表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
66/623

66 ユタカの策

 社長室では専務の須賀ユウタが未だ興奮冷めやらぬ様子で額の汗をぬぐっていた。

 小橋社長と副社長の黒木ナナもこの異常事態を再確認していた。


 小橋社長はユタカに声を掛けた。

「そう言えばさっき、ちょっと気になったんだけど……。」


 ユタカはプロジェクターを仕舞しまい込みながら尋ねた。

「はい、何ですか?」


 小橋社長はソファに腰を深く落ち着けた。

「あ、取り敢えずみんな座ってからでいいわ。」


 黒木ナナは四人分のお茶を入れている。

 ユタカが席に座り、黒木もお茶を配り終え席に着いた。


 ユタカは小橋社長に身体を向けて再び尋ねた。

「先程おっしゃっていた気になる事というのは何ですか?」


 小橋社長はユタカに確認した。

「ほら、さっきあなた、ええと、何だっけほら……。『この実験に参加したボーカロイド』みたいな事言ってたでしょ。」


 ユタカは"あの事"に気が付きながらも答えた。

「はい、言いましたが。」


 小橋社長は前かがみになった。

「それよ、それ! 何かファランクスの他にもこの実験に参加したボカロがいた様に聞こえたんだけど……。」


 ユタカは満をしてそれに答えた。

「はい、ファランクス以外にもう一人のボカロが参加しています。」


 小橋社長は少しの間ユタカの目を見つめると、ぼそりと質問した。

「やっぱり……。で、誰なのそいつは……?」

 黒木と須賀もユタカの次の言葉に注目した。


 ユタカは三人を見まわしながらその質問に答えた。

「はい。まだ無名なんですがフィナ・エスカというボーカロイドです。」

 専務の須賀ユウタが尋ねた。

「クラスは?」


 ユタカは須賀の方を向き、ゆっくりと答えた。

「Sクラスと聞いていますが……。」


 小橋社長はその質問にケチをつけた。

「そんな事聞いてもしょうがないんじゃない? もうクラスなんて関係ないでしょ。これは……。」


 須賀は大きくうなずいた。

「確かにそうですね……。これは失礼しました。」


 小橋社長は何かを考えながら須賀に告げた。

「いえ、別に聞きたいことがあるなら聞けばいいんだけど……。」


 黒木はスチールキャビネットの扉を開き、何やらファイルをき集め出した。

 小橋社長はユタカにそのボーカロイドについて尋ねた。

「ねえ、あなたそのフィナ・エスカだっけ? その子のオーナーと知り合いだったりする?」

「はい、何度かお会いしたことはあります。」


 よし! と言う顔をしてから小橋社長はユタカに提案した。

「ねえ、無名ってことはまだ何処どこの事務所にも所属してないんでしょ?」

「ええ、してないと思いますが……。」


 小橋社長は少し言いにくそうにユタカに話しかけた。

「ちょっと、あんた……。」


 社長を思いをんでユタカは先に提案した。

「ああ、もし良かったら紹介しましょうか?」


 小橋社長は細い瞳を大きく見開いて言った。

「いいの? うん、お願い。そんなら早い方がいいわね。黒木……。」


 黒木はファイルから書類を何枚か抜き出しながら言った。

「スカウトに必要な書類はそろえてあります。」


「じゃあ、柿月君。いついける? 連絡……。」

 ユタカは思い通り事が運んでくれたので満足気な微笑みを浮かべた。


 ユタカはミネルヴァが復活した日の帰りぎわ、フィナのオーナーであるサユリから相談を受けていた。

 それはフィナ・エスカのデビューについてだった。


 蟹江や他のメンバーも一緒にいたので、その事についてその場で少し話し合った。

 結果、ファランクスと同じ事務所の方が後々(のちのち)も都合がいいのではないかという結論にいたったのだ。


 蟹江の話しだと小橋社長は、ちょっと変わってはいるが信用できる人間とのことだった。

 蟹江は小橋社長の後輩にあたり、学生時代にゼミや生活面で色々と世話になったらしい。

 また、大学を卒業してからもちょくちょく会う程仲がよいのであった。


 小橋社長は蛯名とも面識があり、その時芸能界デビューを持ちかけたらしいが断られたという話しもある。

 後日蟹江に「ちょっと、うちの社員引っ張らないで!」等と怒られたらしい。


 ユタカは蟹江に「私から小橋さんに聞いてみようか?」とも言われたが、ファランクスの話しで社内に混乱が起こることは明白だった為、一策を講じたわけである。

 つまり、前以まえもってサユリには話しが付いていたのだ。


 小橋社長はお茶を一口飲むとこう言った。

「あんた、こうなること分かってたんじゃないの?」


 ユタカは見通された事に少しあせった。

「……はい、まあ、ある程度は……。」

「てことは何……もう話しついてんの?」


 ユタカは恥ずかしそうに苦笑いした。

「はい、実は……。」


 小橋社長はすべてを理解した様だった。

「成程ね。あんたやるじゃん。これで話しが早くなった。黒木。」


 黒木は小橋社長の指示に応じた。

「はい。書類は用意してあります。後は登録の準備と……そのフィナ・エスカについて分かってる事をまとめて皆に配布したいんですが。」


 小橋社長は黒木に言った。

「そうね。それは柿月君に聞いてくれる? 後、みんなには会議ん時に私が言うから。」


 黒木はユタカに確認した。

「それでは柿月さん。後で構わないのでフィナ・エスカについて分かってる事を教えていただけますか。」


 ユタカは『さすが、学生の僕とはレベルが違いますね。』等と思いながら理解のある小橋社長たちに感謝した。

「はい、助かります。」


 すると、小橋社長はかすように言った。

「うん。それより早速連絡、お願い。私ちょっと蟹江に連絡入れとくわ。」


「わかりました。」

 ユタカはすぐ様サユリに連絡を入れた。

【人物紹介】

 私(フィナ・エスカ)…異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のオーナー】

 本田サユリ … 私のオーナー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のオーナー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … オーナーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … オーナーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … オーナーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … オーナーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 須賀ユウタ … 専務。2児の父。バイク好き

 佐山クロウ … 営業担当。体格がいい

 大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ

 下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き

 竹ヒマリ … 制作担当。イラストがうまい

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1

 小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ