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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
553/625

553 練習の成果

 ヒルデリカもその光景には目を疑った。

「こ、これは……何が……!?」


 ノーグは目を見開き半分パニック状態に陥っていた。

「分からない、分からない、分からない……分からないっっ!」


 頭を抱えながら身体を震わせているノーグを見て流石さすがのヒルデリカも動揺した。

 だが、すぐにも頭を切り替えてミガの元へと向かった。

 本当にあれはミガなのか?


 ヒルデリカは身体を浮遊させてドーヴェの横を通り過ぎズタボロになって倒れているミガに近づくと彼女の上半身を起こした。

「ミガ、ミガ!」


 ヒルデリカの後ろから付いて来たモリンガが様子を尋ねた。

「生きてんのか? それ。」


「ええ、かろうじて……ね。」

 ヒルデリカはそう返事をするとミガを抱き上げ自分たちの出て来た入口方面へと飛行した。

 万が一にもドクターストップなどさせるわけにはいかなかったからだ。


 モリンガはヒルデリカがその場を去ったことを確認するとドーヴェに少し近づき肩をすくめた。

「一体どうやった?」


 香々美はモリンガの方を見ずに答えた。

「どうって私は何もしていない。見てたでしょう? やったのはあいつらよ。」


 それを聞いていた暗殺集団の数人がキッとドーヴェをにらみつけた。

「何だと~!?」


 香々美はまたも台本通りのセリフを言わなければならなかった。

「あーらら、人の所為せいにしちゃってー。やったのはあんたたちでしょう。ご主人様のミガをあんなになるまで……。ふう、雑魚ざこい部下を持つと苦労するわね。お可哀そうに。」


 暗殺集団の棟梁とうりょうらしき男が怒りで肩を震わせながらのっしのっしとドーヴェに近づいた。

「何がお可哀そうに、だーっ! 貴様が何かしらやったんだろうが! 何をした!? 言わないとその小さな身体、ひねり潰すぞ!」


 男は一瞬にしてドーヴェの背後を取るとパワーみなぎる剛拳でドーヴェの頭を吹き飛ばした。

 ドーヴェの首はコロコロと地面を転がり、そして何故か縦になってその男の方を向いた。


 男はドーヴェがあまりにも呆気なく死んでしまったことに内心仰天した。

「あれ、っちまったよ……。」


 今まで動揺しきっていた観客たちもそれを見るなり笑い出した。

「はっはっはっは! いいぞいいぞ!」

「編入生の奴、最後までこっちを見てやがる! はっはっはっは! よっぽど悔しかったんだろうぜ! ざまー見ろ!」


 ヒルデリカもそれを見てふっと鼻で笑った。

 そう、所詮しょせんは子ども。

 彼らにはかなわないってことよね。

 けど、このミガの状態は……。


 観衆たちは一躍いちやく英雄ヒーローとなったその男に心からの喝采かっさいを送った。

 彼らの声援に男は息巻いた。

「がっはっは! 見たことか! どんなトリックを使ったのか知らんがガキの分際で大人を愚弄ぐろうするからこうなるんだ!」


 そう言いながら男は身体から離れたドーヴェの首を改めて確かめた。

「……ん?」


 彼はその瞬間、そこに妙な違和感を覚えた。

 どうにもその顔が笑っているように見えたのだ。


 男は目をこすりながらドーヴェの首に近づき目をらした。

 ドーヴェの顔はやはり死んだそれになっていた。

「ふん、目の錯覚か。舌なんか出しやがって。気持ちの悪い!」


 男はドーヴェの首を思い切り蹴飛ばそうとした。

 しかしその瞬間どこからか声が聞こえて来た。

「お願い、蹴らないで。」


 男の仲間たちも何処どこからともなく聞こえて来たその声の主を探した。

「私よ、わーたーしー。」


 男はまさかと思いながらも再度ドーヴェの首の方を見た。

 すると何ということか!

 首がにっこりと微笑んでこちらを見ているではないか!


 その首は「きゃははははは!」と大声で笑いだした。

 先程香々美が練習していたやつだ。

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