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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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519 なんとかに刃物

 リベ・ルナの映像に慣れて来たところで非天はふと考えた。

 一度に二つの映像を見ることはできないものかと。


 すると、それをイメージした瞬間にもう一つの映像が現れた。

 それはまるでモニターが左右に横並びしているような状態だった。


 その直後、リベ・ルナは非天が思いも掛けなかったことを口にした。

「あ、何か見えた。レベル3……だって。何だろう、これ。」


 それと同時に非天も何かを感じ取った。

「それは恐らく能力スキルのレベルのことだろう。レベル2になったのは大方おおかた村の外を探索できるようになった辺りかもね。」


 リベ・ルナは納得したような口調でそれにこたえた。

「成程ね、レベルが上がるとできることが増えるわけか。」

「ああ。ところでリベ・ルナ。ここに来て何か自分のことを思い出したりはしてないかい?」

「いんや、さっぱり。もしかしたら関係ないのかなぁ。」


 非天は二つのモニターを見ながらあることを思いついた。

「リベ・ルナ、ちょっと試してみたいことがあるんだけど。」

「何を? まあ、別にいいけどさ。」


 モニターが二つ現れたとすればこれはリベ・ルナの意思を介入せずとも自分が見たいと思う映像を見ることができるのではないか。

 そのような考えのもと、非天は左のモニターに集中した。

「前の部屋が見たい!」


 すると先程アルミ複合板を見つけた部屋が映像となって現れた。

「凄い! 非天、凄いじゃん! これなら私、楽できるわ!」

「うん、上手く行ってよかった。勝手に使わせてもらってもいいかい? リベ・ルナの力を。」

勿論もちろんよ。その方が私も楽だし!」


 非天はリベ・ルナの及ぶ範囲であれば自在に視覚情報を得られるようになった。

 非天は早速その新しい能力スキルを使って建屋内をざっと見て回った。


 この建屋は平屋であり、入り口は土の中に埋もれていた。

 その入り口から中に入ると少し広めの玄関から中央に廊下が真っすぐ奥へと伸びていた。


 その廊下を見渡すとドア用の入り口が左右に二つずつ口を広げているのが見えた。

 先程同様、ドアはまだ設置されていなかった。


 左右二つずつ、計四つの部屋は始めに入った部屋と同じくらいの広さで、中は同じような状態になっていた。

 ちなみに左手前が最初に入った部屋だ。

 そして、左右さゆう奥側の部屋にはそれぞれ二つずつ小部屋が隣接していた。


 廊下の更に奥にはトイレや更衣室、給湯室のような空間があり、一番奥の突き当りには更に大きな部屋が広がっていた。

「どうやらこの部屋がメインの研究室らしいな。」


 非天は取りえず手前の部屋から調べてみた。

 薬品類は既に使用できそうもなかったが、耐食性の優れた金属類や薬品のびん、強化プラスティックなどは何とか使えそうだった。


 非天はステンレスのアングルの組織構造からこのビルがどれくらい前のものか算出してみた。

 ステンレス銅(SUS)とは言ってもクロムの含有量や不純物の量によってその寿命はまちまちだ。


 見たところ、ここにあるステンレスはかなりの優れモノで腐食もほとんど見られなかった。

「恐らくこいつも特注品だな。こんなの普通使わない。」


 非天の概算からすればこの建屋は少なくとも三百年以上は放置されているものと見られた。

 これらステンレスの他にもチタン合金やレアメタルなども探し当てることができた。


 これらの素材を使えば村の科学レベルを引き上げることは可能だろう。

 だが、非天は今すぐそれをしようとは思わなかった。


 それらの知識は使い方によっては彼等を滅ぼしかねなかったからだ。

 例えば優れた道具は同時に優れた武器になり得てしまう。


 今この村にそんなものを与えてしまえば何が起こるか分かったものではないのだ。

 そういった意味ではこのアルミ板を渡すことさえ気が引けるのだが……。


 さて、ネズミ収集用のゴミ箱を密閉するにはやはりこのアルミ複合板を使うしかないようだ。

 内側は大きめの石を積み上げて隙間を粘土などで固めるとして、その外側をこの複合板で囲うのだ。

 多少の手間は掛かるがやむを得まい。


 非天はモニターの一方をその建屋内部から村の方へと移してみた。

「家の中には誰もいないようだな。」


 非天は初めて見た自分の家をながめてある意味感心した。

「しかし、よくもまあこんなところで生活できるものだな……。」


 そこはもう原始時代を彷彿ほうふつとさせる住居であった。

 床はここと同様、土の上に直接茣蓙ござが敷いてあるだけ。

 屋内にはトイレどころか水を入れるかめさえ見当たらないのだ。

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