489 億劫だけど一つ一つ対策してく
早見さんは一通り聴取し終えると自分の意向を皆に伝えた。
「わかりました。では目下のところサナさんとご友人、それとそのご家族に気を配ることとしましょう。しかし、大人は兎も角子どもさんとなると正直対応が難しいですね……。」
サユリはそのことについて早見さんに提案した。
「今日の午後みんなでユキナちゃん家に集まるって言ってたから、私ちょっと行って来ようかと思います。そこでサナ友たちにフィナたちが会話できることは他の人には言わないようにって頼んでみます。ついでにユキナちゃんのお母さんにも口外しないようお願いしておきます、今更ですが……。あ、それと柿月君たちにも伝えておかなくちゃ、一応。」
早見さんはそれを聞いて大きく頷いた。
「それは本当に助かります。それと、もし皆さんに何かあればすぐ私たちにご一報くださるようお伝えください。」
サユリはその伝達方法について早見さんに尋ねた。
「はい。えっと、蟹江さんを通じてお伝えした方がよろしいですかね。」
蟹江さんはいきなり自分に振られて戸惑ったのか目をぱちくりさせながら早見さんを見た。
早見さんは蟹江さんをちらりと見てからそれに答えた。
「そうですね……一応こちらの連絡先もお伝えしておきます。緊急の場合などは直接ご連絡いただけるように。」
蟹江さんも「うんうん」とその回答に頷いた。
「そうね、その方がいいわ。フィナの防御も効いてることだしその方がいい。私もすぐに出られるとは限らないもの。」
うむむ! 私の防御が命綱ってわけか……さりげなくプレッシャーを感じる!
私は自分の防御システムについて今一度パープルに確認した。
「それじゃあユキナちゃん家やファランクスのマネージャーさんたちの連絡網についてもセキュリティ強化しとかないといけませんね。パープル、大丈夫?」
「はい、問題ありません。今から監視を強化いたします。」
うひょっ! 頼もしい!
私はここでふと気になったことをサユリに尋ねた。
「そう言えば、ミーネのご家族って何処まで分かってんのかな?」
サユリは「あぁ! それだ……」と言いながら膝を打った。
「そうよね、一応確認しとかなくちゃ。」
私はそれについてサユリに協力しようと考えた。
「じゃあ、私もミーネが起きたら一応聞いてみるわ。」
サユリは苦笑いしながらそれに応えた。
「オッケー。正直、大地君とはあんまり話したことないし、いきなり不躾な質問も何だからね。ミーネに聞いてくれるんならそれが一番かも。フィナ、よろしく頼むわ。」
空知副社長は私とサユリに改めて丁寧に依頼なさった。
「サユリさん、フィナさん、ご迷惑おかけしますが何卒よろしくお願いいたします。」
サユリは慌てた様子で両掌を前に開き首を振った。
「いえいえ、こちらこそ!」
ここで先程から何かメモを取っていた蛯名さんがパっと顔を上げ、午後の会議について皆に提案した。
「すみません、今日のスケジュールのことで。十三時から主任会議があるんですがその後半、恐らく十四時頃からこの件について話すことになると思うんです。そこで、ここにいる皆さんにも会議に参加していただきたいんですが、いかがでしょうか。」
蟹江さんもその提案には賛成したが、本来部外者である筈のサユリを巻き込むことに躊躇している様子だった。
「そうね、それはその方がいいけど……サユリさんは大丈夫なの?」
サユリは蟹江さんの憂慮を払拭すべく、それにきっぱりと答えた。
「はい、私は大丈夫です。それと、できれば柿月君たちも参加しといた方がいいんじゃないでしょうか。今後のこともありますし……色々と情報を共有しといた方がいざって時に対応が早いと思うんです。」
蛯名さんもサユリの意見に同意した。
「確かにそうですね。あ、ファランクスと言えば……ニーケさんとミーネちゃんは今睡眠中なんですよね。アテナさんとメーティスさんにも参加してもらいますか?」
サユリは私に問いかけるように呟いた。
「そっかぁ、アテナとメーティス……どうなんだろう?」
「ちょっと待って。聞いてみるわ。」
私はすぐさまパープルにその辺のところを聞いてみた。
>ねえ、どう思う? パープル。
>昨日の会話から分析しますと、ファランクスの四人にとって今回の計算事による覚醒は大きな意味を持つものと考えられます。予定ではこの数時間でニーケさんとミネルヴァさんが計算事から目覚め、続いてアテナさんとメーティスさんが計算事に入るとのこと。もし会議までに入れ替えがあった場合はニーケさんとミネルヴァさんに参加していただくのもよろしいかと考えます。ですが、会議中に入れ替えがあった場合はアテナさんとメーティスさんの計算事を遅らせてしまう場合もあるでしょう。
>なるほろ。ほんじゃあ二人の参加はなしってことで。
私は深く考えることもせずに今の話を皆に聞かせた。
すると皆、すぐに納得してくれた。
きっとパープルが言ったってのが効いたんだろうね……。




