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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
583/625

583 葉っぱコンタクト

 サンガ村の男たちは会話を続けていた。

 若者三人のうち一番背の高い男が年長の二人に尋ねた。

「で、タエの居場所は見当ついとんのか?」


 水野は彼らの口から出た『タエ』という名を聞いて耳を澄ませた。

 タエ……台場タエのことか!?


 初老の男は渋い顔で首を横に振った。

「いんや、恐らくはあの洞窟ん中だと思うんだがな。奴らもあそこの牢にはよく出入りしとるようじゃし。とは言え、調べようにも何せあそこは暗くごちゃごちゃと入り組んどるからのお。」


 老人の男がタエのいそうな場所について予測した。

「隠すとしたら最奥部じゃろう……が、あの辺りは毒蛇や毒虫がわんさとおる。見張りもいる中、先もなく袋小路では行き着いたとて連れ出すのは至難じゃろう。」


 今度は二番目に背の高い男が腕を組みながら首をかしげげた

「やはりいくさは避けられぬか……。まあ、わっぱ(子ども)らは避難所にかくまわれておるからの。それだけは安心じゃが。」


 初老の男は残念そうな表情でその男の言葉を否定した。

「ジロウよ、それがな……奴ら、そのわっぱらを先陣に引っ張り出すつもりらしいんじゃ。」


 そのジロウと呼ばれた男は目を丸くして声を荒げた。

「な……どういうこっちゃ!?」


 初老の男は一呼吸置くとそれについて説明し出した。

「こん戦話いくさばなしは当然シチヨウにも流れちょる。となれば向こうさんもそれなりの準備をして来るじゃろう。道中にも仕掛けがわんさと組まれとるはずじゃ。しかもゴギャクの奴ぁシチヨウに捕らえられるのを恐れて偵察もろくに出しゃせん。どうする積もりかと思えば何てこたあない。わっぱどもを先に行かせて様子をうかがう積もりなんじゃ。」


 一番背の低い男が肩を震わせながら怒りをあらわにした。

「何て野郎だ! わっぱを盾にしようなんて……あんの野郎! ただじゃあおかんて!」


 一番背の高い男も口惜しそうに「くそっ!」と叫んだ。

「つまり、わっぱらは今や人質ってことになるのか? それでは下手に逆らうことすらできぬではないか!」


 初老の男はその男の苛立ちに理解を示した。

「そうゆうこっちゃタイチロウよ……今や時すでに遅し。仮に逆らえたとて奴の仲間連中が黙っとらんじゃろう。既に村の者も何人か殺されておる。」

 彼はそう言いながら老人の足元を見た。


 背の高い男、タイチロウは村人が殺されていることを知らされていなかったようだ。

「な……! それはまさか……牢に入れられている者たちのことか!?」


 初老の男はタイチロウの質問に答えた。

「うむ、我も先程知ったばかりじゃが……ほとんどの者は殺されておるとのことじゃった。おうの兄上も……な。して、この知らせを伝えてくれた者も今はどうなっておるか分からぬ……。すべては奴の叔父、狂坂きょうさかトアクの目論見もくろみ通りと言うわけだ……。」


 五人はその場でしばらく口をつぐみ途方に暮れている様子だった。

 するとその時、大きな葉っぱが一枚上空からひらりと落ちて来た。


 五人はゴギャクの手の者に盗み聞きされたのかと思い警戒したがどうやらその気配は感じられなかった。

 一番背の低い男は今しがた舞い降りて来た葉を見るなりそれを持ち上げた。

「何か書いてある……。」


 五人は一度解いた警戒を再度強めた。

 タイチロウは怪訝けげんな表情で尋ねた。

「して、サブロウ。そこには何と?」


 サブロウはその葉に書かれている内容を読み上げた。

「我、シチヨウの者なり


 すると上から更に二枚の葉が舞い落ちて来た。

 そこには巨大な岩しかなく、人間がその上に登るには足場でも組まない限り到底不可能だった。


 サブロウはその二枚を素早く拾った。

 するとそこにも文字が記されていた。

『話は聞いた』

『協力したし』


 五人は唖然としながら周囲を見回していたがやがて諦めたように互いの顔を眺め合った。

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