辺なら足が取られにくいのか。

「既に私の頭の中には完全にインプットされてるんだよ~っ!」


 ふと後ろを見るとニーケとミネルヴァがかなり詰めてきていた。

 私は竹馬を再び高くした。

「伸びろ!」

 大きな歩幅で2人をどんどん引き離す。


 ニーケは叫んだ。

「そうはさせませんわよ! 伸びろ!」


 お、マネしやがったな!

 ニーケは凄まじい速さで私を追い抜かした。


 その瞬間私は平然として竹馬を縮めた。

「縮め。」


 そして少し手前にある底なし沼に足を持っていかれて四苦八苦しているニーケを尻目に右を向いて回り道で回避した。

「引っ掛かりましたわね。オ~ホホホ!」

「何てこと! ぬ、抜けない……。おのれ~~!」


 さてと、ミーネは?

 後ろを振り返るとミーネは私の少し後をぴったりと付いて来ていた。


 うむ、地の利がこちらにあると見てラストの直線で勝負に出る気ね……。

「だが私には勝てない。完璧な策を講じてあるのさ!」


 私は後ろを振り返りニヤついた。

「あなた方のデータはすでに収集済み! 今日は私、なんか調子がいいんだよね。そう、帰ったら夢だったお店を開くんだ。ようし、無事戻ったら一杯やろう!」

 あ、このセリフの数々、すべて負けフラグでは……。(←死亡フラグです)

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手

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