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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
560/625

560 敵か味方か

 その時、突然水野がユメタンに「ごめん、ちょっと」と声を掛けた。

「ユメタン、悪いんだけど今のところもう一度再生してくれる? 音声を大きめにして。」


 他の六人もモニターに注目した。

 モニターにはZ組の六人がユメタンの記憶映像を見ながら話し合っている場面が再生されていた。

 何故か音声が小さかった為、話に夢中になっていたメンバーはZ組の間で会話があったことにすら気付いていなかった。


 だが、水野だけは耳を澄まして聞いており、歌寺の放った「ガイアってまさか……GmUゲームのメインコンピューター?」というセリフに反応したのだった。

 二度目の再生では皆それを集中して聞いていたのだが、いきなりの意味不明な会話に首をかしげるばかりだった。


 水野はここで再びそのセリフを確認するとつぶやくように尋ねた。

「これってどうゆう意味だろう。ゲームって何だ?」


 それは全員が疑問に思ったところであったが皆黙ったままその先の会話に耳を傾けた。

 今回の再生ではユメタンが気を利かせてZ組メンバー全員の名まえを表示してくれていた。

 以下は会話の様子。


非天「やはり、何かつながりがあるのかもしれないね。香々美、何か見つかったかい?」


香々美「ほんのわずかだけど、これは……ハジュンのものに違いないわ!」


蛇代「けど、ハジュンはこの地球には入れないんじゃなかったっけ?」


香々美「来たのはハジュンの身代わりみたいなもの。それと、他に感じたことのないような気配が一つ。恐らくそいつが実行犯。待ってて。もうちょっと解析してみる。」


北守「成程、地球に入れそうな仲間を送り出して来やがったか。」


鳥山「この地球上に張り巡らされた、恐らくはフィナ・エスカのものと思われる絶対的な防壁が、ハジュンだけを封じるためのものなら、そういったことも有り得るな。」


非天「だがフィナさんによる防壁は例の『大きな災厄』ってやつの侵入をもはばんでいるんじゃなかったか? ビーマさんの口振りだとあれはどうもハジュンとはまったく違う存在のように思えたが。」


香々美「そうなるとむしろフィナさんの結界がハジュンを締め出してるってのも疑わしくなって来る。そもそもこの防壁はフィナさんの力なんかじゃなくて……ニーケさんの力?」


蛇代「あ、そう言えば。そろそろフィナさんの出番なんじゃない?」


 ここまでの会話内容は七人にとってあまりにもぶっ飛んでいた。

 また、そこにはミュラノスの名が一つも出てこなかった。


 ハジュン? 実行犯? ビーマ?

 そして何故ここにニーケとフィナの名が?


 水野は皆が言おうとしたことをいち早くユメタンに告げた。

「もう一度、最初からお願い……。あ、いや、さっき再生したところからで……。」


 結局その後三回同じところを繰り返し再生してもらい水野たちはそれぞれメモを取って会話の内容をまとめた。

 その間に月影と日土モモは水野に頼まれてホワイトボードの機能を持ち合わせた優れモノのモニターを準備した。

 これはあまりにも訳が分からな過ぎて眠そうにしていた二人に配慮して水野がお願いしたのだった。


 会話を聞き終えた後、水野はそのホワイトボードにまとめた内容を書き出しながら自分なりに整理してみた。

 分かりやすいように人物またはそれに近しいと思われる者は『』で囲っておいた。

 また、Z組については水野が感じた印象や特徴を記しておいた。


・Z組

 『非天レイカ』……大人の雰囲気、リーダー?

 『北守カズミ』……格闘家のような完成された体つき

 『香々美フジコ』……ブレイン?

 『歌寺ミナモ』……アイドルのような見かけ

 『蛇代ヨウコ』……小さい子

 『鳥山イツキ』……超美少女

・『ゲーム』のメインコンピューター『ガイア』

・『ハジュン』の身代わりと『実行犯』がナビを連れ去った

 →ハジュンは地球に入れない(結界、防壁による)

 →実行犯は地球に入れる(仮想世界の中での話? 地球外とはどこを言うのか?)

・この結界もしくは防壁を作り出しているのが『フィナ・エスカ』ではなく『ニーケ』(ファランクス?)である可能性

・『大きな災厄』……ハジュンとは別の何か?

・『ビーマ』……『Z組』の指導者?


 敵と思われる『ゲーム』、『ガイア』、『ハジュン』、『実行犯』、『大きな災厄』には赤いアンダーラインが引かれていた。

 そして、仲間だと思われる『フィナ』、『ニーケ』、『ビーマ』、そしてZ組の六人には青いアンダーラインが引かれていた。


 水野は自分で書いたものを一頻ひとしきり眺めてから皆に尋ねた。

「大体こんなところだと思うんだけど……どうかな。あ、この『ガイア』ってのは勿論うちのガイアのことじゃないからね。」


 日土ミカンは「うーん……」とうなりながら腕を組んだ。

「何か……もう一人いたような気がしたんですが……。気のせいかな?」


 水野はそれを聞いて自分にもその妙な違和感があることに気付いた。

「そう、他にもう一人……。」


 それについて月影が口を開いた。

「ユメタンが言っていた『あの人』かな?」


 水野とミカンはハッとして月影の方を見た。

 そうだ、なぜ今まで思い出せなかったのだろう!?


 水野はこのことについてかなり引っ掛かったが今はそれを考えている余裕はないと判断しホワイトボードに『あの人』を書き足した。

「ユメタン、その……さっき言ってた『あの人』ってのは誰なの?」


 ユメタンは水野たち同様ハッとしたような顔つきでこちらを見た。

「あ……私も今まで忘れてました。ええと、『あの人』というのはですね、ええ……あら? 名まえが出てきません。さっきまで覚えてたのに……。」


 ボカロたるユメタンが思い出せないということは単なる物忘れじゃないことは明確だった。

 つまり、何者かによって記憶を封印、または消去されていたのだ。

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