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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
67/624

67 緑と赤

 次の日の午後2時。

 暑い日差しの中、芸能事務所『ツイストーラス』の小橋社長と副社長の黒木ナナは時間通り本田家に行き着いた。


 黒木が家のベルを鳴らすとインターフォンから声がした。

「はい、少しお待ちください。」


 フィナ・エスカのオーナーである本田サユリはドアを開けて二人を招いた。

「こんにちは、はじめまして。今日はよろしくお願いします。」


 小橋社長は丁寧にお辞儀をしながら挨拶した。

「いえ、こちらこそ。日曜日に押しかけてしまって……。今日はよろしくお願いします。」


 サユリは二人を居間に通した。

 そこには蟹江さんと叔父の本田ススムが既にソファーに座って待っていた。


 蟹江さんは笑顔で小橋社長に手を振った。

 小橋社長も軽く片手で挨拶した。


 叔父のススムは二人が入って来ると立ち上がって挨拶した。

「今日はわざわざお越しくださり、ありがとうございます。ささ、どうぞこちらに。」

 そう言ってソファーに座る様うながした。


 小橋社長は改まってススムに身体を向けてお辞儀した。

「今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。急な話しだって言うのにこんなに早く対応していただけるなんて……。」


 副社長の黒木も一緒にお辞儀をした。そして、持って来たお菓子の箱を差し出した。

「これ、つまらないものですけど……。」


 サユリはお辞儀をしながらその包みを受け取った。

「わざわざ気を使っていただいて……。ありがとうございます。」

 ちなみに名刺はスマホで自動交換がなされていた。


 小橋社長はソファーに座るや否やサユリと叔父に向かって感謝の弁を述べた。

「昨日の今日で集まってもらいまして、ホントこちらも助かります。」


 その後、サユリがお茶を配り終えてソファーに座り一通りの挨拶が済むと、黒木が契約について要点を説明し始めた。


 芸能事務所と言えば胡散臭うさんくさい所も多いがサユリはこの小橋社長を信用していた。

 この事務所が日本でも有数の芸能事務所の子会社である事も理由の一つだが、何より蟹江さんやファランクスのオーナーたちもこの小橋社長を信頼しているというのが大きい。


 叔父もこういった事務作業には慣れているらしく、とんとん拍子に契約するところまで進んでしまった。

 後はもう一人のオーナーであるサナとフィナ本人の了承があれば完了という所までけた。


 サナは今、上の階で家政婦のクレハさんと自分の部屋の掃除をしていた。

 また、居間の大画面テレビは既にパソコンと接続されており、いつでもフィナを呼び出せる様にしてあった。


 しかしサユリはここに一抹いちまつの不安を感じていた。


 以前からサナとはフィナのデビューについて話しをしていた。

 初めの頃は「まだデビューさせないの?」等と言っていたが、サナがフィナと仲良くなるにつれ段々と考え方が変わって来た様なのだ。


 最近ではデビューの話しをあまりしたがらない様にも見受けられた。

 まあ、サユリ自身も以前はフィナの立場がどうなるか分からなかったのでデビューさせるとは言い切れなかったこともあったのだが。


 昨日もサユリはサナにデビューの件を聞いてみたが、どうも返答を避けていた気がしたのだ。

「ねえ、サナ。ファランクスの芸能事務所がね、フィナをデビューさせてくれるかもしれないってさ。」

「ふ~ん。」

「どうする?」


 サナは照れるようにテーブルクロスのはしをいじっていた。

「どうしようかな~。」

「明日、事務所の人が来るから考えといてよ。」

「う~ん。わかった。」


 サユリはサナの気持ち次第ではデビューの先送りも止むを得ないと心に決めていた。

 サユリはインターフォンでサナを呼んだ。

「サナ、ちょっと来てくれる?」

「え、今?」


 奥で家政婦のクレハさんの声が聞こえた。

「サナちゃん、後はやっておくから行って来なさい。」

「うん、わかった。今行く。」



 30分ほど前――

 さて、私はというといきなりサユリからデビューの話しを聞かされてスーパーMAXハイテンショーン‼

 少し前まではAIポリスのナミエさんからしばらく山本をあずかって欲しいと懇願こんがんされてスーパーどん底ローテンションだったのだが……。


 ナミエさんの話しだとAIポリスはほぼ壊滅。

 山本を引き取っても守る手立てがないらしい。

「フィナさん。面目次第めんもくしだいもございませんが、どうやらAIポリスのメインルーチンの損傷が激しく、いまだ復旧の目処めどが立っていません。」

「メイン……。」何それおいしいの?


 モニター越しにナミエが多忙を極めている状況が伝わった。

「それと、どうやらまたあなたのスキルに助けられた様なのです。」

「ああ、何の手ごたえもなかったからダメだと思ってました。」

「いえ、すべてのグレイマンが一瞬にして動作を停止しました。」


 何処どこからか他の隊員がナミエを呼ぶのが聞こえて来る。

「ナミエ隊長! ちょっとこっちよろしいでしょうか!」

「わかった! 今行く!」


 私は気をかせた。

「そうゆう事ならわかりました。山本は暫くこちらで預からせていただきます。」


「そうですか。助かります。では後程のちほど!」

 ナミエは早々に通信を切った。

 余程急いでいたのであろう。


 まあ、そんなこんなでこうゆう事になってしまった。

 山本はと言え寝室のベッドで勝手に寝ていた。

「あいつ、寝るんだ……。」


 どうせ刑務所にいた時だって反省もせずケツでもきながら日がな一日寝ていたに違いない。

 そうだ、今度グレイマンにこちらから引き渡すってのもありだな。ウシシシシ。

「グレイマン、おいでやす~!」


 すると背後から声が聞こえた。

「呼びましたか?」

「え‼」


 私がソファーに座ったまま後ろを振り返るとそこには全身ダークグリーンのグレイマンが立っていた。

 いや、甲冑は似てるけど少し小さい……。


「今、呼んだでしょ。」

 またもや別の声が!?


 前に向き直すと目の前のソファーに今度は深紅の甲冑をまとったグレイマンが座っていた!

「ああ、動きを止めないでね。何もしないから。」

「……!」


 私の背後にいた緑のグレイマンが前方のソファの方へと歩み寄った。

「私たちは話しに来ただけだ。」

「話し?」

「そう。今日は話しだけ。」


 フン。私はだまされんぞ。宇宙人とお茶の間で話すのは要注意!

「あんたら、話せたんだ。」


 すると緑甲冑は赤甲冑の隣りに座りながら答えた。

「ああ、この前のあいつらは私たちの触手に過ぎないからね。」

「ん……?」何言ってんのこいつ。


 ポカンとしていると赤甲冑が笑いながら言った。

「ところで私たちが宇宙人だってよくわかりましたね。」


 え? 心読まれてる?

「はい、読んでます。と言うより分かります。」


 どゆ事ーーーっ! いや……。

「どうゆう事?」キリッ。


「あっはっはっは!」

「うふふふ、面白い人。」

「笑うな! こんちくしょうめ! 心読まれてんなら、もう腹のさぐり合いは終わりだい!」


 すると少し斜め上を向いて緑甲冑が言った。

「おっと邪魔が入ったみたいだ。」


 赤甲冑は残念そうな声を出した。

「あら残念。せっかくお話しできると思ってたのに。」


 二人はスッと消え去った。

「また来るよ!」

「蟹江さんによろしくね。それと山本さんにも。うふふふ。」


「ににに、二度と来んな~!」

 私は少し上の辺りに向かって大きな声を張り上げた。


 すると、サユリから通信が入った。

 あいつら……何で連絡が入るって分かったんだ?

【人物紹介】

 私(フィナ・エスカ)…異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のオーナー】

 本田サユリ … 私のオーナー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のオーナー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【本田家・親族】

 本田トオル … 国際宇宙ステーションの研究者

 本田サエコ … 国際宇宙ステーションの研究者

 三好クレハ … 本田家の家政婦

 本田ススム … サナとサユリの叔父。トオルの弟

 中原トキノスケ … 母方の祖父。本田家の近所に住んでいる

 中原トワ … 母方の祖母。本田家の近所に住んでいる


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … オーナーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … オーナーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … オーナーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … オーナーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社ツイストーラス】芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 須賀ユウタ … 専務。2児の父。バイク好き

 佐山クロウ … 営業担当。体格がいい

 大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ

 下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き

 竹ヒマリ … 制作担当。イラストがうまい

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1

 小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家


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