562 未知との遭遇
水野はホワイトボードの機能を持ち合わせた優れモノの大モニターの画面をトントンと軽く小突いた。
「分らないことも多いけど取り敢えずこれ、この『ゲーム』。それと『ハジュン』てのが怪しい。記憶のこともそうだがこいつらのことが分からない以上話が進まないような気がする。」
木陰はその意見に同意した。
「うん、そうね。話の内容からするとその二人……って言っちゃっていいのか分かんないけど、そいつらが敵のリーダーっぽいわね。」
ミカンは今までの情報からフィナ・エスカとファランクス(?)のニーケが『ゲーム』や『ハジュン』と大きく関わっているらしいことを読み解いた。
「その敵をフィナさんかニーケさんが封じていたみたいなことも言ってましたね。セレーネたちはこのことを知っていたんでしょうか。」
モモはそれを聞いて急にガイアのことが心配になった。
「それとガイアのことも! ゲームのメインコンピューターがガイアって名まえで……。けど、それと何の関係があるのかな。ガイアは苗字で実は姉妹とか?」
火柱はその意見について自分の見解を述べた。
「けど、あっちのガイアはコンピュータなんだよね。どっちかって言うとこっちのガイアの方が本物なんじゃないか?」
金城もガイアについて今自分が考え付いたことを口にした。
「ガイアがそのメインコンピューターを組んだとかですかね。それで自分の名まえをつけたとか……。」
月影はその意見に強く共感した。
「うんうん、分かる! 私もユメタンに自分と同じ名まえつけたから!」
火柱は月影が自分のボカロに自らの名を付けた時、思わず目を丸くしてしまったことを思い出し「ははっ」と笑った。
「一心同体ってやつか。ん? となるとこっちのガイアとあっちのガイアは何かで繋がっていたとかか?」
木陰は火柱の考えに同意した。
「その可能性はあるね。いや、寧ろそうかもしれない。その方がいろいろと辻褄も合う。けど、何で今までそれをしなかったんだろう。」
水野は木陰の疑問に自分なりの考えで応じた。
「今まではしなかったんじゃなくてできなかったんじゃないかな。フィナさんかニーケさんか分からないけどその防壁とやらに弾かれて。ところがその『実行犯』てのはそれを掻い潜ることができた。つまり、そいつを仲間に引き入れたことで今回のあれが可能になったんじゃないか?」
ミカンは水野の解釈を補助した。
「ハジュンの身代わりっていうのは恐らく結界によってここに来れなかったハジュンの通信媒体かなんかでしょうね。」
月影はその言葉に何やらピーン! ときたようだ。
「て、ことはよ? そのハジュンてのは何処にいんの? 地球の外ってことは……う、宇宙人ってこと!?」
いつもならスルーされる月影の突飛な発送も今回だけはそうも行かなかった。
水野はあまり話を深刻にさせないようオブラートで包むような言い回しをした。
「まあ、考えてみればセレーネさんたちもこの地球の人間じゃないって意味では同じかもしれないけどね。」
火柱はにやりと笑いながら月影を見た。
「地球外生命体ってやつか。」
月影はその言葉を聞くなり期待と恐怖の入り混じったような目で火柱を見た。
モモはのん気にも有名な映画(人類が未知と遭遇するやつ)の音楽(正確には話し合いの音)を鼻歌で奏でた。
タタタタタ~ン♪ (音階はシ 高ド ラ 低ラ ミ みたいな感じ)
月影はそのBGMを聞いて目を丸めた。
「て、て、ことはよ? セレーネと話してた私たちって……宇宙人と話してたってこと!?」
モモはどこかの教祖のように両手を左右に開くと神妙な面持ちで月影に告げた。
「そうなのです。あなたは宇宙人と話していたのです。」
そして先程の音楽を囁くように口ずさんだ。
タタタタタ~ン♪
月影は「は、はあーっ!」と言いながらその教祖に手を合わせた。
他の五人はそれを見て思った。
あ、これはスルーしていいやつね、と。




