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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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530 【∞】無限は数字ではない【1/0】

 さて、ドーヴェはこの家系の中でも特別な才能を持っていた。

 彼女の精量術は『高次元情報操作』であり、その効力は親族の中でも群を抜いていた。


 かと言って、ドーヴェの成績はこの能力を使ったものではなかった。

 この学校の最高学年の編入試験に合格できる程度の実力は彼女が四歳の頃に既に身についていたのだ。


 いや、それどころかその時点でこの学校のどの教師でもかなわないほどのレベルにも達していた。

 いて言えば専門的な分野で最近発見された、または新しく決められた事項などについてはおくれを取ることはあった。


 だが、それもドーヴェの精量術を使えば造作もないことだ。

 この世界のすべての情報は彼女の手の内にあったのだから。


 彼女の能力スキル『高次元情報操作』はこの世界のありとあらゆる情報を高次元的にとらえ、または自在に操作できた。

 しかもそれらの機能の大半は自動で行われていたのだ。


 ドーヴェに害をなそうとする者たちを操作したり排除したりする仕事は彼女が使役する精量が勝手にやってくれた。

 つまり、ドーヴェの頭脳をってこの能力スキルを行使すればある意味この地球上で最強となり得るのだ。


 さて、そんな彼女にも悩みはあった。

 それはすぐに眠くなってしまうこと、運動が苦手なこと。

 勿論それもある。


 しかし、問題なのはそうゆうところではなかった。

 では、何が問題なのかと言えばドーヴェに香々美が転生してきて以来、魔王を何度討伐しても元に戻されてしまうということだった。


 そう、香々美はこの世界にドーヴェとして転生して来ていたのだ。

 実を言えば彼女は一度目の人生にいて既にこの世界の魔王を討伐していた。


 一度目の人生では転生前のドーヴェが既に『高次元情報操作』を身につけていた。

 ただ、高次元とうたってはいるものの、ドーヴェが高次元生命体であったり非天や歌寺のような疑似ぎじの高次元能力スキルを発動できたというわけではなかった。


 これは精量が人元次元に接触できるという性質を強めたことによる高次元介入だったのだ。

 そこへ香々美が転生して来たわけだが、彼女はその能力スキルを自前の知識をってして更に洗練させて行った。


 香々美とこの『高次元情報操作』という能力スキルはよほど相性が良かったのだろう。

 能力スキルは短期間ですさまじい成長をげ、遂には魔王を滅ぼしてしまったというわけだ。


 さて、魔王を討伐した香々美であったがその瞬間に時間の逆行がごとく彼女は転生してきた時点に戻されてしまった。

 それは一度ならず、何度やっても同様の帰結となったのだ。


 香々美は三度目の人生を送る中、一つの仮定に確信を得ることとなった。

 それはこの魔王が高次元の生命体であり、その在り方がこのような帰結を生んでいるということだった。


 要は自分の倒してきた魔王はハジュンのようなものでありその本体である第六天のような存在があるということだ。

 倒した魔王自体の次元は三次元より少し上を行くものだろう。

 それはハジュン同様この三次元世界に接するためのものだ。


 ただ、ハジュンの場合と違うのはこの魔王が本体の存在を認知していないことだった。

 その代わりといっては何だが魔王はこの世界にける並行世界すべてに存在していた。


 つまり、この魔王退治の終着点は無限に存在する並行世界をすべて訪れ全パターンの魔王を倒し尽くすこと。

 それ以外に終焉しゅうえんへの道はないということだ。


 香々美はこの行きつきたくもなかった事実に行きついてしまい辟易へきえきした。

「やはり簡単にはいかないか。」

 ここは所謂いわゆる閉じた世界の内部であるが、やはり無限は無限なのだ。


 これは、はっきり言って無理ゲーであり、これを打開するには新たな策を練らなければならなかった。

 一つに香々美自身も高次元の能力スキルを扱えるようになること。

 一つに彼女自身が高次元生命体となること。


 初めて魔王を討伐した際も歌寺や非天のような疑似高次元能力スキルを駆使することでそれを可能にした。

 だがそれはくまで疑似であり、ここからは正真正銘の高次元能力スキルを身につけなければならないのだ。


 香々美は四度目の転生で何とか己の能力スキルを四次元と言えるレベルまで押し上げることに成功した。

 ちなみに香々美自身が四次元生命体になったわけではなかった。


 もしそうなってしまえば三次元生命体たるこの心身とおさらばしなければならないからだ。

 まあ、カナタくらいのレベルになればあらゆる次元の自身を顕現できるのだろうが……。

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