表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
528/625

528 謎の編入生

 午後になるとその編入生の乗った馬車が校門を抜け学園の敷地内へと入って来た。

 数世代前のいかにも乗り心地が悪そうなその馬車は教職員棟の前で停止した。


 ただ、馬車を操作する御者ぎょしゃだけは木偶でくと呼ばれる魔力で操作されたロボットが私用されていた。

 ヒルデリカたちは教職員棟の向かいにある生徒会棟の四階からその様子を見下ろしていた。


 編入生の到着をいち早く伝えたのはノーグであった。

「どうやら編入生の馬車が到着したようです。」


 彼女は学校中に張り巡らされた監視カメラで編入生が来るのを監視していたのだ。

 勿論、彼女自身がカメラの映像を眺め続けていたわけではなく木偶にやらせていた。


 とは言え、その木偶は人間の形をとっておらず、魔力とそれを蓄積する基盤から構成された中央処理装置(CPU)によって織りなされた思考プログラムのみであった。

 つまり、この魔族世界にけるコンピューターのようなものだ。


 ミガはノーグのその言葉を聞くと怪訝けげんな表情で彼女の方を見た。

「え……本当に?」


 ノーグは監視カメラの映像を壁に映し出して皆にも見えるようにした。

「これよ。この中に編入生が乗っているはず。」


 モリンガはえて驚いたふりをしながらミガに確かめた。。

「え、まさかお前本当にあの軍隊を送ったとかか? おいおい、冗談だろう……?」


 ミガはモリンガの顔を一瞥いちべつした。

「あなた、どっちの味方なの? ああ、同じ魔力が使えない者同士同情しちゃってるんだ。」


 モリンガはその言い方に思わず苦笑いした。

「いやいやいや、関係ねーし。それに俺は使えないんじゃなくて使わないの!」


 ミガは眉間みけんしわを寄せながらあごまみ、小声でつぶやいた。

「それにしても……何か手違いでもあったのかしら……。」


 ヒルデリカにとってミガのこの行為は想定内のものであり、十中八九やるだろうなとは思っていたこともあって特に彼女をとがめるようなこともしなかった。

 むしろ、気になるのは編入生の方だ。


 もしミガがあの精鋭部隊を仕向けたのだとしたら彼女は何故ここにいる?

 ヒルデリカは窓へと近づき向かい側の教職員棟を見下ろした。


 他の三人もそれにならうように窓からこちらに向かって来る馬車を観察した。

 モリンガは普段滅多に机から離れることのないノーグが席を立ったことに驚いた。

「おやおや、いつもはモニターごしに見てるってのに今日は直接見るってか?」

「モニターでは相手の魔力を感知しにくいので。」

「ほう、成程。さようでございますか。」


 馬車からは小さな少女がゆっくりと降りて来た。

 どこからどう見てもそこらにいる十一歳の少女だ。


 少女は彼女を出迎えた教師と共に教職員棟に入っていった。

 ミガはそれを見届けると「失礼します」と一言だけ挨拶あいさつしてから足早に生徒会室から出て行った。


 モリンガは両手のひらを上に向け肩をすくめた。

「あーあ、ありゃマジだ。」


 ノーグはミガの暗殺部隊は本当にこの馬車を襲撃したのだろうかと疑った。

「けど、彼女だけではなく馬車にさえ傷一つ見当たらない……。どうゆうことかしら。」


 モリンガも同感だった。

「襲われてはいないな、あれは。もし、襲われてたらあの精鋭だろう? 俺だって無傷じゃ済まない。」


 ノーグは無表情で馬車の方を見つめながらそれを否定した。

「けど、あの様子からすると暗殺部隊を仕向けたのは確かでしょう。」


 モリンガは自分の頭をガリガリっといた。

「そうだな、そこなんだよ。となると、あいつは一体どうやって無事ここまでやって来れたのか。一体何があったんだ? いや、なかったのか……うーむ。」


 二人のやり取りを黙って聞いていたヒルデリカがここでノーグに質問した。

「それでノーグ、彼女の魔力はどうでしたの?」


 ノーグは少しまゆひそめた。

微塵みじんも感じられませんでした。あれではまるで人非人にんぴにんです。下級市民の方がよっぽどギラついた魔力を放出しています。」


 モリンガは口をとがらせ目をぱちぱちさせながらノーグをいじった。

「ギラついたなんて……ノーグさんはしたなーい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ