520 探検に行こう
非天は次に長老ガランの家を映し出してみた。
そこではヒナミが両親と共に長老と何やら熱心に話をしていた。
長老は以前ヒナミに命を救われたこともあり、彼女の言うことをすべて受け入れていた。
「おお、遂に精霊様の声が聞こえるまでになったか!」
ヒナミは神妙な面持ちでそれにゆっくりと肯いた。
「はい、その通りです。ですから今すぐ、このことを皆に報せて欲しいんです。」
長老はヒナミの真剣な表情を見てそこに偽りがないことを確信した。
「うむ、分かった。」
長老はそう言うと近くに待機していた者たちにこれらの内容を村人たち全員に伝えるよう命じた。
非天はそれを見て大きく頷いた。
「よし、ヒナミは上手くやってくれているようだな。リベ・ルナ、ここから彼女に話し掛けられるかな。」
「うむ、やってみて進ぜよう。ヒナミ、ヒナミ、聞こえるかい?」
するとヒナミが上方を向きながら声を出した。
「あ、今また精霊様からのお声をいただきました。」
長老と両親は大きく後退った。
「何と! では今ここに精霊様がご降臨されたと申すのか!?」
「はい、今正に精霊様と交信しております。」
ヒナミは暫く瞳を閉じながらリベ・ルナの話に耳を傾けていた。
そして最後に「はい、精霊様の仰る通りに」と返事をすると目を開き皆を見た。
長老は交信を終えたヒナミに尋ねた。
「精霊様は何と?」
「はい、先程お話しした板なるものの在処をご教示くださいました。私は子どもたち幾人かを連れてそれを取りに行ってまいります。長老は例の空き家にゴミ箱を設置しておいてください。」
「うむ、分かった。石を積んでそれを樹液や粘土で塗り固めればよいのだな。そちらの方は任せておくがよい。」
ヒナミは友人の子どもたち十数名と連れ立って例の建屋へと移動した。
リベ・ルナの指示通り進んだ為、道に迷うことはなかった。
四階建てのビルが近付いて来ると子どもたちは足を止めた。
ある子どもはその荘厳さに見惚れ、ある子どもは恐怖を感じた。
だが、ヒナミが一声賭けると皆再び前進し始めた。
四階建てのビルの横を素通りすると例の埋もれた建屋が見えて来た。
ヒナミはリベ・ルナが指示した場所に移動した。
「さあみんな、この辺りを掘り返すのよ。」
先頭にいた少年がそこを見渡しながらヒナミに尋ねた。
「へえ、こんなところにその板ってやつが埋まってるのか?」
すると少し大柄な少女が低めの声で呟いた。
「つべこべ言ってないでさっさとやる。」
この少年の名はショウで少女の名はズーミといった。
二人はヒナミの幼馴染で同じ九歳の年長さんだ。
他の子どもたちは七、八歳で彼らに従って付いて来ていた。
皆、黙々と作業をし出した。
先ずは下に積もった枝や木の葉を除けた。
そして、ある者は指で、ある者は枝や石を使って地面を掘り出した。
大きめの石はヒナミとショウ、ズーミの三人で退かした。
作業を続けているとものの十分ほどで建物の一部が顔を出して来た。
リベ・ルナは良いところでヒナミに指示を与えた。
「その辺りを踏みつけると土が下に沈むと思うから。ちょっとやってみてくれる? あ、怪我しないように注意して!」
ヒナミは言う通りにその場所に足を当てるとグッと体重を掛けてみた。
すると、底が抜けたように土が中に沈み込み、そこに穴が開いた。
それを何度か繰り返すうちにその穴は子ども一人が入れるまでの大きさになった。
ここでまたリベ・ルナの指示が入った。
「そこから中に入って。そうね、取り敢えず年長の三人で行ってもらいましょうか。」
ヒナミはリベ・ルナの言う通りショウとズーミを率いてその穴に入り込んだ。
三人は中に入るなり光を放つ天井に驚愕した。
ショウは物珍しそうに部屋内をきょろきょろと見回した。
「ここは一体何だ。全部が真っすぐしてやがる!」
ズーミはコンクリートの壁を軽く叩いた。
「硬い石だね……。こんなの一体誰が作ったんだ?」
三人はちょっとした冒険者気分でリベ・ルナの言う奥の部屋へと歩みを進めた。
ヒナミはショウとズーミにリベ・ルナの伝令を伝えた。
「中には身体によくない毒なんかもあるから下手に触らないようにね。」




