559 ナビゲーターは大切な仲間
月影はその様子を見てきっぱりと言い放った。
「私もガイアを信じてるよ! 勿論、みんなもね!」
火柱は大きく頷きながら月影の激励に乗った。
「ああ、それにあれは誰かしらに操られていたようにも見えた。ほら、いつもと表情が違ってただろう。ガイアってさ、いつも笑顔が絶えないって言うか。あんな無表情のガイアなんて見たことないし。」
木陰は事実関係からガイアが決して裏切り者などではないことを示した。
「それにね、もしガイアがあっちの手先だったとしたらとうに私たち、身バレしてる筈でしょう? つまり、アメの言う通り。誰かに操られてたのよ。ね、モモ。だから元気出して。今は皆を取り戻すことを考えよう。」
日土モモは皆の激励で元気を取り戻した。
「それもそうですね! 分かりました。ちっきしょー! 誰だ!? ガイアを操った挙句、皆を攫った盗人野郎は!」
金城は『身バレ』という言葉がいきなり出て来たのでびっくりしたが気を取り直して水野に確認した。
「となると、やはりミュラノスでしょうかね。」
水野は情報を整理しながら金城の質問に応じた。
「恐らくは……。ただ、奴らがどうやってここを突き止めたのかってことと……それとセレーネたちを攫うってのは、これはどうゆう意味を持つんだろう。私はセレーネたちがどんな形でここに留まっていたのかってことさえ分っていなかったからね。」
木陰は水野の言った話を簡単にしてみた。
「そうだね。データだけの話であればセレーネたちを構成しているデータ若しくはプログラムを転送し、その後にここのやつを消去するって感じなんだろうけど。またはハッキングされたとか……。」
皆の話が難し過ぎてついていけずモニターをじっと眺めていた月影が突如大きな声を上げた。
「あ! Z組が来たみたい! え……子ども?」
そこに現れたのは十二歳くらいの子どもたち六名だった。
Z組という名称から屈強な男たちでも出て来るのかと思っていた火柱は面食らったような顔でモニターの少女たちを見た。
「あの小さい子は小学生か? 何か大人っぽいのもいるけど……。」
水野は木陰に確かめた。
「さっき一瞬画面の色が滲まなかった? 彼女たちが出て来る直前。」
「ああ、一瞬ね……何だったんだろう。」
そのことについてはユメタンが解説した。
「それは香々美さんのジャミングをあの人がキャンセルしたからです。」
何だか今、人を現す単語が二つほど出て来たが……。
マネージャーたちはその二人について大いに興味を持った。
水野は今ユメタンの口から出て来たその人物について彼女に確認した。
「かがみさん……ていうんだ。それはこの中にいるの?」
ユメタンは「あ、はい」とやや慌てたように返事をした。
「今一番後ろにいるのが香々美さんです。香々美フジコさん。」
日土モモは妹のミカンに尋ねた。
「て、ことはやっぱり人間なのかな。でも何でこんなところに? てか、何処の誰よ!?」
日土ミカンは姉の意見を否定した。
「いや、まだそうと決まったわけじゃない。ここは飽くまで電脳の世界でしょ? 寧ろ人の名まえがついたAIと考えた方が妥当なんじゃないかな。」
木陰はモモの意見について無きにしも非ずと考えた。
「確かに普通で考えたらそうだろうけど、セレーネさんたちの例があるから一概に否定できないわ。」
マネージャーたちは長い間七天子としてセレーネたちと苦楽を共にしてきた。
その中でセレーネたちがAIではなく人間であるに違いないという確信めいた思いが生じてきたのだ。
火柱の頭の中にはヘスティアが笑っている姿が浮かんでいた。
ヘスティアは火柱のボカロであるアメのナビゲーターだ。
火柱とアメ、そしてヘスティアの三人が憑依合体して火天子となり主に破壊やデリートを担当していた。
ある意味はらはらする役回りではあったが楽しくもあった。
火柱はそんな思いを馳せながら木陰の意見に同意した。
「今まで特に言葉にはしなかったけど……ナビゲーターの七人は全員人間なんじゃないかって私は思う。となればここに映っている子どもたちも人間である可能性はあるんじゃないかな。」




