表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
579/625

579 仕込みは念入りに

 この一帯の土地柄については昔から知り尽くしているし何処どこぞの敵が攻めてきた場合の備えもあったが、それはサンガ村にしても同様だった。

 だから今までお互いの村ではちょっとした小競こぜり合いこそあったもののいくさにまで発展することはなかったのだ。


 戦国の世にあって隣村同士の戦などそれこそ命取りであり、よほどの実力差がない限り村は互いに疲弊ひへいしてしまう。

 そうなれば当然のこと、他の忍者衆が我先にと村を手中に収めようと群がってくることだろう。


 ただでさえ実力最高位の両村だ。

 うとましく思っている集落や集団は少なくなかった。


 だが今では戦乱の世も徐々に収まりここしばらくは天下泰平、とまではいかなくともそれなりに平和な日々が続いていた。

 忍者の里の多くは農業など他の職業に専念するようになり盗賊を含む不埒ふらちな集団も激減していた。


 よって、大抵の集落では無益な争いなど起こさない。

 とは言え、小さな幸せでは飽き足らずそれに感謝することもなく自己の欲するままに行動する輩が湧いて出るのも世の常だ。


 そういった者が完全に淘汰とうたされる為にはGmUゲームのような人知の及ばない圧倒的な技術と支配力を兼ね備えた絶対的システムの誕生を待つしかない。

 それが本当に正しいことかは別として。


 水野たちは棟梁たちに頼んでそれら仕掛けの実物を見せてもらった。

 仕掛けのほとんどは月影家の倉庫に集められていた。


 木陰はそれを見て顔をしかめた。

「こりゃあ大変だぁ。大きいのもあるし、数もたくさんあり過ぎる!」


 火柱もその言葉にうなずきながら目に付いた大きな物体に近づいた。

「ああ、それに何だか重そうなのもあるし……何だこれは……ひーっ! 重いーっ! ふう、一体何に使うんだ? こんただもん……!」


 そこにはミサイルの先端のような形をした木造の物体があり内側は空になっていた。

 この道具については水野の父親が答えた。

「ああ、そいつは落とし穴だ。それを土に埋めておいて足をはめれば追ってを巻くのにも使えるだろう?」


 火柱はキョトンとした顔で尋ねた。

「え? けんどこんな大きい穴に自分から足突っ込むか? 夜ならかく。」


 水野は父の説明を補った。

「ああ、埋めた後に水を入れるんよ。すると一見水溜まりみたいに見えるでしょう? 街道のような狭い道を急ぐならその水溜まりを突っ切るしかない。まあ、こっちはあらかじめ知っとるわけだから迂回するがな。」


 火柱は感心したようにうなった。

「はーっ! なるほどなあ。こんなのに足突っ込んだら確かに大変や!」


 水野はさらに説明を補足した。

「しかもこれ、入った足はなかなか抜けない構造になっとる。ただな、相手の心理をしっかり測って水たまりの位置や大きさを設定せにゃならない。」


 水野の父はそういったことを得意としていた。

「まあ、そいつはわしに任せておけ。ただ……。」


 一同は、一瞬曇った表情を見せた水野の父親に注目した。

「こいつもそうなんだが……あの道を通るのはサンガ村の連中ばかりじゃねえ。行商人や旅の者も通るわけじゃき。かと言って奴らがいつ攻め込んでくるかも分からん。仕込む頃合いを確かめるのが難儀なところよ。」


 その時水野が「父上」と呼び掛けた。

「どうした? ソウコ。」

「これらの道具に少々改良を加えてみては如何いかがでしょうか。」

「改良とな……。」


 一同は水野を見つめながら次の言葉を待った。

「例えばその落とし穴、ふたをつけておいて頃合いになったら外すというのはどうでしょう。水は張っておくので上に板を張り粘土などで防水しておけば悟られることもありません。」

「成程、一工夫入れればいいというわけか!」


 棟梁とうりょうたちは顔を見合わせてうなずき合った。

「うむ、承知した。ならば我らはその改良にあたることとしよう。」


 水野は丁寧に頭を下げた。

「お願いいたします。私たちはそれらを運搬する算段を立てておきましょう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ