513 可能性の模索
非天はリベ・ルナが一体どのような存在なのか気になった。
「リベ・ルナは一体どこからやって来たの?」
「う~ん、多分……森の中にある四角い塔だと思う。」
「四角い塔……そんなものがあるの?」
「うん、結構大きいよ。山くらい大きい。」
非天はそれを聞いて考えた。
そんな建造物があるってことはもしやこの世界は結構進んでいるのか?
実際、身体一つ動かせない自分が生きてられるってのも科学が進んでいるから……。
しかしそれは先程の話を鑑みると大きなギャップを感じざるを得なかった。
そんな進んだ世界で我が子を幾度も殺そうとする人間がいるだろうか……しかも、あからさまに。
周囲の人間すらそれを促していたようだし。
勿論、非天がいた世界でも子育ての重圧や生活苦から思わず子どもが死ねば……などと考えてしまう場合もあるだろう。
だが、これはそれとは明らかに違い積極的殺意から来るものだった。
リベ・ルナは一通り現状を話し終えると欠伸をしながら非天に伝えた。
「私、ちょっと疲れちゃったから少し休むわ。じゃあね~。」
「ああ、また来てくれるのかな?」
「うん、いいよ。暇だしね。」
さてと、これからどうしたものか。
何れにしてもこれでは何時命を落とすことになるか分からない。
非天はいつか読んだ小説の内容を思い出していた。
それによれば昔あった所謂貧しい地域では口減らしなど茶飯事だったと。
そのような情報からすると、よくここまで生き延びて来られたなと逆に感心してしまうくらいだった。
「折角スーニャとヒナミが繋いでくれた命、むざむざ死にはしない! 少なくともZ組の皆に会うまでは!」
非天はZ組の皆もこの世界に来ていることを確信していた。
「カナタさんが最後に言った言葉はきっと現実のものになっているに違いない。だとすれば、先ずは死なないことだ。その為には……。」
その為には周囲の人間と何らかの形で意思疎通ができなければならない。
それと、もしこの世界がヴァルティンの作り出した訓練の場と何らかの関係があるのなら例の高次元能力とやらも自身に内在している可能性がある。
これは非天が直感的に感じたことではあったが、それは先程の精量リベ・ルナとの遭遇から確信へと変わっていた。
そう、リベ・ルナこそがこの窮地を打開し新たな力を得るための鍵なのだと。
非天はこの精量の持ち得る能力について考えてみた。
先ず彼女は自分に音を運んできてくれた。
恐らくスーニャの時は音という概念ではなく先程話に出ていた原始的な情報群の交換という形だったのかもしれない。
だが、自分にははっきりと言葉、音声として伝わって来たのだ。
リベ・ルナの話からするとそれは彼女が発した原始的情報群をこちらが音声として認識しているだけなのだろう。
だが、これは一つの光明であった。
もし、リベ・ルナに音声だけではなく視覚的情報を運ぶ力が備わっているなら……。
また、今回のような言葉だけによる小規模の情報ではなく、もっとビッグデータのような大規模な情報を一括して入力し得たのなら、これは大きな一歩となるに違いなかったのだ。
その後、非天は先程と同様の急激な眠気に襲われた。
「早く……早急に手を打たねば……。」
「おーい、非天! 起きろ! おーい!」
「ん……リベ・ルナ……おはよう。」
「ちょっと、寝ぼけてる場合じゃないよ! 大変だ!」
「一体、どうしたの?」
「何かね、人がバタバタ倒れ出してる!」
非天にとっては寝耳に水、彼女は先ず事態の状況を把握しようとした。
「私はどれくらい眠っていたんだ?」
「丸一日よ。ご飯も受け付けなかったからヒナミも心配してた。」
「丸一日……!?」
非天はリベ・ルナに尋ねた。
「その状況、映像として見ることはできるかな。」
「どうだろう……うーん、こんな感じかな?」
すると、非天の視覚に真っ白な光が飛び込んで来た。
やがて目の感覚が慣れて来るとこの村の風景らしきものが見え出した。
「これがこの村か……。お、どうやらその場の音声も聞こえるようだ。」
私用の為、来週はお休みします。
次の掲載は2月8日(土)を予定しています。




