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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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508 白鳥さんの注文

 これらの問題については卯月うづきカナメが主任を務める第2研が中心となって処理することとなった。

 「うまいことできるかしら……。」


 第8研主任の龍崎アヤネは隣にいる第7研主任の未木みきタツヤをチラ見した。

「卯月さんとこは全部で五人しかいないんでしょう? 未木君、あんたんとこの人員回してやったら?」


 未木は困ったような顔をしながらそれにこたえた。

「いやあ、こっちも今手一杯でして。それに何と言いますか、畑が違うと言うか……。あ、勿論もちろん先程も言ったようにマネージャーたちへの対応はこちらでやらせてもらいますが。」


 卯月は困惑顔の未木を見て龍崎のいつものやつだなと思いながらクスリと笑った。

「龍崎さん、ありがとうございます。けど、今第8研も忙しいことは分かっていますので。こっちは大丈夫だと思います。蟹江さんと蛯名さんもフォローしてくるって言うし。こちらで何とかしますから。」


 龍崎は気さくな感じで卯月を激励した。

「ごめんね。うちもプログラムオタばかりだから力になれそうもない。まあ、何かあったら相談して。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


 未木はうらめしそうな目で龍崎を見た。

「はあ、僕以外には優しいんだから……。」

 龍崎はそれを聞いて一瞬にやけた。


 蛯名はモニターの時刻を気にしていた。

 時間は十三時四十分を回っていた。

 早見との約束の時間まで残り二十分弱しかない。


 早見には十四時ごろ連絡できると伝えていた。

 遅れる可能性もあるとは言っておいたがあちらも多忙な身。

 できることならあまり待たせたくはなかった。


 だが、ここからは例の予算についての話し合いが残っていた。

 こいつは長引くぞ……。

 蛯名はそう思いながらもその議題を口にした。

「それでは次の議題、予算の活用についてです。」

 蟹江も時間を気にしていたらしく困惑したような顔つきで蛯名を見た。


 先程会議が始まる前、蟹江と蛯名は早めに席についていた主任たちにこの予算の使い道について軽く聞いてみた。

 だが、その時は誰からもこれといった案は出なかった。


 そもそも当初から予算が余り気味だった為、皆既に欲しいものは購入してしまっていたのだ。

 出て来たものと言えば第4研主任の熊谷くまがいコウジが思いついたように口にした小型ロッカーくらいのものだった。


 だがそれも卯月の「あ! そこにお酒でも隠す積もりでしょう!」というまとを得た一言で却下されてしまった。

 そもそも大抵の備品はコスパルエイドの子会社からの支給品で間に合っていたのだ。


 蛯名は皆の顔を不安気に見回した。

「予算の詳細はここにあります通り……です。」

 そこには487,078,600円という金額が記されていた。


 龍崎は苦笑いしながら小声でつぶやいた。

「四億八千万……どうすんのよ、こんな金額。」


 蛯名も思わず苦笑いしてしまった。

「ええと、そこにも書いてありますがこの内の二億三千万は年内に何とかして使い切らなければならないということでして……。で、使い道についてですがこの際研究に必要なものであれば何でもいいということを社長の方からうかがっております。」


 しかし案の定、誰一人としてこれといった良案を出す者はいなかった。

 皆腕を組みながら何かないかと考えあぐねていた。

 ただ一人を除いては……。


 皆がお手上げといった雰囲気をかもし出していたその時、第3研の白鳥マイが挙手をしながら蛯名に質問した。

「その研究というのはボカロに関するものだけに留まるんでしょうか。」


 白鳥さん……まさか!? と蛯名は心の中で叫びながら彼女に尋ねた。

「例えばどんなことですか?」


 全員が見守る中、白鳥は一つのアイデアを打診した。

「うちが手掛けているサイバーポリスのプロファイリングシステムについてはどうでしょうか。」


 すると蟹江がすんなりとそれを承諾した。

「ああ、いいんじゃないかしら。あれもボカロ研究の一環だし。ねえ、蛯名さん。」


 蛯名は「はあ……」と少し困惑したように返事をした。

 そして内心、あれではありませんように! と願いながら恐る恐る白鳥にその内容について尋ねた。

「白鳥さん、あの、具体的にはどんなものを購入するんでしょうか?」


 白鳥は少し微笑みながらそれに答えた。

「大学などで『観察問題』の課題に使用されている実験装置とその周辺機器、及びそれを改造するための機材などです。」

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