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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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77 謎のウィルス

 会議の議題は大きく分けて三つ。

 (1)謎のウィルス『グレイマン』について

 (2)研究開発の現状と今後の展望

 (3)夏フェスについて最終確認及び打合わせ


 蟹江はグレイマンについてどこまでこの会議で伝えたらよいのか迷っていた。

 そこで先日、経理部部長で研究開発部との連絡担当でもある鯛島たいじまテツコに相談に乗ってもらっていたのだ。


 勿論この時点にいて、社長と鯛島を含む幹部四人にはフィナやファランクスの事についてはおおむね報告済みであった。

 前世の話し以外は。


 蟹江は司会として会議を進行した。

「ええ、それでは15時になりましたので会議を始めます。」


 蟹江は全員が聞く準備ができているかを確かめると最初の議案を読み上げた。

「では謎のウィルス『グレイマン』につきましては私から。えっと、報告と言いますか……。」


 蟹江はポケットからメモを取り出すと、それを見ながら話しを続けた。

「ええと、このウイルス、通称グレイマンについては以前から世界の各所で報告があったにもかかわらず今のところ何もわかっていません。で、どうやら先日、ボカロ制御システムの中にも出現した可能性があるとの事で現在調査中です。ホントに報告だけです。申し訳ありません。」


 蟹江は周りを見渡してから意見を求めた。

 意見が出ない事を願いながら。

「何か意見等ありましたらお願いします。」


 蟹江はさっさと話しを(2)の議題に移そうとしていた。

 だが、西方せいほう大学情報工学科准教授の大峰ダイタはそんな蟹江の願いを余所に元気よく挙手した。

「あ、ちょっとごめんなさい。」


 蟹江はドキリとした。

 大峰は蟹江に忌憚なく質問した。

「そのウィルスの影響は大丈夫なんですか。夏フェスの時影響ないんですかね。」


 鯛島たいじまが挙手して蟹江に代わって返答した。

「はい。一応グレイマンが出現した可能性のある端末に関しましてはウィルス検出ソフトを使って確認済みです。その結果残存ウィルスは確認されませんでした。また、現在まで多くの場所でこの『謎のウィルス』は確認されていますが、出現しても今回の様にほとん痕跡こんせきすら残していないのが現状ですので、このまま開催しようかと考えています。勿論あらゆる対策を講じて用心はしてまいります。」


 グラシア大学情報通信技術の元教授である田所マリアが口を添えた。

「まあ、最悪ボカロの世界にウィルスが入った所でイベントを中止すればいいだけの話しだから。それで事故や火災が起こるわけでもないしね。」


 大峰も納得した様子だ。

「わかりました。確かに人身に影響のある事じゃないですもんね。」


 蟹江は周囲を見渡しつつ言った。

「ええ、他に意見や質問はありませんか?」


 皆黙っていた。

 蟹江はホッとして次の議題に進もうとしたその時、3Dボカロ社の金本社長が挙手した。

「蟹江さん、ちょっといいかな。」

「はい。お願いします。」


 社長はその場で起立して全体を見まわすと改まって自分の考えを伝えた。

「この謎のウィルスにつきましては皆様にもご心配をおかけしており申し訳なく思っております。我社といたしましては現在、警察のサイバーポリスをはじめ官公庁、各省庁、ネット管理会社等多方面の関連先にも既に報告済みです。今後も連携しながら対策していきたいと思います。」


 そして蟹江の方をちらりと見ると話しを続けた。

「今ここではちょっとお伝えできない様な情報も聞いております。が、折を見て皆様にもご報告できるかと思います。責任はすべて私が取りますので信用していただければと思います。私からは以上です。」


 北野はポツリとつぶやいた。

「まあ、国際級の謎のウィルスとなれば極秘扱いの情報もあるでしょう。」

 社長の真摯しんしな態度に皆が理解しうなずいた。


 社長は蟹江の方を見ながらさっと右手を挙げた。

「ごめんね。じゃあ次行ってくれる。」


 蟹江はにこやかに会議を進行させた。

「ありがとうございました。では、他になければ……次の議題に移らせていただきます。(2)の『研究開発の現状と今後の展望』ですね。では、蛯名主任お願いします。」


 蛯名は起立して一礼した。

「それではお手元の資料をご覧ください。」


 資料には三つの提案について書かれていた。

 これは今日の午前中に各研究部から提出された文書を急いでまとめたものだった。


①「着衣動作処理システム」について

 ・(株)ツイストーラスと共同開発しているボカロ支援プログラム。

・夏コミ等での反響を見て商品化を予定。販売元は(株)ツイストーラス。

 ※ツイストーラスはフィナ・エスカとファランクスが所属する芸能事務所。


②一般向けソフトの開発について。

 ・QCが組み込まれていない一般のパソコンでも3Dボーカロイドを楽しめる。

 ・購買しやすい価格設定。海外版も検討中。

 ・どこまで現存のソフトに近づけられるか現在思案中。

 ・ゲームソフトやスマホアプリ他、各グッズ、コラボ商品を考案中。

  外注の予定。


③パフォーマンス特化型ブースターエンジンについて

 ・被験者フィナ・エスカとファランクスの実験では飛躍的な成果を収めている。

 ・会話による他ボーカロイドの影響に関しては今後の研究課題である。

 ・被験者のパーソナルデータから他のボカロでも使用可能な要素を抜き出す。

  それらの要素をもとにソフト化。現在の所四種のソフト化が可能(①含む)。

  他ボカロへの影響がないことを確認後、追加オプションとして販売する。


 これらの提案については様々な意見が飛び交った。

 が、大まかなところで意見が合致した。

 ただ一つの疑問を除いては……。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 卯月カナメ … 第2研究開発部主任。

 白鳥マイ … 第3研究開発部主任。天才。息子1人

 熊谷トシロウ … 第4研究開発部主任。妻死去。息子1人娘1人。酒好き

 午藤コウジ … 第5研究開発部主任。柔道4段。妻、息子1人

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

 未木タツヤ … 第7研究開発部主任。バンドVo.、ビリヤード

 龍崎アヤネ … 第8研究開発部主任。彼氏あり

<本部>

金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染

 波岡ギンペイ … 営業部部長

 銅崎ササエ … 人事部部長

 鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当


【株式会社コスパルエイド】大手IT企業。3Dボカロの親会社

 空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染


【ボカロ協会】3Dボカロの金本(会長)、蟹江、蛯名も所属している。

 市川タクマ … 理事。(株)市川電算の会長。出資者

 杉田サラ … 副理事。西方せいほう大学の元教授

 若益エイガ … 初期。(株)若益水産会長。出資者

 大峰ダイタ … 西方せいほう大学理工学部の准教授

 田所マリア … グラシア大学情報通信技術の元教授。1児の母

 須田ユウキ … 放送事業者協会の理事

 加藤アリシア … 国際音楽大学声楽科の教授

 北野コウゾウ … (株)ムーンレコード情報メディア研究部所長。出資会社

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