515 白い遺跡の探索
そして、もう一つの理由は非天との出会いであった。
彼女と出会ったことで、リベ・ルナは今までに感じたことのないような強烈なエナジーが内部から溢れ出して来るような気がしていたのだ。
「今ならできるような気がする!」
一方、非天はヒナミとコンタクトをとる前に今でき得る対策を考えた。
感染源は主に対人と対ネズミだ。
対人は何とかなるとして、問題はネズミの方……。
「のこぎりやカッター、鉄製の道具が欲しいところだが……。」
ネズミ返しや仕切り板、ネズミを大量に捕獲する為の罠等、作成したいものは山ほどあるが工具なしでは何も始まらない。
しかし、非天が先程見た村の様子からここには金属というものがほとんど見当たらなかった。
そこまで文明が進んでいないのだろう。
ただ、何処からか流れ着いて来た鉄の破片などは村の各所に存在していた。
ある者は飾り物として、ある者はお守りとして身に着けているようだった。
恐らくこの世界の何処かには製鉄できるくらいの技術はあるのかもしれない。
または、森の中にあるビルのような遺跡辺りから出土したのかもしれないが。
いずれにせよ、鉄がないことには木工すらままならない。
非天はそれらの金属が何処かに山積していないかと考えた。
「リベ・ルナ、この辺に金属が集まっているような場所はないかな。」
「金属? ああ、長老の家に飾ってあるぴかぴか光ってるやつね。うーん、偶に小さいのは見かけるけどたくさんではないわね。」
非天は森の遺跡について聞いてみた。
「森の遺跡はどうだろう。あそこの中はどうなってるのかな。」
「ああ、あの辺りは無理。何度かやってみたんだけど私じゃ届かないみたい。」
恐らくリベ・ルナの見える範囲は限定されているのだろう。
「リベ・ルナ、もしかしたら今ならできるかもしれないよ。」
リベ・ルナは非天の言葉を聞いて先程同様、何だかできるような気がして来た。
「そうね、じゃあやってみるか。」
リベ・ルナは遺跡の方を向き念を込めた。
「うーん……あれ、見えた!」
その映像は非天にも伝わった。
「やるじゃない!」
「えへへ、それほどでも……あるよ。」
その白い建造物は四階建てで全体的に見るとどこかの大学病院の様だ。
そしてそれは、見れば見るほど覚えのある構造をしていた。
「鉄筋コンクリート……何かの研究室のようだが。」
非天はリベ・ルナに頼んでその周囲を見せてもらったが入り口らしきものは何処にも見当たらなかった。
「入り口がないようだね。中は見えるかな?」
リベ・ルナは中を見ようと頑張ってみたがどうやらそこまで見ることはできないらしかった。
「うーん、中は……ちょっと無理みたい。私が中まで届いてないのかも。」
非天はもしこの建物がリベ・ルナと関係してるなら精量が入り込めないよう細工されていてもおかしくはないと考えた。
「リベ・ルナ、この辺りに他の建物はないかな。小さなものでもいいんだけど。」
リベ・ルナは周辺の映像を非天に送った。
うっそうと茂る木々の中、小さな建物らしきものが土に埋まりながらも少しだけ顔を出していた。
「これは建物か? リベ・ルナ、この中は見られるかな。」
「うん、ここなら大丈夫そう。」
この建屋にも入り口は見当たらなかったがそれは単に埋もれているだけの様であった。 リベ・ルナの映像はその壁を通り抜けて内部を映し出した。
何故か天井が薄っすらと発光しており、薄暗くはあったが中の様子を見ることができた。
「太陽光を利用した光る壁みたいなものか?」
運のよいことに部屋内までは土に埋もれていなかった。
中は広々としていて一見すると床には何も置かれていなかった。
だが、壁際には錆びた鉄製の部品が散乱しており、板や角材のようなものも僅かに転がっていた。
「この板は……うーん、かなりの年月が経っているようだな。」
更にその奥には非天が探していたコンパネらしきベニヤ合板も見かけられたが既に腐っており、とても使えそうになかった。
他には電動工具の残骸やドアに取り付けられる前の、恐らく当時は新品だったであろう金属製のドアとドア枠が横たわっていた。
「この建屋は新築中だったのかもしれないな。」




