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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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57 お散歩

 今日はサナの頭に乗っかって外へ散歩に行く予定だ。

 この前は両親に言われて家の中を回っただけだった。

 もっとも家が広すぎて30分以上もかかってしまったが……。


 ちなみに私たちボカロは基本、テレビやネットなど外部情報に接することができない仕様になっていた。

 これはソフトの性質上止むを得ない事で、ボカロが外部情報による影響を受けない様にするためであった。


 以前サユリにテレビやネットを見たいかと聞かれたが、ボカロという立場もあるし、いっその事メディアに束縛そくばくされない生活を送るというのも悪くないかと思い丁重ていちょうことわった。


 今回は初めての外出ということもあり、サユリも付いて来てくれる。

 残念ながら自由に動ける機会はなさそうだが……。

 まあ、夏フェスの前に外の世界を知っておくのもいいだろう。


 そろそろ時間かな? 等と言ってるそばからサナがモニターに現れた。

「フィナ、おはよう!」

 昨日ご両親が職場に戻ってしまいサナが寂しがってないか心配だったが、どうやら大丈夫そうだ。


 私は笑顔で挨拶あいさつした。

「おはようございます。サナちゃん!」

 サナは早速ケーブルをつなぎ私をボカロボへと転送した。


 コックピットの席に着くとボカロボのナビが挨拶をして来た。

「おはようございます。マスター。それでは起動します。」

「あ、おはようピーチ!」

「ピーチ……とは何ですか?」

「うん。あなたの名まえにどうかと思って。ボカロボピーチ。略してピーチよ!」

「了解しました。ありがとうございます。マスター。」

 気に入ってくれた様で嬉しいと勝手に思い込む私。


 サナは元気よく言った。

「じゃ、行こう!」


 サナは私を頭の上に乗せると早速ドアを開けて部屋の外に出た。

 そして、サユリの部屋のドアをノックもせずに開け放った。

「お姉ちゃん、準備できたよ!」


 サユリの方も準備万端な様で、小さめのリュックを背負い込みながら言った。

「おはようフィナ。で、どこ行くか決めた? サナ。」

「うん。私の学校に行きたい。」


 私たちが1階に降りると家政婦の三好クレハさんが声を掛けて来た。

「あ、もうお出かけですか。」


 サユリは返事をした。

「はい。ちょっとサナの学校まで行ってきます。」

「わかりました。お気をつけて。フィナさんも。」


 こんなロボ姿の私にまで挨拶してくれるなんて、優しい!

「はい。行ってきます!」


 サナは玄関の扉を開けた。

「あ、晴れてる。いいねぇ!」


「うん。いい天気でよかった。でも、ちょっと暑いかもね……。」

 サユリは少し顔を引きらせて言った。


 どうやらここは住宅街の様だ。

 ただ普通と違うのはとても大きな家ばかりが立ち並んでいるということ……。


「デッカ! あの家もこの家もデッカ! 塀もナッガ! 庭ヒッロ! デッカ!」

 私はマイクがオフになってるのをいい事に叫びまくった。


 しばらく行くと、サングラスをかけた女性がオープンカーに乗ってゆっくり私たちの横を通り過ぎて行った。

 赤ちゃんを胸に抱き、後ろを向いて子どもと話しながら……。

「おえい! 危ねーんじゃね?」


 私はマイクをオンにしてサユリたちに言った。

「あれ、今の人後ろ向きながら運転してませんでした?」


 サナは言った。

「後ろに子どもがいたから話してたんだよ。」

「え? でも……。」


 サユリは私の疑問に気が付いてくれた。

「ああ、そうか……。ほら、自動運転だからさ。」


 私は理解した。あり得る……。

「あ、そうですよね。あははは。」


 私が愛想笑いしながらチラリと前を見ると、何か十字路の真ん中あたりに浮遊物が……。

「ん? あれ何ですか。あの浮いてるの。」


 サナは笑いながら答えた。

「え~。あんなのも知らないの? エヒャヒャ。」


 サユリは私をフォロウしてくれた。

「フィナは始めて外に出たんだから当たり前でしょう。」


 サナはその浮遊物を指さした。

「でも、あれは補助センサーだよ。」


 サユリはサナに聞いた。

「じゃあ、何するやつか知ってる?」


 サナは少し考えてからそれに答えた。

「車とか人がぶつかったりしない様にするんじゃない?」


 サユリは笑顔で言った。

「うん、そうね。良く知ってたじゃない。」


 サナはすまし顔で姉を見た。

「この前学校で言ってたもんね。」


 更に進んで行くと前方上空に飛行物体が見えた。

 ん? ボカロボット?

 何か吊り下げてるけど……。


「あれ、ボカロボットみたいですね。」

 サユリはそちらを見ながら教えてくれた。

「ああ、宅配ドローンね。」


 ドローンか! 進化したんだねドローン! 私は嬉しいよ!

 サナが付け加えた。

「近くまでおっきな車で運んで来て、そこからドローンで一斉に運ぶんだよ。」


 サユリがサナをめた。

「へえ、そんな事まで知ってるんだ。」

「だって、そのトラックよく見るもん。中から沢山ドローンが出て来たから。」


 私は聞いてみた。

「マンションとかはどうやってんのかな? ドローンが着陸する場所とか。」


 サユリはそれに答えた。

「受け取りボックスの取り出し口がベランダとかに設置されてる場合が多いんじゃないかな。アパートや団地もそうみたいだし。」


 団地やアパートったーっ!

 ちょっと落ち着くわ……。

【人物紹介】

 私 … 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のオーナー】

 本田サユリ … 私のオーナー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のオーナー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【本田家・親族】

 本田トオル … 国際宇宙ステーションの研究者

 本田サエコ … 国際宇宙ステーションの研究者


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