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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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80 QCはこのフィクションにおける量子コンピューターって事で…

 蟹江は周りの反応を気にしつつもミーティングを進行した。

「ええと、前もって送信させてもらいました資料にもありますがグレイマンについて、もう一度蛯名の方から簡単に話をまとめてもらいます。」


 蛯名は前回フィナ・エスカに振りかかったグレイマンとの経緯を説明した。


 フィナの部屋にのみ現れた『外の世界』の存在。

 山本をさらおうとしたグレイマンの行動。

 多数のグレイマンが出現してAIポリスを襲い壊滅させてしまった事(現在復旧中)。

 そしてそれらをすべて瞬時に撃退したフィナのスキル能力。

 緑と赤との初コンタクト。


 蛯名は最後に、課題をいくつか書き並べてあるシートをテレビの隣にある電子ボードに映し出した。

「ちょっと課題を整理してみましたが、もし他に何かあれば言ってください。」


(1)グレイマン、緑と赤について。どうやって出現したのか。目的は何か。

   何故山本春子を狙うのか。


(2)緑と赤の存在。どうやってフィナ・エスカの思考を読んだのか。

   自分たちが宇宙人であると言っていた事について。


(3)山本春子は初期の段階でどうやってグレイマンから逃れたのか。

   山本本人も分からないと言っている。(AI用ウソ発見器で確認済み)


(4)大量に発生したグレイマンを一瞬で拘束したフィナのスキルについて。

   また、フィナ・エスカの『外の世界』はどうやって出現したのか。


(5)今後の対策について。


 他に意見がないことを確認すると蛯名は全体に説明した。

「始めに研究開発部の見解を述べさせていただきます。ずは(1)から。グレイマンの移動手段についてはまったく分かっていません。コンピューターの記録からも確認できていない状況です。」


 和田が口をはさんだ。

「私たちも以前から探っているのですが正直なところ仮説すら立っていません。我々のIDPS(侵入検知及び防止装置)はQCの発展に伴い急速な進歩をげているんですが、尻尾しっぽすらつかめていないのが現状です。」


 蛯名は話しを続けた。

「和田さん、ありがとうございます。実は山本春子が初めてグレイマンにさらわれそうになった時、どうやってか一人で逃げおおせているんですが……それについてもグレイマン同様記録が残されていないのです。まるでワープでもしたかのようにフィナさんの『外の世界』へと転移しているんです。」


 久保田は聞いた。

「それは量子もつれによる情報のテレポーテーションですか?」


 電子などの素粒子が互いに反対方向のスピンを持つ2つの粒子に分裂した場合、その2つの粒子には関連性が存在する。

 例えば分裂した2つの粒子をそれぞれA、Bとする。ここでAのスピンの状態を測定すると測定していない方のBのスピンの状態も判明する。何故ならAとBのスピンの方向が常に反対であるからだ。


 つまり、情報が一瞬にしてBの地点からAの地点に移動するのだ(但し、その速度については光速を超えないとの説もある)。

 これはAとBがどんなに離れていようと同じ事が言える。


 蛯名は言った。

「それに関しましては多分不可能かと思われます。もしそうであればQCのメインサーバーにおいてかなり複雑な操作を実行しなければならないので。」


 本田家のパソコンのようにQC付属のパソコンというのは実はそのパソコン自体にQCが備え付けてある訳ではない。

 メインQCに繋ぐ専用ルーターと解析装置が付属しているといった感じなのである。


 メインQCはとてもデリケートな環境で維持されており、その利用権はメイン1台につき1000世帯程となっていた。

 当然セキュリティも万全なはずであった。


 蛯名は話しを続けた。

「次にフィナさんのスキルについてですが、これはフィナさんの生まれもって与えられた桁外れのステータス量がボカロシステムのあらゆる権限を凌駕りょうがする事から発生したものと思われます。」


 皆、資料にあるフィナ・エスカのステータス数値の項目を見た。

 空知は手を挙げて質問した。

「ちょっといいかしら? 難しい事はよくわかんないけど他のボカロたちの平均値と比べると、まったくもって桁外れとしか言いようがありません。こんな事はあり得る事なの? あ、ごめんなさいフィナさんに悪気はないのよ。」


 フィナは笑顔で返した。

「いえ、お気になさらず。お話しを続けてください。」


 蟹江は返答した。

「はい。正直申しましてこれほど顕著けんちょな例は今の所フィナだけかと思われます。まあ、もしかしたら他にもいるかもしれませんが(一人心当たりはあるけどまだ確認してないし)……。何らかの目に見えない作用が働いたのかもしれません。」


 空知は諦めたように苦笑いした。

「まあ蟹江さんでも分からないんだったら、仕方ないわね。」


 蛯名は先程の話しを続けた。

「すいません、もう一つ。(4)の『外の世界』についてなんですが、これもどうやらフィナさんの『願い』が、しかも潜在的な願いが形になったものと思われます。」


 蟹江はその話しに補足をした。

「この『外の世界』はまるっきりのオリジナルではなく、どうやらAIワールドの枠組みにおいて派生したイメージが顕在化けんざいかしたものと思われます。」


 フィナは思い出しながら語った。

「言われてみればそうかもしれません。ナビゲーターとの会話の中でAIの世界の存在を知り、是非そこに行ってみたいと思っていましたし……。」


 早見が質問した。

「つまりそのAIの世界において絶大な力を誇るフィナさんのスキルにより、今のところ山本春子は保護されているということですか。」


 フィナは笑顔で答えた。

「私のスキルがそれ程大がかりなものなのかは分かりませんが、蟹江さんや蛯名さんと相談しながらできる限りの防衛策は取っています(現在、山本は氷漬けですが……)。」


 早見はフィナたちに感謝を述べた。

「そうですか。本当に助かります。一般の市民の方々に警護していただくしかないのは心苦しいのですが引き続き保護の方、よろしくお願いいたします。」


 蟹江も笑顔で答えた。

「まあ、フィナが一般市民かどうかは置いといて、私たちもできる範囲でですが協力させてもらいます。」


 先程からのあまりの急展開に情報の整理を試みていた相田川も挙手しながら質問した。

「あの、すみません。話しが変わっちゃうんですけどフィナさんの思考が読み取られたというのはコンピュータ内で数値化されたものが解読されたということなのでしょうか。」


 これには蛯名が受け答えした。

「はい、可能性としては有力だと思います。ただ、緑と赤の出現が昨日さくじつのことでしたので、これから調査を始めるというのが現状です。」


 蟹江は少し真面目な顔をして説明した。

「そうね。ただ、フィナさんの人間並みの思考が数値化されるとなると莫大な情報量になるだろうし、しかも暗号化されてるはずだから解読するって言ってもね……。相手、宇宙人って言ってたんでしょ。うふふ。」

 蟹江は自分で言ってて少し吹いてしまった。


 和田が少し怖い事を言い始めた。

「まさか人間の思考まで読み取るなんて言わないでくださいよ……。」


 蛯名は少し考えている。

 蟹江は笑顔で答えた。

「まさかね。もしそこまで科学が進んでんだったらもう私たちの及ぶ範囲じゃないし。それに何か人間にはあまり興味がなさそうにも見えたのよね。」


 フィナは内心思った。

『興味の対象が山本春子だけって……。もしかして緑と赤、やつらも残念な……。』


 早見はうなずきながらも意見を述べた。

「確かにそこまでではないにしてもかなりの知能犯である事は間違いないでしょう。最悪をも想定して捜査を進めていかなければなりません。」


 久保田はその意見に同意した。

「それはごもっともです。私たちも協力は惜しみません。どんどん連携を取って参りましょう。但し極秘扱いで進めて行かなければなりませんが……。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 卯月カナメ … 第2研究開発部主任。

 白鳥マイ … 第3研究開発部主任。天才。息子1人

 熊谷トシロウ … 第4研究開発部主任。妻死去。息子1人娘1人。酒好き

 午藤コウジ … 第5研究開発部主任。柔道4段。妻、息子1人

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

 未木タツヤ … 第7研究開発部主任。バンドVo.、ビリヤード

 龍崎アヤネ … 第8研究開発部主任。彼氏あり

<本部>

金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染

 波岡ギンペイ … 営業部部長

 銅崎ササエ … 人事部部長

 鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当


【株式会社コスパルエイド】大手IT企業。3Dボカロの親会社

 空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー


【情報科学国際研究センター】国直属の機関

 久保田ソウキチ … 日本支部サイバー犯罪対策課相談役

 相田川ハナコ … 日本支部サイバー犯罪対策課総合研究部の部長

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