469 情報の共有ってこんなややこしかったっけ?
私たちの会話を聞いていたサユリが会話に入って来た。
「蟹江さん、おはようございます。サユリです。」
「あら、おはようございます。え、サユリさんも心配して?」
「はい、今もフィナと話していたところなんです。」
蟹江さんは親身になって心配してくれたサユリに感謝を述べた。
「そう、どうもありがとう。さっき空知さんから連絡もらってね。今は蛯名さんが話してるんだけど……あ、ちょっと待ってて。」
そう言うと蟹江さんは右後ろの方を向いて何やら受け答えし始めた。
「え? ああ、うん、うん。分かった。ちょっと聞いてみる。」
何事かと思い様子を見ていると蟹江さんから話があった。
「何かねぇ、やっぱり原因が分からないみたいなんだ。で、蛯名さんがちょっと話したいみたいなんだけど。」
サユリは気軽な感じでそれを承知した。
「あ、どうぞ。」
ここで蛯名さんが会話に加わって来た。
「サユリさん、フィナさん、おはようございます。何か昨日の今日で申し訳ないんですが、ちょっとお二人に相談したいことがありまして。」
次に空知副社長も会話に参加して来た。
「失礼します。おはようございます。コスパルエイドの空知です。」
サユリは緊張のためか目をギョッとさせていた。
「おはようございます。本田サユリと申します。よろしくお願いいたします。」
そりゃあまあ、相手は大企業の副社長だからね……。
昨日、簡単な挨拶だけ交わして近くに座っていたとは言え、朝っぱらから、しかもこんな至近距離で会話することになるなんて思いもよらなかっただろうし……。
そんなサユリの心情を思ってか、空知副社長はリラックスした感じで声を掛けて来た。
「緊張しないで。私だってそこらのおばさんと変わらないんだから! あははは!」
「は、はあ。」
苦笑いしているサユリの顔からは少し強張りが消えて来たように感じた。
ここで蛯名さんが早速本題に入った。
「サユリさんとフィナさんは今回の一件ご存じですよね。実はこの件についてお二人にご一考願いたいことがありまして。」
サユリは「あ、その前に」と言って蛯名さんの話を遮った。
「ごめんなさい。どうしてもお伝えしておきたいことがありまして。よろしいですか?」
蛯名さんは目をぱちくりさせながらもサユリの申し出を受け入れた。
「ええ、勿論です。どうぞ仰ってください。」
その時、コンピューターが突然私に話し掛けて来た。
>すみませんフィナさん。サユリさんに一度ストップを掛けていただけませんか?
コンピューターにそう言われ、何か不穏なものを感じた私は咄嗟に口をはさんだ。
「サユリ、ちょっとその……待って!」
サユリは私の声掛けで何かに気付いたようだ。
「あ、そうね……。ごめんなさい。皆さん、すみませんが少々お待ちください。」
私はコンピューターにストップした理由を聞いた。
>どうしたの?
>私の行った行為は法律上問題が生じる恐れがあります。
>ああ、ハッキングとか?
>はい。そこで私を七天子と同様の扱い、若しくは蟹江さんたちの開発したプロファイリングシステムの一部として捉えていただけるよう早見さんにお取り計らいいただきたいのです。
>成程、そこまで考えてなかった。ちょっと聞いてみるわ。
私は早見さんに今言われたことを聞いてみた。
早見さんは驚いたような目付きで私を見た。
「それもコンピューターが考えたことなんですか? それは……ああ、いえ、それについては分かりました。フィナさんには既に山本氏の保護も頼んでしまっていることですので。そうですね……それでは七天子と同じ扱いということにしましょう。後で一ノ瀬総司令には許可をいただいておきますのでご安心ください。その辺のところは任されておりますので。」
空知副社長は怪訝な顔をしてそれを聞いていた。
「七天子って言ったの? ボカロか何かかしら?」
蟹江さんは「あとで説明しますから」と言って何とかその場を凌いだ。
「ありがとうございます。」
私は早見さんにお礼を言うとコンピューターに話し掛けた。
>これで大丈夫?
>はい、一ノ瀬総司令がその話を承諾する可能性はほぼ100%です。それにいざとなればいくらでも対策は打てます。
>じゃあ、話しちゃっていいのね?




