71 守ってあげたい?否!
本部には誰もいないらしく、蟹江さんは一応メールを送信していた。
蛯名さんは会議室の片付けや戸締りをしていた。
私は蟹江さんに聞いた。
「えっと、これから私、どうすればいいんでしょう。」
蟹江さんは悩まし気な顔をした。
「う~ん、そうね……。」
蛯名さんが口をはさんだ。
「さっき山本を隔離ユニットに移そうと思ってたんですが……。」
蟹江さんは私の方を見ながら言った。
「成程……。それもいいかもしれないわね。」
蛯名さんは言った。
「本田さん宅に郵送しましょうか?」
蟹江さんはまだ少し考えている様子だった。
「いえね、ほら。向こうさん急に積極的になって来たでしょ。しかも暴力的だし。」
蛯名さんはその内容について確認した。
「データ転送を邪魔しに来るということですか。」
「うん。勿論それもあるけど……。現実世界でどうなんだろうと思って。」
蛯名さんは推理するように言い当てた。
「それは転送し終わったユニット自体が狙われるって……あ!」
蟹江さんは自分の考えを告げた。
「いや、それはわかんないわよ。ただ、その危険性もあるってこと。」
蛯名さんは大きく何度も頷いた。
「成程。いえ、それはもっともです。緑と赤は山本を狙っていると宣言してますし……それに現実で彼らを操る何者かが必ずいるはずですから……。」
蟹江さんは真面目な顔をした。
「相手が何考えてるか分からない以上、最悪も考えておかないと……。」
蛯名さんはその意見に同意した。
「ええ、本田さんのお宅には絶対迷惑はかけられません。」
二人はどうしたものかと考えあぐねている様だ。
私は一つ提案してみた。
「ダメかもしれませんが、私のスキルで何とかやってみましょうか?」
蛯名さんが私を上目遣いで見つめた。
こんな時だが……か、かわいい!
「何かいい方法があるんですか?」
私は少しあたふたしながら説明した。
「そ、そうですね。例えば、私の家自体にバリアーを張るとか……。」
蛯名さんは蟹江さんの方を見た。
「逆にその方がうまくいくかもしれませんね。本田さん宅にも迷惑がかかりませんし。」
蟹江さんも意を決した様に眉間に皺を寄せた。
「そうね。今の所はそれしかないかも。」
それを聞いて蛯名さんは私に尋ねて来た。
「フィナさん。できたら二重三重の防御ができるといいんですが、可能ですか?」
私は少し考えた。今は斎藤さんもいないし……コンソールで質問してみようかな。
「ちょっとお待ちください。今コンピューターに聞いてみます。」
私もコンピューターの一部なんだけどね……。
と、その前にバリアー張っちゃおう。
「私の家にバリアー! 敵が侵入できない様にして!」
すると前回同様、面前のモニターに文字の羅列が流れた。
≪目的遂行『自動リンク』。『操作』『アクセス』『ライセンス』『解析』『プログラム』、『計算』、『複製』『擬態』より新スキル『暗号』、『隔離』、『索敵不可』生成。更に新スキル3種混合により『バリア』を生成及び発動。≫
私はコンピューターに質問してみた。
「質問したいんだけど。いい?」
≫どの様なご用件でしょう。
「ええと……ナビゲーターが敵に狙われてて、そいつらから守りたいんですけど。」
≫少々お待ちください。
蟹江さんと蛯名さんは私のモニターを転送したものを見ながら話しをしていた。
≫お待たせしました。
≫確認させていただきます。
≫"敵"というのは"グレイマン及びその集団"、加えて"緑と赤"のことでよろしいですか。
「はい、そうです。」
さすが! よくわかったな……。
≫少々お待ちください。
うん。計算してるんだね。凄いね。こんな事もわかっちゃうなんて……。
ま、今回は少し時間がかかっている様だがそれはそうでしょうね。




