529 編入生の家系
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先週はパソコンの不具合により執筆および投稿ができませんでした
何とか復旧いたしましたので、また読んでいただければ幸いです
ヒルデリカはそれを聞いて暫くの間考え込んだ。
確かに魔族の中には自分の魔力やステータス、または存在自体を隠す能力を持つ者もいる。
だが、ノーグの解析能力の前にはそれがどんな能力であろうとその効力を失ってしまう。
彼女の力が及ばないのは魔族の中でもほんの一握りの実力者のみだ。
因みにヒルデリカもその一人ではあったが彼女はまだ若いということもあって油断すると見透かされてしまう可能性もなくはなかった。
勿論、ノーグはやすやすとその能力を使ったりはしない。
特にヒルデリカたちに対しては頼まれでもしない限りこの力は絶対に使用しなかった。
それは一つに生徒会レベルの魔力保持者となれば自分に使用された魔力を感知することができるということ。
つまり、ノーグが内密に能力を使いヒルデリカたちの魔力を分析しようものならそれは即座にバレてしまうということだ。
そうなればノーグの信用問題にもかかわる為、彼女としてもそれは避けたかった。
もう一つはこの解析能力を使い過ぎると自身の心理状態が悪くなったり悪夢にうなされたりすることだ。
このような現象はノーグのみならず強大な魔術を使用する者にはよく見られる症状だった。
過去には周囲の者を見境なく殺害して回ったり、攻撃魔術で町中を破壊しまくる者まで存在した。
しかし、その原因は未だ不明のままだった。
これには実例が少ない上に症状が人によって大きく異なることやこの世界の医療技術が未熟であることなども関係していただろう。
そして何より、この事実が一部の者にしか伝わっていなかったことが最大の原因だった。
王家はこの事実を隠蔽していたのだ。
ヒルデリカもその理由は聞いていなかったが、恐らく大きな魔力を持つ者たち、即ち大きな権力を持つ者たちの弱点を晒すことになり兼ねないからだろうと彼女なりに推測していた。
かく言うヒルデリカも超巨大魔法を連続して行使すれば後に高熱と悪夢に苛まれることとなる。
ミガとモリンガも口には出していないがそのような症状が現れると思われた。
このように、世間一般には知らされていない彼らの症状は生徒会や王家に近しい者たちにとって日常的にある事実なのだ。
また、このことからも生徒会という存在がこの学校、延いてはこの国にとって特別な場所であることが理解できる。
つまり、この四人は王族の中でも将来国の中心を担うであろうエリートであり、それだけ強大な能力と権力を持つ者たちなのだ。
編入生であるドーヴェ・アナンタはそのような者たちに注目されているのであった。
さて、そのドーヴェだが彼女は何故無事にここでこうしていられるのか。
王家直属の暗殺集団やミガの放った暗殺部隊は何故彼女を襲わなかったのか。
特に今回ミガの放った軍隊並みの力を持つと称される暗殺部隊は彼女の命により確実にドーヴェを襲ったはずなのだ。
結論から言えば、それは簡単な話、暗殺者たちは誰一人としてこの少女、ドーヴェのことを襲わなかったからである。
では一体何故そうゆうことになったのか。
その秘密はドーヴェの持つ特殊な能力によるものであった。
ドーヴェは生徒会のノーグが見立てた通り魔力を一切持たなかった。
実は彼女の家系は皆、一人として魔力を持たなかったのである。
では何故そのような者たちが王族としてこの領域にいられるのか。
ドーヴェの家系は何時の頃からか魔術ではなく精量術を扱うようになっており、その力はそんじょ其処らの魔術より効果が高かった。
彼らはその精量術を魔術と偽って使用していたのだ。
そして彼らの魔術量が測定できない理由をこの家系の特殊能力、『魔力集中』によるものだとしていた。
彼らの説明によるとその『魔力集中』とは魔術を使いたい時だけ魔力を放出できるというものだ。
普段は魔力を封印し蓄積しておき使いたい時に一気に放出できるというものだ。
勿論これも嘘八百で、極偶に魔力量がないことに気付いてしまった者たちへの言い訳として話す程度だった。
そもそも魔術量を見抜く能力を持つ者自体少なかったし、わざわざ確かめる者も少なかったのだ。
ノーグがドーヴェの家系について調べた時、魔力についての情報を得られなかったのはその所為だった。
更に、この一族は王族の中でも辺境の地にて細々と暮らしていた為、情報が漏れることも殆どなかったというわけだ。




