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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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481 転生と言えば!

 どうしたものかと蛇代が頭を悩ませていると、何やら耳鳴りのようなものが聞こえてきた。

「ん? 何か小さな音が聞こえたような気がする……。」


 それはオオカミの足音などではなく、明らかに耳の奥で聞こえるものだった。

 蛇代が意識を耳に集中させると再びその音が聞こえて来た。

「何か、声みたいに聞こえるが……?」


 蛇代はそれを声だと認識して何を言おうとしているのか解明しようとした。

 するとその音はこう問いかけて来た。

「……聞こえる?」


 蛇代は驚きつつもその声に反応した。

「あ、今『聞こえる?』って言った!?」


 その声は蛇代の声に答えた。

「聞こえた。聞こえた。」

「あんた、誰?」

「私たちは、えっとねぇ……あんたらの言う妖精? 妖精でいいのかな? うん、大丈夫。」

「妖精? マジか!」


 蛇代はそう言いながらも、この妖精がアプラサスのような嫌な奴じゃなくてよかったと心底ほっとした。

 ちなみにアプラサスとは水の妖精で、以前蛇代が行った訓練用のゲーム内で登場したおっさん妖精キャラだ。

 そして現在は上級精霊ウンディーネの出現により、彼女の下僕としてこき使われていた。


 蛇代はもしかしたら今の状態は妖精の力によるものではないかと考えた。

「もしかして、私がウサギの能力ちからを使えるのって妖精さんのお陰?」


 妖精の声は複数いるようにも聞こえた。

「そう、きっとそう。空気の精が音を運んでる。大地の精が跳ぶ力を強くして、草を食べられるようにしてる。」


 蛇代は精霊による効果を何となく理解した。

「成程ね、そうゆう感じなんだ。じゃあ、じゃあさ、空を飛ぶ力は?」

「今はね、空気の精が足りないから飛べない。レベルが少ないもんね。うん、まだレベル1だもんね。いや、今レベル2になったよ。そう、さっきレベル2になった。」


 蛇代はそれを聞いて妖精の数がこの能力を向上させるカギなのではないかと考えた。

「あの、今妖精さんは何人いるのかな? ……匹……は失礼だよな、やっぱり。」


 妖精は「うーん……」とうなった。

「私は一つ。私はたくさん。分かんない。どっちでもいい。」


 蛇代は妖精が数えられるものではないらしい存在だと理解した。

 さっき妖精が「足りない」と言ってたのは、きっと数的なものではないのだろう。

「ま、妖精だしね。そうゆうのもありか。え、じゃあ私の使ってるこの能力ちからって他の人も同じように使えたりするわけ?」


 妖精はその質問に答えた。

「分かんない。知ってる? ううん、この人が初めて。うん、初めて。人としゃべったのも初めて!」


 蛇代はにやりとほくそ笑んだ。

 もしかしてチートか? 私ったら、俺ツえぇ系のチート能力者なのか!?

 うしししし、こいつは楽しくなって来たぞぉ!




 北守は今自分が置かれている立場に仰天ぎょうてんした。

 彼女は目の前でこぶしを振り上げる大男の動きを把握しながら自分の今の身体をちらりと見た。


 あの大男になぐられたらこの細くて小さい身体は一撃でやられちまうな。さて、どうしたものか……。

 北守は冷静に相手を観察していた。


 大男は何やら叫んでいるが何を言っているのか聞き取れなかった。

 どうやら酔っぱらっているようだ。


 周りの人間はと言えば……こちらのことなど気にも留めていないらしい。

 ここは酒場だな。映画でしか見たことなかったが……何か楽しそうじゃん!


 北守が初めての雰囲気に酔いしれていると、遂にその大男が殴りかかって来た。

 ま、取り敢えず転びますか。


 北守は転んだ振りをしながら男の死角へと前転した。

 対象を見失ったその男のこぶしは思い切り空振りした。


 大抵の酔っぱらいならここですっ転ぶところだが、その大男はぐに体制を立て直し北守の方を振り返った。

 北守はそれを見て少し感心した。

 ほう、こいつちょっとは喧嘩けんか慣れしてんなぁ。


 とは言え、すべての動作があまりにスローモーで今のように考え事をしながらでも余裕で対処できるほどだった。

 さて、次はどう来るかな?

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