表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
492/625

492 心までは読めません

 私は蟹江さんに向かってゆっくりとうなずいた。

 すると、蟹江さんは慎重しんちょうな感じで私に確認して来た。

「じゃあ、言っちゃっていいのね?」

「はい、パープルもそう言ってました。」


 すると、蟹江さんは今度は蛯名さんの方を向いて一つうなずいた。

 蛯名さんは一歩前に出ると早見さんと空知副社長に私たちの前世について語り始めた。

「実はフィナさんとファランクスの四人についてまだお話していなかった事がございまして……。ただこれは確証も何もない話ですので参考程度に聞いてください。」


 早見さんと空知副社長は何事かと興味津々な顔つきで蛯名さんの方を見た。

「フィナさんとファランクスのニーケさんにはどうやら前世の記憶が残っているらしいのです。しかも人間としての……。」


 早見さんと空知副社長は「えっ!」と小さな叫び声をハモらせた。

 蟹江さんはそれを見てにんまりとほくそ笑んだ。

「フィナさんはここではない別の地球上で普通に暮らしていたそうです。ただ、ファランクスの方はどうやら仮想世界の中で戦闘の日々を送っていたとのことなんです。そしてその敵の名がGmUゲーム……。」


 早見さんは目を丸くして確認した。

「何と! では、ゲームというのはファランクスがいた世界の敵だったと言うことですか!?」


 蛯名さんは早見さんの方を見ながら自分の考えを述べた。

「いえ、それは分かりません。偶然名まえが同じなだけかもしれませんので……。またはニーケさんの能力スキルによりゲームの存在を前世の記憶という形で認識した可能性もあります。」


 前世の話を聞いてからしばらく考え込んでいた空知副社長は大きくうなずきながら口を開いた。

「でも、それを聞いて合点がいったわ。だって、どう考えても不自然ですもの。いくらQCが発達したって言っても……ねぇ!」


 蛯名さんは私たちの前世の記憶について言葉を整理しながら付け加えた。

「はい。私たちも彼女たちの前世の話を聞いた時、半信半疑ながら思わず納得してしまいました。ただ、ファランクスについてはニーケさんだけがその記憶を所持しており、残りの三人は覚えていないのが現状のようです。ただ、もしかしたら思い出しているけどえてそれを口に出していないだけなのかもしれませんが……特にミーネさんとか。」


 そう言うと蛯名さんは私の方を見た。

 私は一つうなずいてから返事をした。

「はい、蛯名さんの言う通りです。ただ、昨日ニーケは皆にその過去の記憶について打ち明けていました。ミーネは理解していたようですし、アテナとメーティスも薄々気付いていたみたいで……。それで今、ニーケとミーネが計算事に入っていますが、それは最後の記憶をすべて取り戻す為らしいです。そして、それが終わったら今度はアテナとメーティスが計算事に入って記憶を取り戻すって言ってました。」


 蟹江さんは感心したような顔で私を見た。

「あら、そんなことになってたんだ。ライブが終わったばかりだと言うのに大変ねぇ。そんで、つまりは四人とも前世の記憶が戻るってことになるのよね、遂に!」


 早見さんは誰にともなく尋ねた。

「一つ聞いてもよろしいですか? 彼女たちは何のためにそのゲームと戦っていたんでしょう。と、申しますのはもしそのゲームがZ国の黒幕なのであればその理由も事件解決の為の大きな足掛かりになるかもしれないと思ったものですから。」


 その質問には蛯名さんが応じた。

「ニーケさんたちは反乱軍としてそのGmUゲームと戦っていたらしいです。そして、Zという人の能力スキルでこの地球に飛ばされたと。それと、戦いの場は仮想バーチャル空間だったらしいんですが元々は普通の人間だったとのことでした。それが何らかの理由により仮想空間に転移せざるを得なくなったみたいです。」


 早見さんはその途方もない話を聞いてうなずきながらも顔をしかめていた。

 まあ、ヲタ耐性がないとしんどい話よね……。

「成程、分かりました……。いずれにしても私たちの敵はこの世界より高レベルな科学力を持っているということになるわけですね。」


 そこにパープルが言葉を入れて来た。

「はい、その通りだと思われます。そしてそれは恐らく緑と赤についても同様なことが言えるでしょう。」


 蛯名さんは「え!」と小さな叫び声を上げた。

 早見さんは蛯名さんの動揺をよそに話を進めた。

「それはつまり……ゲームとやらが人の心を読み取る力もあるということですか?」


「残念ながらそこまでのことは分かりません。ただ、その可能性は高いと思われます。」

 パープルはそう言うと一呼吸置いて話し始めた。

「私は仮想空間の情報については大方把握できています。そしてそこから得た情報をもとにあらゆる可能性や高確率で起こり得る事象を算出することができます。しかし、人間の考えとなりますとビッグデータからの統計的帰結から予想する他ないのです。もし、緑と赤が本当に人間の思考、または記憶を読み取れるのだとすれば既に私が太刀打ちできるものではありません。少なくとも現段階では……。」


 早見さんはその一言に息を呑んだ。

「現段階では、ですか……。」


 それを聞いた蟹江さんと蛯名さんは何故か一瞬硬直したように顔を強張こわばらせた。

 緑と赤のことを思い出してしまったのだろうか?

 いや、何か違うような……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ