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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
75/623

75 お好みのボカロ

 サナは友だちである山梨ユキナの家に遊びに来ていた。

 いつもの仲良しメンバーである栗木ミナ、桃園マナミ、柿月ヨナも集まっていた。

 皆、夏フェスのパンフレットをチェックしながら何やら話している様子だった。


 ミナは皆の顔を見回した。

「まあ、フィナとファランクスは当然として、みんな他にお目当てはいるの?」


 パンフを見ていたマナミは逆に質問した。

「ミナこそ誰かいんの?」


 ミナはパンフレットの市川ココナの写真をみんなに見せながら少し興奮気味に言った。

「私はやっぱりココナかな。」


 マナミはニヤけた。

「まあ、ココナはね。人気もナンバーワンだし。私はレミファーナかな。それとくれないカジン!」


「あ、私も好き。紅カジン、いいわよね!」

 横から割って入ったのはユキナの母クミコである。

 ユキナの母はフィナの歌声を聞いてからボカロに興味を持ったらしく、そこで紅カジンを見つけたのだ。


 マナミはユキナの母の方に顔を向けてにっこりした。

「私、あの声が好き。もちろん歌がうまいところも。」


 ユキナの母はお盆に乗せたお茶とお菓子をテーブルに置いた。

「そう、何かうっとりしちゃうのよね。あの声……。」


 ユキナは「うふふ」と控えめに笑った。

「お母さん、すぐにはまるんだから。」


 ミナはマナミに尋ねた。

「でも、レミファーナと紅カジンじゃ全然ジャンルが違うんじゃない?」


 ヨナはパンフレットを凝視した。

「うん。どちらかと言うと神崎ノアの方がカジンに近い感じ。聞かせる歌っていうか……。」


 サナはそれに付け足した。

「そうだね。レミファーナはテクノポップだから。ま、私もいいと思うよ、レミファーナ。」


 するとミナはニンマリとした微笑みをサナに向けた。

「サナは猫山チエリとか黒崎ネムじゃないの?」


 サナは少し顔を赤らめた。

「え? あんまり聞いたことないけど……。」


 ミナはサナをニヤケながら追及した。

「この前カラオケで歌ってたじゃん。そうだ、振付もしてた。ね、マナミ!」

 マナミは苦笑いして受け流した。


 サナはますます顔を赤らめた。

「いや、それはフィナの練習に付き合って覚えたから……。まあ、ちょっとは好きだけど……。」


 猫山チエリはアニメ(声優)系アイドル、黒崎ネムは昔ながらのアイドルを踏襲とうしゅうしたスタイルを取っていた。

 サナはフィナとの練習の際、この2人の曲を歌ってみてすぐに好きになってしまったのだ。

 だが、ある意味両者ともコテコテ過ぎてなかなか好きとは言い出しにくかった様だ。


 マナミはヨナに聞いた。

「ヨナはやっぱりファランクス一筋ひとすじ?」


 ヨナはマナミの方に目をやった。

「うん。それはそうなんだけど……。バグランドがちょっと気になるかな。」


 アイドルユニット『バグランド』は企業が育成しているボカロユニットの中では最大人数の六人をほこっていた。

 このユニットは新しい試み、つまり一度に複数のボカロを同条件で育成することに成功していた。


 通常なら人数分の育成費用が発生するが、この所謂いわゆる『姉妹型育成システム』により、二倍弱のコストでここまでし上がって来たのだ。

 しかも、その相乗効果は目覚ましくパフォーマンスにも絶大な効果を上げていたのだ。


 ユキナはうなずいた。

「うん。ファランクスとは少し違うけど、あれは気になるよね。」


 ミナは少し気味悪そうな顔をして皆に尋ねた。

「そう言えば、この田町ナイトって何者なの?」


 全員が「あまりよく分からない」という素振りを見せた。

 マナミはパンフを見ながらポツリと言った。

「私もよく分からないけど、ここにほら、社会派ロックって書いてあるよ。」


 ヨナは何かを思い出した様な顔をした。

「何か、熱狂的なファンが大勢いて信者とか呼ばれてるって聞いたことある……。」


 ユキナはその話からある事を思い出した。

「そう言えばこの夏フェスに参加するかどうか最後までめたって話し……あれ田町ナイトだったんじゃない?」


 ミナはパンフレットを見ながら呟いた。

「名まえはナイトなんて大人しそうなのに……。」


 マナミはミナの言葉に反応した。

「ナイトはナイトでも騎士の方なんじゃない?」


 ミナは不安そうな顔をした。

「何かコワい……。」


 ユキナは笑いながらミナを元気づけた。

「大丈夫だよミナちゃん。大人の人もいっぱい付いて来てくれるし。」


 ユキナの母もミナに優しく声を掛けた。

「そうよミナちゃん。ミナちゃんのお母さんだって来てくださるんでしょ?」


 ミナはケロリとしてキッパリと言った。

「うん、そうだね。ママの恐ろしさに比べたら何てことないわ!」

 全員が笑いながらミナの方を見た。


 サナはニヤケた。

「逆にミナちゃんのお母さんの方が怖かったりして。『また宿題サボったわね!』な~んて。」


 ミナは「あちゃ~」という顔をした。

「ヤバい……今日の分の宿題やってない。」


 サナは先程の仕返しをした。

「あ~あ。怒られる~♪」


 ミナは口をとがらせながら断言した。

「ママより怖いものなんて絶対にない!」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【サナの友だち】

 山梨ユキナ … サナの友だち。9歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる

 栗木ミナ … サナの友だち。9歳。元気。

 桃園マナミ … サナの友だち。9歳。おしゃれ。

 柿月ヨナ … サナの友だち。9歳。物静か。兄のユタカはアテナのマネージャー


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【ボーカロイド】

 市川ココナ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

 市川カナデ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

 神崎ノア … 女性ボカロ。(株)ノアボカロシステムに所属

 紅カジン … 男性ボカロ。(株)紅音源システムに所属

 山チエリ … 女性ボカロ。(株)猫CATに所属

 田町ナイト … 男性ボカロ。芝橋高専「夜のボカロ研究会」に所属

 黒崎ネム … 女性ボカロ。クラリス通信制大学「ボカロアイドル研究会」に所属

 バグランド … レイ、イチコ、ニーナ、ミラ、ヨヨ、サツキからなる女性ユニット。

       (株)バグランドに所属

 レミファーナ … 連ミサコ、三木レイナ、ファン・ランカからなる女性ユニット。

         東央大学「レミファーナ」に所属

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