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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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536 魔素なき世界

 やがて、ドーヴェ(香々美)はこの世のことわりを四人に説いて魔王打倒を呼びかけた。

 ドーヴェはまともな精神状態になった元生徒会の四人に子ども向けの人格教育や集団を含めた簡単な心理学(ネットで覚えていた知識参照)、やがては精霊術をも教示した。


 四人は元々優等生であったこともあり、尋常ではない速さでそれらを会得していった。

 ただ、勿論もちろんドーヴェ(香々美)の成長速度は彼らの比ではなかったが。


 さて、この頃になると生徒会の四人はドーヴェを先生と呼ぶようになっていた。

 その呼ばれ方をされるとドーヴェ(香々美)はふくれっ面になったが、四人はそんなこともお構いなしでさも嬉しそうにそう呼ぶのであった。


 元生徒会会長のヒルデリカ・デモニアンは人々を守ることこそ自身の正義と捉え熱血ヒロインと化した。

 例えそれが人非人にんぴにんであろうと身分の垣根かきねなどお構いなしに次々と人々を救っていった。


 元生徒会副会長のミガ・イヴリスは元来寂しがりな性格だった。

 両親は多忙つミガのことなど眼中になく、周囲もれ物にでもれるように彼女を扱い距離を取っていた。


 その孤独感が魔素の影響で憎悪や怒りとなり他者を迫害することで発散するようになっていったのだ。

 魔素はその行動が残虐になる程より多くの快楽を与えた為、ミガはより冷酷な行動に出るようになった。


 だが今では逆に孤独な子どもたちを少しでも減らす為、文武両道のマルチな才能を遺憾いかんなく発揮していた。

 得意の暗殺部隊は諜報部隊と改められ国中のあらゆる情報を収集するべく日夜いそししんでいた。

 勿論もちろん、諜報部隊の彼らも魔術はご法度はっととなったがそもそもこの部隊は精鋭揃いだった為、魔術を使わない方がいろんな意味で調子が良くなっていた。


 元生徒会会計のノーグ・ジンは良き参謀としてその類稀たぐいまれなる才能を認められチームの舵取りを任されていた。

 彼女の家系であるジンは元々王族のトップであり王家とは最も近しい間柄にあった。


 だが、ヒルデリカの先祖の策略によりその地位を追われたのだ。

 彼女は自分こそがヒルデリカの一族、デモニアン失墜しっついさせてジンを復興させようと目論もくろんでいた。


 ところが魔素が抜けてくるとそのようなことはどうでもよくなり、逆にヒルデリカの正義の言動に心を突き動かされるようになった。

 そしてみずからヒルデリカに力を貸そうという気持ちになっていったのだ。


 元生徒会書記のモリンガ・ゼーヴァもまたそんなヒルデリカの思いに感銘を受けた一人だった。

 彼はこのチームの最強のほことして尽力した。


 そんな中で彼自身が気付いたこと。

 己の力を人々の為に振るうことの何という清々(すがすが)しさか!

 それに気付いてからのモリンガはより積極的に精霊術を磨き、遂には王族最強と呼ばれる父親をも軽く凌駕りょうがするほどの力を得たのだった。


 ところでそんな生徒会の面々の得た精霊術はどのような性質を持っていたのか。

 ヒルデリカはウィークボゾン、ミガは光子フォトン、ノーガはグルーオン、そしてモリンガは重力子グラビトンに作用する精霊がそれぞれ彼らに力を貸していた。


 ウィークボゾンは弱い相互作用(弱い力や弱い核力とも呼ばれる)を媒介する素粒子だ。

 弱い相互作用はベータ崩壊に代表され、粒子の種類を変える相互作用である。


 物質の基本的な構成要素であるクォークは、アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、トップ、ボトムの6種ある「フレーバー」のうちひとつを帯びており、クォーク同士は弱い相互作用によって互いのフレーバーを交換する。

 弱い相互作用はこのフレーバーの変化により放出される素粒子のエネルギーをβ崩壊として検出し定義している。

 核分裂においても重要な役割を果たす


 光子フォトンは電磁相互作用(あるいは電磁気力)を媒介する。

 現実世界(マクロな系)では電気力、磁気力として現れる。

 また、光のコントロールもやって退ける。


 グルーオンは強い相互作用(素粒子クオークに作用する力)を媒介する素粒子だ。

 強い相互作用はクオーク同士を結合させて陽子や中性子を構築している。

 残った力は強い核力としてクォークを陽子や中性子などのハドロン粒子に閉じ込めるため、通常の物質のほとんどをまとめている。


 重力子グラビトンは文字通り重力による相互作用だ。

 物質やエネルギーと重力場を相関させる原因とされている。


 つまりこの四人が友とした精霊たちは宇宙を物理的に支配する四つの力を操作するものだった。

 とは言え、この世界で生きて来た生徒会メンバーの科学的知識はとてもとぼしく、精霊の力を理解し応用するまでには至っていなかった。

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