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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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64 ツイストーラスってどんな会社?

 ミネルヴァが覚醒した次の日。


 アイドルユニット『ファランクス』が所属する芸能事務所『株式会社ツイストーラス』。

 ここはその会社ビル4階にある会議室である。

 丁度今しがた数人が集まり映像を見始めた所だ。


 社長の小橋レイナは"それ"を見た瞬間、手を口に当てて硬直した。

 そのまま息をすることも忘れている様だ。

 一度だけ左隣ひだりどなりにいる柿月ユタカをびっくりした様な目で見ると、また映像にのめり込んだ。


 いつも冷静な副社長の黒木ナナは初め拍子抜ひょうしぬけした様な目で映像を見やっていたが、あわててドアの外に飛び出した。

 しばらくすると、「ファランクスのパフォーマンスならもう何度も見てるから大丈夫」などと言っていた社員たちを呼び集めて来た。

 社員は全部で十人足らず。その内の何人かは現在会社の外に出掛けていた。


 何事かと会議室に入って来た社員たちは映像を見ながらモニターに近づいて来た。

 一人が「これは……ファランクス?」と小さな声で言ったきり、皆黙ってしまった。


 腕を組んで微動だにしない男性社員。

 あまりの変わりように満面笑顔の女性社員。


 今日は柿月ユタカ以外のオーナー三人、星カナデ、春日クルミ、大地ミノルも来社していた。

 星カナデは満足気な顔をして呟いた。

「やっぱりプロの人でも驚くレベルだよね。」


 映像が終わると皆が拍手した。

 小橋社長は涙を指で払いながら言った。

「何よコレちょっと……涙が止まらないじゃないのよ! ああ、びっくりした。」


 そう言うとハンカチを催促さいそくした。

「ちょっと。ハンカチか何か……。」


 ユタカがチェックがら洒落しゃれたハンカチを差し出すと、小橋社長はパッと奪い取り、ぐに目と鼻をぬぐった。

「グスッ。後で洗って返すから。」

 そう言うと、少し落ち着きを取り戻した様だ。


 大柄の男が耳打ちする様にボソッと尋ねた。

「社長、これは一体……?」

 彼は営業全般を担当する佐山クロウだ。


 社長は横目でチラリと佐山を見ながら文句を垂れた。

「こっちが聞きたいわよ、まったく……。説明してくれる?」


 ユタカは答えた。

「はい、これが新生ファランクスです。」


 皆黙って聞いている。

 ユタカは話しを続けた。

「皆さんにも既に報告しましたが、私たちファランクスは株式会社3Dボーカロイドの新しい試みに協力しておりました。その結果が今見せた映像です。」


 佐山クロウは言った。

「そんなに凄いのかい。その……と言うか、全然違うじゃないですか! ま、いい意味でだけど。」


 あ、"ブースターエンジン"て言葉が出てこなかったんだと思い、カナデはニヤけた。

 大地ミノルは佐山を気遣きづかった。

 確かにこれは営業方針をかなり変更しなきゃならないから大変だろうな……。


 ユタカはそれに答えた。

「はい。但しデメリットと言いますか……先日もお伝えしました通り会話は一切できませんので、そこの所はご容赦ようしゃください。」


 するとイベント担当の栗原ユウヒが尋ねた。

「あなたたちはどうやって意思の疎通そつうはかってるんですか?」


 ユタカは笑顔で答えた。

「はい。彼女らは話せなくなったわけではありませんので……。」


 栗原は少しほっとした表情で言った。

「あ、話せないんじゃないんだ。」

「ええ。ただ、今の段階では『この実験に参加したボーカロイド』の会話がどうやら他のボーカロイドに悪影響を及ぼす危険性があるとのことで、公的に会話が流せないということなんです。」


 栗原はユタカに確認した。

「じゃあ、私たちとは打合せできるってことでいいのね。てか今の段階ではコマンド入力みたいなもんだけど……。」


 ユタカはうなずいた。

「はい。ただ、後で見ていただこうと思っていますが以前とは違って普通の会話で打合せできるようになりました。」


 栗原はを大きく見開いた。

「それは凄いけど……本当にそんな事が可能なの?」


 ユタカは話しを続けた。

「ただし、くれぐれもファランクスの会話を他のボーカロイドに聞かれてしまうことのない様にしていただきたいのです。他人のボカロを壊しでもしてしまったら、そうそう弁償できるものではありませんから……。」


 栗原はメモを取りながら了承した。

「わかったわ。その辺は厳守ってことで。」

 他の社員も大きく首を縦に振って同意を示した。


 ユタカは改まって全員に呼びかけた。

「さて、それでは言うべき事を言わせていただきましたので、最後に見ていただきたいものがあります。」

 そう言うとユタカは再び映像を流した。


「え~、今度は何事?」

 小橋社長は期待と不安が入り混じった様な顔をしてスクリーンを見つめた。


 すると画面の中にファランクスの四人が映り込んだ。

 今まで皆が見たことのない様な素敵な笑顔をたたえて……。


「こんにちは。ファランクスのアテナです。株式会社ツイストーラスの小橋社長及び社員の皆様。いつもお世話になっております。我々一同、心より感謝申し上げます。」


 四人が一斉にお辞儀すると、椅子に座っていた小橋社長がガタガタッと後退あとずさりした。

「ちょっとこれ……何よ……。アテナがしゃべってんの?」


「はい、私が話しています。驚かせてしまい申し訳ありません。」

 アテナはそう言ってから行儀よく頭を下げた。


 栗原ユウヒは前のめりになって見つめている。

「アテナ。あなた私たちの言ってる事が分かるの?」


 アテナは栗原ユウヒの方を見るとそちらに身体を向けてそれに応えた。

「はい。我々全員理解しているつもりです。栗原ユウヒさん。」

 自分の名前を言われた栗原は顔を赤らめてニンヤリした。


 小橋社長はファランクスの四人を見つめながらつぶやいた。

「蟹江の奴、うちのボカロに一体何してくれたのよ……。」


 ミノルは思った。

 なんか……さっきから怒ってんのか喜んでんのか分からない人だな……。

【人物紹介】

 フィナ・エスカ…異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のオーナー】

 本田サユリ … 私のオーナー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のオーナー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … オーナーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … オーナーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … オーナーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … オーナーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 須賀ユウタ … 専務。2児の父。バイク好き

 佐山クロウ … 営業担当。体格がいい

 大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ

 下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き

 竹ヒマリ … 制作担当。イラストがうまい

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1

 小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家

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